安全統括管理者とは
旅客運送業、貨物運送業を問わず、運送業を継続して経営していく上で一番重要なのは安全に関する事項です。運送業に従事するドライバーが受講する安全教育では、1900年代のUSスチールのエルバート・ヘンリー・ゲーリー社長が唱えた安全第一を徹底的に教えられ運転中の事故ゼロや労働災害ゼロを当たり前のように実践しています。
運送会社には、会社に入りたての新人ドライバーや、重大事故を起こしてしまった事故惹起ドライバーに対して、教育や指導を行う運行管理者や車両の整備を管理する整備管理者を統括する役員クラスのポストが存在します。そのポストが安全統括管理者です。安全統括管理者とはどのような要件が必要なのか、どのような仕事を行うのかについて解説していきましょう。
【目次】
1.安全統括管理者の定義
2.トラック・タクシー(ハイヤー)とバスでは選任基準が異なる
3.バス会社の場合あなたへ
4.バス会社(貸切バス事業者)に安全統括管理者の選任が義務付けられた背景
5.安全統括管理者になるための要件(貸切バス事業者の場合)
6.運輸安全マネジメント制度のガイドライン14項目の1つ
7.安全統括管理者を選任しなかった場合
8.まとめ
1.安全統括管理者の定義
安全統括管理者とは、道路運送法 第22条の2及び貨物運送事業法 第16条に規定されています。輸送の安全を確保するために①運営方針を策定する、②安全確保の実施及び管理の体制を整える、③安全確保のための管理方法を定めてそれを徹底する、といった職務をになっています。
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2.トラック・タクシー(ハイヤー)とバスでは選任基準が異なる
トラック運送事業者及びタクシー(ハイヤー)事業者では、200台以上の車両を有する事業者は安全統括管理者を選任しなければなりません。営業所ごとに選任するのではなく、事業者ごとに選任するので、通常は、会社(=事業者)で1名役員クラスが安全統括管理者の職務につきます。
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3.バス会社の場合
貸切バス事業者及び乗合バス事業者で貸切運行委託の許可を受けている事業者は、車両の保有台数にかかわらずすべての事業者で安全統括管理者を選任する必要があります。貸切バス事業者は最低3台(大型バスを所有する場合は最低5台)から事業を行うことができますが、3台所有するバス会社であっても1名安全統括管理者を選任しなければなりません。
ただし、乗合バス事業者で貸切運行委託の許可を受けていない事業者及び特定旅客自動車運送事業者は、トラックやタクシー(ハイヤー)事業者と同じで200台以上の車両を有する事業者のみ安全統括管理者を選任します。
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4.バス会社(貸切バス事業者)に安全統括管理者の選任が義務付けられた背景
平成24年(2012年)4月に発生した関越道高速ツアーバス事故を受けて策定された
高速・貸切バスの安全・安心回復プラン(平成25年(2013年)4月策定)において、同年10月1日から全ての貸切バス事業者や乗合バス事業者(貸切委託運行許可を得た事業者に限る)に対しても安全統括管理者の選任を義務付けるとともに安全管理規程の届出義務化されました。
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5.安全統括管理者になるための要件(貸切バス事業者の場合)
ここでは、すべての貸切バス事業者に選任が必要な、安全統括管理者の要件について解説していきます。安全統括管理者になることができる要件は、旅客自動車運送事業運輸規則 第47条の5に記載されています。
<バス会社で運行管理者もしくは整備管理者で3年以上従事した経験のある者>
タクシー・ハイヤー会社での経験は認められておりません。
例外として、これらと同等の能力を有すると地方運輸局長が認める者となっていますが、運行管理者と整備管理者と合わせて通算で3年以上の経験があったり、バス会社で役員として運行管理者や整備管理者を統括する立場であった人などが対象となりますが、安全統括管理者としてみとめられるかどうかは、個別判断となります。
運行管理者及び整備管理者は、運輸支局への届出が必要で届けられた氏名は運輸局内のシステムで管理されています。よって、バス会社での実務経験の有無は届出時に厳しくチェックされます。
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6.運輸安全マネジメント制度のガイドライン14項目の1つ
運輸事業の安全性を向上させるための運輸安全マネジメント制度の14項目のガイドライン4番目に安全統括管理者の責務が記載されています。
安全統括管理者とは、安全管理体制の推進役として、経営トップの指示のもと、安全管理体制のPDCAを回す職務と権限を有するとされています。
安全統括管理者は、安全を確保するために必要な仕組みについて経営トップに提案したり、事故防止委員会を主催したりします。
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7.安全統括管理者を選任しなかった場合
安全統括管理者の選任を怠った場合は、道路運送法または貨物自動車運送事業法に基づき100万円以下の罰金に処せられます。安全統括管理者が退職してしまった場合に備えて、複数の運行管理者、整備管理者を選任して実務要件を満たす従業員を複数名確保しておくことが望ましいです。
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8.まとめ
貸切バス事業は、多くの乗客をのせて長距離輸送を担うため、ひとたび事故がおきると被害が大きくなりがちです。過去に大きな事故が起きる都度、規制が強化されていきます。たとえ、法改正で現状の制度から厳しくなったとしても安全を最優先に事業をおこなっておれば、なんら、特別の対策をとる必要はありません。運送会社での最優先事項は安全でありそのためには、ドライバーの健康管理行い過労運転・飲酒運転をさせないようなしくみづくりが大切です。
当事務所では、バス事業者、ハイヤー事業者、貨物運送事業者の安全管理・運行管理の法務サポートを行っています。自社での運営に不安を感じている方、これで大丈夫なのか確認してほしい、等のご要望がございましたら、当事務所までお問い合わせをお願いします。
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