【コラム】物流2024年問題の救世主となるか
野村総研(NRI)は、2023年1月19日の第351回NRIメディアフォーラムの中で「ドライバー不足における輸配送のあり方」として、2024年4月からドライバーの労務管理が厳格化されると、ドライバー不足がより進み2030年には全国で約35%モノが運べなくなる。特に地方部での需給ギャップが大きく50%近く運べなくなるエリアもある。と試算されています。NX総研(旧日通総研)も2030年には物流全体の34.1%(9.4億トン)が運べなくなる。といったデータを公表しています。
2つのシンクタンクが同じような危機的な数字を出したことにより、国や物流業界だけではなく、荷主と呼ばれる製造業や流通業の業界団体も協力して物流負荷を軽減しドライバー不足を解消する取組を行ってきています。
内閣府の規制改革推進会議の中にスタートアップ・イノベーションワーキンググループ(以下、ワーキング)という会議体があります。2023年4月6日に行われた第10回ワーキングの中で、「イノベーションや地域の課題に応えるラストワンマイル配送の実現」というテーマについて話し合われました。
その会議の中で、全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会(以下、赤帽)よりドライバー不足を解消する1つの方策として、「貨物軽自動車運送事業で使用する貨物車両の要件緩和」の提言がなされました。
わかりやすく言うと、現在、軽自動車と二輪での運送しか認められていない軽貨物運送を規制緩和して、1トン車(2000cc程度)まで車両の拡充を認めようといった内容です。
貨物運送事業法では、第2条1項で普通自動車、4項で軽自動車と二輪について定義しており、両者を明確に区別しています。普通車の貨物自動車運送事業は、トラックが5台以上を有して、運輸局の許可が必要な事業体です。従って、トラックドライバーは運送事業者から雇用される従業員となりますので、労働基準法の適用を受けます。
一方、軽貨物運送(正式には貨物軽自動車運送事業)は、運輸局への届出のみでできる事業であり、自動車も1台からで事業開始可能です。つまり、雇用される従業員ではなく一人親方やフリーランスと呼ばれる個人事業主になります。
荷主や運送事業者から業務委託契約という形で仕事をもらう、請負になりますのでそこには成果報酬として支払われるのであって時間で働く賃金ではありません。当然、労働基準法の対象外になりますので、個人事業主が何時間時間外労働しようが、休日労働しようがそこに法規制はありません。
軽貨物運送が稼げる、といわれているのは、このように個人事業主として行うことができるので1日8時間に関係なく、労働ができるかわりに法律の保護もなく、体調は事故責任で管理することになります。
規制緩和が行われて、1トン車が届出のみの個人事業主でできるようになれば、宅配業界や赤帽などは、今まで以上の輸送能力が確保できて大歓迎するでしょう。
一方、国土交通省や厚生労働省は運送事業の安全の確保、輸送品質の向上を目指して貨物運送事業の規制を行ってきました。改善基準告示は軽貨物運送にも適用されますが、国土交通省の監査などが行われず罰則規定もないため、軽貨物の個人事業主が遵守するかどうかは疑問なところがあります。とはいっても軽自動車では長距離輸送ができないため物理的制約で改善基準告示をオーバーするということはありません。
この規制改革は一時的なドライバー不足解消にはなりますが、長期的な働き方改革の流れに逆行することになるので、時間をかけての議論が必要かと思われます。これよりも、土日の副業としてサラリーマンが気軽に軽貨物輸送を始めることができる法整備を行ったほうが、ドライバー不足解消の効果があると思います。
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
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