軽貨物車両自由化その後


最終更新日 2024年4月18日



 
2022年10月の法改正で、軽貨物の車両が自由化されました。私たちのまわりで5ナンバーの黒色ナンバープレートを付けて走っているのを見たことがないのですが、自由化は進んでいるのでしょうか。2023年4月6日に開催された内閣府主催の第10回 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループで国土交通省から軽貨物車両自由化についての発表がありましたので、その概要を説明していきたいと思います。
 

【目次】

1.軽貨物自由化の背景
2.軽貨物自由化とは
3.軽乗用車の事業用への登録状況
4.軽乗用車で軽貨物運送を行う最大の問題点
5.まとめ

 

1.軽貨物自由化の背景

新型コロナウイルスの影響をうけて世界的に半導体不足、海上輸送の停滞をうけて自動車の生産が大幅に減産されました。新車が購入できないため、中古車も慢性的に不足していて、軽貨物運送を始めたくても車両を購入することができない状況になっていました。
そのような状況の中、インターネットショッピングの影響をうけて宅配需要が急増し、ラストワンマイルを担う軽貨物の配送が追いついていない状況です。
国土交通省のデータを元に筆者がグラフ化した資料ですが、2021年度は49.53億個と10年前の2011年の34.01億個に比べて146%の伸びになっています。10年で貨物量が1.5倍になった計算です。
 

 

 

 

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2.軽貨物自由化とは

上記の状況下で令和4年(2022年)6月7日の「規制改革実施計画」を閣議決定し、令和4年(2022年)10月24日より軽貨物運送で使用できる車両が、軽貨物車(4ナンバー車)だけでなく、軽乗用車(5ナンバー)でもできるようになりました。これによって、普段買い物に使っている自家用車を活用して主婦や学生が休日に副業として軽貨物運送を始め、ドライバー不足の解消になると期待されていました。
そもそも軽貨物運送は、運輸支局への届出が必要ですが、軽自動車は輸送能力や行動範囲が限られるため、1台からでも開始できる等、貨物自動車運送(緑ナンバーのトラック)よりも規制が緩やかになっています。
 

 

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3.軽乗用車の事業用への登録状況

規制緩和開始から約4か月間(2023年2月末時点)での登録状況は2855台に留まっています。冬期は降雪の影響で自転車や原付ではなく、自動車でフードデリバリーを行う北海道地区が比率として高めになっています。もっと多くの登録があると思い、行政書士の筆者としては、軽貨物届出代行の特需を期待していたのですが、少し残念な結果となっています。
 

 

 

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4.軽乗用車で軽貨物運送を行う最大の問題点

 
軽乗用車は4人が乗車できる設計になっています。つまり大人4人を想定して55kgx4名分の220kgが最大になっています。運転手1名乗車しますので貨物として積載できるのは、165kgになってしまいます。これに比べて軽貨物車の最大積載量は運転手を除いて350kgです。
アマゾンフレックスでは、車両の長さ+幅+高さ合計が4m以上、荷物の最大積載量が350kgとなっています。軽乗用車の場合、長さ+幅+高さ合計の4mはクリアできますが、最大積載量が165kgのため350kgという条件がクリアできず、アマゾンの配送を直接の委託で行うことはできません。 ⇒現在では、車高1700mm以上、後部座席を倒せることができる軽乗用車(5ナンバー)はステーション限定、時間帯限定でアマゾンフレックスができるようになっています。
他の軽貨物運送でも、軽乗用車での受託はできるが、荷主からの重量がわからない時点では仕事を振れないので、貨物車を優先して仕事を回していく。貨物車が一杯の場合に軽乗用車に仕事を振っていくといわれていました。せっかく、黒ナンバー(事業用)に変更したのに仕事がもらえないといった状況になっています。
今のところ、軽乗用車で仕事ができるのは重量の制限を受けないフードデリバリーに限定されています。積雪地域以外のエリアでは、フードデリバリーは自転車、原付でおこなわれているので、わざわざ、軽乗用車で運ぶのはコスト面で負けてしまいます。
 

 

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5.まとめ

今回の軽貨物車両自由化が、国の思惑どおりにはいかずドライバー、特に宅配便関連のドライバー不足の解消には至っていません。では、軽乗用車の最大積載量を緩和して350kgに引き上げると、軽貨物ドライバーは増えるかと思います。
ただし、軽貨物運送のドライバーは個人事業主(フリーランス)なので、業務委託契約(請負)契約を締結して出来高払いで報酬を受け取ります。時給○○○〇円で働くパート、アルバイトと異なり雇用されていない労働形態なので労働基準法の適用外となっています。
個人事業主のドライバーに対しては、過去にも問題になっており組合も結成させるなど、元請運送事業者からの細かな指示、マニュアルがあり完全な裁量が与えられていないという状況があります。
これ以上、規制緩和して個人事業主のドライバーを増やすとブラック労働が多発し、昨今の働き方改革の動きに逆行することになります。
規制緩和を継続しつつも、ドライバーの賃金、労働環境を改善して運送会社に就職するドライバーを増やしていかなければなりません。
NX総研によるとドライバー不足により、2030年には、34.1%の荷物が運べなくなるといわれています。
首相の指示により我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議が開催され2023年6月にも荷主・物流事業者間等の商慣行の見直しなど、具体的な政策がとりまとめられる予定です。
貨物運賃についても今後しばらくは、値上げ基調になるかと思います。
 

 

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。