【大阪で旅行業登録】申請の流れ・種類・登録要件を徹底解説


最終更新日 2025年2月20日



大阪府内で観光バスや送迎バス、都市型ハイヤーの許可を受けた方のなかには、新たに旅行業への参入を検討される方も少なくありません。
一般的に旅行会社や旅行代理店といった旅行業を営むためには、旅行業法に基づいた許認可の取得が必要です。
旅行業と貸切バス・都市型ハイヤー事業は業種や管轄省庁が異なります。そのため、旅行業への参入を検討される貸切バス事業者・都市型ハイヤー事業者の方は、新たな許認可の取得に向けて準備をしなければなりません。
それを踏まえ、運送業界で20年以上法務を担当してきた行政書士が代表を務める当事務所が、大阪で旅行業登録を受けるまでの流れについて解説します。旅行業の種類や登録要件についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

・貸切バスの新規許可についてはこちらのページをご覧ください。
・都市型ハイヤーの新規許可についてはこちらのページをご覧ください。

 

目次

1.旅行業登録とは
2.旅行業が扱える業務範囲とは
3.旅行業の種類
4.旅行業の登録要件
5.大阪で旅行業登録を受けるまでの流れ
6.旅行業登録を受けずに営業してしまった場合の罰則
7.行政書士に旅行業登録の手続きを依頼するメリット
8.まとめ
9.お問い合わせ

 

1.旅行業登録とは

旅行業登録とは

企業や個人が旅行業を営むためには、行政庁から登録を受ける必要があります(旅行業法第3条)。
それを踏まえ、旅行業の定義について説明した後、旅行業登録と旅行業法の関係について解説します。

 

1-①.旅行業法と旅行業登録の関係について

旅行業法は、旅行業を営む者について、①旅行業務に関する取引の公正の維持②旅行の安全の確保③旅行者の利便の増進を図ることを目的に定められた法律です。
これらの目的にのっとって、同法は旅行業者に関する登録制度を設定。さらに、営業保証金の供託義務や旅行業務取扱管理者の選任義務など、消費者保護を念頭に置いた義務を旅行業者に課しています。

 

1-②.旅行業の定義

旅行業とは、報酬を得て、一定の行為(旅行業務)を行う事業です(旅行業法第2条)。
旅行業法によれば、旅行業務は次の3つに分類されます。
基本的旅行業務

①自己の計算における、運送・宿泊に関してのサービス(運送等サービス)提供契約の締結行為
②航空券の販売や旅館の紹介など、運送等サービスに関しての代理・媒介・取次・利用行為

付随的旅行業務

③基本的旅行業務の①に付随して行う、運送等サービス以外のレストラン利用、観光施設入場などの旅行サービス
④基本的旅行業務の②に付随して行う運送等関連サービスに関しての代理・媒介・取次行為
⑤基本的旅行業務の①と②に付随して行う渡航手続き(旅券・査証取得)の代行、添乗業務などの行為

旅行相談業務

⑥旅行日程の作成や旅行費用の見積もりなどの旅行の相談に応じる行為

※観光庁「資料3 国土交通省観光庁配付資料」より

観光庁は、逆に旅行業に該当しない業務についても次のように定義しています。
旅行業に該当しないもの

①もっぱら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為:航空運送代理店やバスの回数券の販売所など
②運送、宿泊以外のサービスのみを手配するものや運送事業者・宿泊事業者自らが行う運送などのサービスの提供:観劇・イベント・スポーツ観戦などの入場券のみを販売するプレイガイド、バス会社の行う日帰りツアーなど
③旅行者と直接取引をしないもの:添乗員派遣会社

※観光庁「資料3 国土交通省観光庁配付資料」より

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2.旅行業が扱える業務範囲とは?

旅行業が扱える業務範囲とは?

旅行業が扱える業務範囲は次の3つです。
①募集型企画旅行
②受注型企画旅行
③手配旅行

これらの業務範囲への理解は、希望とする登録区分に申請するうえで重要です。ぜひ参考にしてください。

2-①.募集型企画旅行

募集型企画旅行は、旅行業者があらかじめ旅行の目的地や日程、運送・宿泊サービスの内容のほかに、旅行者が支払うべき旅行代金の額を定めた旅行計画を作成し、計画に基づいて実施する旅行です。一般的にはパッケージツアーパック旅行と呼ばれます。
募集型企画旅行では、旅行業者は旅行計画に基づき、運送・宿泊機関などの手配を請負い、その旅程を管理する義務を負います。
そのため、同旅行は、旅行者への補償制度が充実しているのが特徴です。具体的な補償制度には、重要な旅程の変更に対して一定の範囲で補償する旅程保証制度や、旅行参加中に被った生命や身体、手荷物について一定の損害を補償する特別補償制度があります。

2-②.受注型企画旅行

受注型企画旅行は、旅行業者が旅行者からの依頼を受けて、旅行の目的地や日程、運送・宿泊サービスの内容のほかに、旅行者が支払うべき旅行代金の額を定めた旅行計画を作成し、計画に基づいて実施する旅行です。一般的には、団体旅行や修学旅行などがこれにあたります。
受注型企画旅行は、募集型企画旅行と同じように旅程保証や特別補償といった制度があります。しかし、募集型企画旅行と違い、旅行者が契約変更権をもとに旅行内容の変更を求めることが可能。一方で、旅行業者は企画料金を明示した場合に、契約成立後の取り消しの際に、企画料金に相当する額の取消料を収受できます。

2-③.手配旅行

手配旅行は、旅行業者が企画旅行のように旅行計画を作成せず、単に宿泊施設や航空券などを手配する旅行です。
手配旅行は旅行会社の企画的要素が存在しないため、旅行会社は善管注意義務を持って旅行サービスの手配という事務処理を行えば債務が終了します。そのため、旅行者は仮に満室や休業などにより希望通りにホテルや航空券を取れなかったとしても、旅行業者に旅行業業務取扱料金を支払わなければなりません。
また手配旅行は、企画旅行にある旅程管理や旅程保証、特別補償の責任が旅行業者に課されません。そのため、旅行者は、パスポートの紛失や航空便の欠航など、旅行中のトラブルに自己責任で対処することになります。

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3.旅行業の種類

旅行業の種類

旅行業の種類は、次の6つです。
①第1種旅行業
②第2種旅行業
③第3種旅行業
④地域限定旅行業
⑤旅行業者代理業
⑥旅行サービス手配業

これらの6つの登録区分と業務範囲の関係については図にまとめると、次のようになります。

旅行業等の区分 業務範囲
企画旅行 手配旅行
募集型 受注型
海外 国内
旅行業者 第1種
第2種 ×
第3種 ×
地域限定 ×
旅行業者代理業 旅行業者から委託された業務
観光圏内限定旅行業者代理業
(観光圏整備実施計画で認定を受けた旅館業者)

旅行業者から委託された業務
(観光圏内限定、対宿泊者限定)

△:営業所の所在する市町村の区域と隣接市町村の区域および観光庁長官の定める区域
観光庁「旅行業法概要」より
ここからは上記の表を踏まえ、登録区分の定義や区分ごとに取り扱える業務について説明します。

3-①.第1種旅行業

第1種旅行業は、国内外の募集型企画旅行から受注型企画旅行、手配旅行、他社が募集する企画旅行の代売まで、すべての旅行業務を取り扱える登録区分です(旅行業法施行規則第1条の3第1項)。
まさにオールマイティな登録区分ですが、第1種旅行業は取り扱える業務範囲が広いことから、営業保証金や基準資産額といった財産的要件が最も厳しいものとなっています。

登録要件
登録行政庁 営業保証金 基準資産額 旅行業務取扱管理者の選任
第1種 観光庁長官 7,000万円
(1,400万円)
3,000万円 必要

*旅行業協会に加入している場合は、営業保証金に代えて、その5分の1の金額を弁済業務補償金分担金として納付(カッコ内が弁済業務保証分担金の金額)。第1種旅行業以下省略。
観光庁「旅行業法概要」より
登録要件にあたる営業保証金や基準資産額、旅行業務取扱管理者の選任の定義・詳細については、「旅行業の登録要件」で後述します。

3-②.第2種旅行業

第2種旅行業は、海外の募集型企画旅行以外のすべての旅行契約を取り扱える登録区分です(旅行業法施行規則第1条の3第2項)。また受注型企画旅行や手配旅行であっても、目的地が海外であっても取り扱うことができます。
第2種旅行業は第1種旅行業よりも取り扱える業務の範囲が狭いため、登録申請時の財産的要件が第1種旅行業と比べて低く設定されています。

登録要件
登録行政庁 営業保証金 基準資産額 旅行業務取扱管理者の選任
第2種 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事 1,100万円
(220万円)
700万円 必要

観光庁「旅行業法概要」より

3-③.第3種旅行業

第3種旅行業は国内の募集型企画旅行のうち、営業所の所在する市町村の区域と隣接市町村の区域および観光庁長官が定める区域(以下、隣接市町村等)のみを取り扱える登録区分です(旅行業法施行規則第1条の3第3項)。
一方で、受注型企画旅行や手配旅行などは、第1種、第2種旅行業者と同じように、国内外を問わず、取り扱うことができます。
第3種旅行業は第1種、第2種旅行業よりも取り扱える業務範囲が狭いため、登録申請時の財産的要件がより低く設定されています。

登録要件
登録行政庁 営業保証金 基準資産額 旅行業務取扱管理者の選任
第3種 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事 300万円
(60万円)
300万円 必要

観光庁「旅行業法概要」より
なお、第3種旅行業者が募集型企画旅行を実施できる区域のイメージは次のとおりです。

3種旅行業者が募集型企画旅行を実施できる区域

国土交通省総合政策局観光事業課「第3種旅行業務の範囲の拡大について〜旅行商品新時代と国内旅行の活性化に向けて〜」より
ご覧のとおり、第3種旅行業者が募集型企画旅行を実施するためには、出発地と目的地、宿泊地、帰着地が自らの営業所の所在する市町村、市町村に隣接する市町村などにより形成される区域内に設定されなければなりません。

3-④.地域限定旅行業

地域限定旅行業は第3種旅行業で解説した「隣接市町村等」の範囲で、募集型企画旅行と受注型企画旅行、手配旅行を取り扱える登録区分です(旅行業法施行規則第1条の3第4項)。地域の観光資源の活用推進を目的に、2012年に創設されました。
また、2018年1月施行の改正旅行業法では、さらなる着地型旅行の促進を目的に規制緩和が実施。催行区域の近隣に交通網と輸送の拠点がある場合は、その拠点を出発地・帰着地に設定できるようになりました。
地域限定旅行業は取り扱える業務範囲が旅行業者のなかで最も狭いことから、登録申請時の財産的要件のハードルは旅行業者のなかで最も低くなっています。

登録要件
登録行政庁 営業保証金 基準資産額 旅行業務取扱管理者の選任
地域限定 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事 15万円
(3万円)
100万円 必要

観光庁「旅行業法概要」より

3-⑤.旅行業者代理業

旅行業者代理業は、他の旅行業者の1社のみを代理して、旅行商品を販売代理できる登録区分です(旅行業法第2条旅行業者代理業の業務範囲は旅行業法に定められていません。そのため、業務範囲は所属旅行業者と締結した業務委託契約書における委任の範囲に限定されます。また、旅行業者代理業者は、有償の旅行相談業務の展開が禁じられています。
旅行業者代理業の場合、旅行の責任主体は所属旅行会社です。そのため、登録申請時に財産的要件が課されません。
なお、旅行業法の特例では、国土交通大臣の認定を受けた観光圏整備実施計画による滞在促進地区内の宿泊業者も、観光圏内での宿泊者の旅行について、旅行業者代理業を営めます。

登録要件
登録行政庁 営業保証金 基準資産額 旅行業務取扱管理者の選任
旅行業者代理業 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事 不要 必要
観光圏内限定旅行業者代理業 観光圏整備計画における国土交通大臣の認定 不要 研修修了者で代替可能

観光庁「旅行業法概要」より

3-⑥.旅行サービス手配業

旅行サービス手配業(ランドオペレーター)は、報酬を得て、旅行業を営む者のため、一定の行為を行う事業を営む際に必要な登録区分です(旅行業法第2条第6項)。2018年の改正旅行業法の施行により、新たに創設されました。
旅行サービス手配業の登録を受けると、業者は旅行業者の依頼のもと、次のような業務を報酬を得て取り扱うことができます。

①運送(鉄道、バスなど)または宿泊(ホテル、旅館など)の手配
②全国通訳案内士または地域通訳案内士以外の有償による通訳ガイドの手配
③輸出物品販売所(消費税免税店)における物品販売の手配

旅行サービス手配業の取引例

観光庁「旅行業法概要」より

旅行サービス手配業は、登録申請時に財産的要件は課されません。ただし、営業所ごとに旅行サービス手配業務取扱管理者に選任する必要があります。
なお、すでに旅行業登録のある旅行業者は、重複して旅行サービス手配業の登録を受ける必要はありません。

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4.旅行業の登録要件

旅行業の登録要件

旅行業の登録を受けるためには、ヒトモノカネに関わる次の3つの要件を満たす必要があります。
①人に関する要件
②営業所に関する要件
③財産的要件

いずれも短期間で充足できる要件ではありません。中長期的な計画なもとで、着実に準備を進め、要件の充足を目指すとよいでしょう。

4-①.人に関する要件

人に関する要件には次の3つの要件を充足する必要があります。

  • 申請者が拒否事由に該当していないこと
  • 営業所ごとに旅行業務管理者を選任できること
  • 法人で申請する場合は事業目的が旅行業であること

詳しく見ていきましょう。

4-①-1.申請者が拒否事由に該当していないこと

旅行業法の第6条は拒否登録事由を11の項目別に定義しています。

拒否事由
(1) 旅行業等の登録を取り消され、取消しの日から5年を経過していない者(また過去5年間に登録を取り消された法人において、法人の役員だった者)
(2) 過去5年間に禁錮以上の刑や、旅行業の規定に違反して罰金の刑に処された者
(3) 過去5年間に暴力団員等だった者
(4) 申請前5年以内に旅行業務または旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
(5) 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、法定代理人が(1)〜(5)、(7)に該当する者
(6) 心身の故障により旅行業もしくは旅行業もしくは旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定める者または破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
(7) 法人であって、その役員のうちに(1)〜(4)までまたは(6)のいずれかに該当する者があるもの
(8) 暴力団員がその事業活動を支配する者
(9) 営業所ごとに旅行業法第11条の2の規定による旅行業取扱管理者を確実に選任すると認められない者
(10) 国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者
(11) 代理する旅行業が2つ以上ある旅行業者代理業者

e-GOV法令検索「旅行業法」をもとに作成

4-①-2.営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任できること

旅行業あるいは旅行業者代理業を営むためには、営業所ごとに、人以上の旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません(第11の2第1項
旅行業務取扱管理者とは、旅行業法に基づき旅行の取引条件の説明や職場の管理・監督といった職務を担う人です。一定の欠格事由に該当せず、国家試験に合格すればなることができます。
旅行業法施行規則第10条に規定されている旅行業務取扱管理者の職務は、次の10項目です。

  1. 旅行に関する計画の作成に関する事項
  2. 旅行業務の取扱い料金の掲示に関する事項
  3. 旅行業約款の掲示および備置きに関する事項
  4. 取引条件の説明に関する事項
  5. 契約書面の交付に案する事項
  6. 企画旅行の広告に関する事項
  7. 運送等サービスの確実な提供等、企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項
  8. 旅行に関する苦情の処理に関する事項
  9. 契約締結の年月日、契約の相手方その他の契約の内容にかかる重要な事項についての明確の記録または関係書類の保管に関する事項
  10. 取引の公正、旅行の安全および旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項

なお、旅行業務取扱管理者は、その営業所の取り扱う旅行業務の種類により、必要な試験が異なります。
たとえば、海外旅行を取り扱う旅行業者の営業所については、総合旅行業務取扱管理者試験の合格者、国内旅行だけを提供する旅行業者の営業所については、総合旅行業務取扱管理者試験か国内旅行業務取扱管理者試験の合格者が必要です。また、主たる営業所所在地の隣接市町村までの範囲の旅行業務を提供する場合は、地域限定旅行業務取扱管理者試験の合格者の選任が求められます。

4-①-3.法人で申請する場合は事業目的が旅行業であること

法人で申請する場合は定款、登記簿謄本の事業目的を旅行業か、旅行業者代理業と記載する必要があります。
詳細な記載方法については、旅行業が「旅行業法に基づく旅行業」、旅行業者代理業が「旅行業法に基づく旅行業者代理業」と記載しましょう。

4-②.営業所に関する要件

営業所に関する要件は、営業所が自己所有物件か、賃貸物件かによって異なります。それぞれのケースでの要件について解説するため、ぜひ参考にしてください。

4-②-1.営業所が自己所有物件の場合

営業所として使用する自己所有物件が一戸建ての場合、特に問題はありません。
ただし、使用する物件が分譲マンションといった区分所有物件である場合、当該区分所有物件の管理規約に違反しないよう注意が求められます。一般的な区分所有物件は、管理規約で使用目的が居住に限定されている場合が多いためです。また事業用での利用が可能な場合も、業種を特定している場合が一般的です。
それを踏まえ、営業所として使用する自己所有物件が区分所有物件の場合、使用可否を管理組合に事前に確認しましょう。管理組合の同意が取れたら、管理組合の同意書や、旅行業での利用を認める旨が記載された管理組合規約などを取得します。

4-②-2.営業所が賃貸物件の場合

事業所としての使用が認められている事業用テナントを営業として使用する場合は、賃貸借契約書の写しを登録行政庁に提出します。
ただし、賃貸借契約書に規定される使用目的の記載が「住居」となっている賃貸物件を使用する場合は、営業所として認められない場合があるため注意が必要です。この場合は、事業所としての使用を許可する承諾書を物件所有者である賃貸人より出してもらうか、使用目的を「事業所」に変更して契約を巻き直しましょう。
このように、賃貸物件を旅行業の営業所として使用したい場合は制約も多いため、レンタルオフィスを使用するのも選択肢の1つです。
しかし、レンタルオフィスの場合でも、公共空間を多人数で共用するシェアオフィスのようなケースでは、営業所としての使用は難しいでしょう。そのため、レンタルオフィスについては、標識等の掲示物の掲示義務を履行できる専用の執務スペースを確保できる個室型のものを使用することをおすすめします。

4-③.財産的要件

財産的要件は、「基準資産額」と「営業保証金の供託または弁済業務保証金の納付」という次の2つの要件を充足する必要があります。

4-③-1.基準資産額

基準資産額は、旅行業を継続して営むために必要とされる財産的基礎のことです。旅行業登録に先立つ基準資産額は、次のような計算式で算出します。
基準資産額=資産合計ー負債合計ー(営業保証金の額または弁済業務保証金の額)ー不良債権ー繰延資産(創業費等)ー営業権
上記式により算出される基準資産額は、登録種別ごとに必要とされる金額が異なります。旅行業の種類ですでに触れていますが、登録種別ごとに必要な基準資産額はまとめると次のとおりです。

登録種別 基準資産額
第一種旅行業 3,000万円
第二種旅行業 700万円
第三種旅行業 300万円
地域限定旅行業 100万円

e-GOV法令検索「旅行業法」をもとに作成

基準資産額に満たない場合には、増資などの処置を取るか、不動産や有価証券などの資産または負債の評価額が貸借対照表の価格と異なることが明確なときは、再評価額をもって計算します。

4-③-2.営業保証金の供託または弁済業務保証金の納付

新規に旅行業の登録を受けた旅行業者は、登録通知を受けた日から、14日以内に営業保証金を供託または弁済業務保証金分担金を旅行協会に納付したうえで、納付した旨をその写しを添えて観光庁長官または都道府県知事に届け出なければなりません。
どちらを納付するかは、旅行業協会に入会しているか否かで区別されます。ここからは、詳しい概要について解説します。

営業保証金制度

営業保証金制度は、あらかじめ供託所に供託金(営業保証金)を供託しておき、万が一の場合に旅行業者が国に供託した供託金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度です。旅行業者が旅行業協会に入会しない場合に利用されます。
必要な営業保証金の金額は、前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引額や登録種別によって異なります。

前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引額 営業保証金の額
第1種旅行業 第2種旅行業 第3種旅行業 地域限定旅行業
4000万円未満 7,000万円 1,100万円 300万円 15万円
5,000万円未満 7,000万円 1,100万円 300万円 100万円
2億円未満 7,000万円 1,100万円 300万円 300万円
2億円以上4億円未満 7,000万円 1,100万円 400万円 450万円
(以下略)

観光庁「営業保証金制度の概要①」より

弁済業務保証金分担金

弁済業務保証金制度は、万が一の場合に旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度です。
この制度は、旅行業者が本来の営業保証金の分のにあたる額の弁済業務保証金分担金を納付する一方、旅行業協会がこの分担金を一元的に供託所に供託することで成り立っています。旅行業者が用意すべき保証金が営業保証金と比べて5分の1になっているため、旅行業者が本体供託義務を負っている営業保証金の負担を軽減させる制度上のメリットがあります。
必要な弁済業務保証金分担金は、営業保証金と同様に、前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引額や登録種別によって異なります。

前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引額 営業保証金の額
第1種旅行業 第2種旅行業 第3種旅行業 地域限定旅行業
4000万円未満 1,400万円 220万円 60万円 3万円
5,000万円未満 1,400万円 220万円 60万円 20万円
2億円未満 1,400万円 220万円 60万円 60万円
2億円以上4億円未満 1,400万円 220万円 90万円 90万円
(以下略)

観光庁「弁済業務保証金制度の概要①」より

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5.大阪で旅行業登録を受けるまでの流れ

大阪で旅行業登録を受けるまでの流れ

大阪で旅行業登録を受けるまでの手続き上の流れは、旅行業の種類によって異なります。各種類に応じた手続き上の流れについて解説するため、ぜひ参考にしてください。

5-①.第1種旅行業の場合

大阪で第1種旅行業の登録を受けるまでの流れは次のとおりです。

  1. 申請書類の作成
  2. 観光庁へ申請書類を提出して仮申請
  3. 観光庁で申請前ヒアリングを受ける
  4. 近畿運輸局に申請書を提出して本申請
  5. 審査(観光庁観光産業課)
  6. 近畿運輸局より登録通知を受ける
  7. 近畿運輸局へ出向いて登録通知書を受領
  8. 登録免許税9万円の納付
  9. 法務局へ営業保証金の供託または旅行業協会へ弁済業務保証金分担金の納付
  10. 営業保証金または弁済業務保証金の納付書の写しを近畿運輸局に提出
  11. 登録票や取扱料金や旅行業約款などを整備後、営業開始

5-②.第2種、第3種、地域限定旅行業の場合

大阪で第2種、第3種、地域限定旅行業の登録を受けるまでの流れは次のとおりです。

  1. 申請書類の作成
  2. 大阪府旅行業担当窓口でヒアリングを受けた後、申請書類を窓口持参で提出
  3. 審査(大阪府)
  4. 大阪府から登録決定の通知を受ける
  5. 大阪府へ出向いて登録通知書を受領
  6. 申請手数料20,600円を納付
  7. 法務局へ営業保証金の供託または旅行業協会へ弁済業務保証金分担金の納付
  8. 営業保証金または弁済業務保証金の納付書の写しを大阪府の窓口で提出
  9. 登録票や取扱料金や旅行業約款などを整備後、営業開始

なお、営業開始後は新規登録日から60日以内に、旅行業法第70条に基づく報告書により、営業所の付近図や写真などの提出が必要です。

5-③.旅行業者代理業の場合

大阪で旅行業者代理業の登録を受けるまでの流れは次のとおりです。

  1. 所属旅行業者と「旅行業者代理業業務委託契約」を締結
  2. 申請書類を作成
  3. 大阪府旅行業担当窓口でヒアリングを受けた後、申請書類を窓口持参で提出
  4. 審査(大阪府)
  5. 大阪府から登録決定の通知を受ける
  6. 大阪府へ出向いて登録通知書を受領
  7. 申請手数料16,000円を納付
  8. 所属旅行業者へ登録通知があった旨を連絡
  9. 登録票や取扱料金や旅行業約款などを整備後、営業開始

なお、営業開始後は新規登録日から60日以内に、旅行業法第70条に基づく報告書により、営業所の付近図や写真などの提出が必要です。

5-④.旅行サービス手配業の場合

大阪で旅行業者代理業の登録を受けるまでの流れは次のとおりです。

  1. 申請書類を作成
  2. 大阪府旅行業担当窓口でヒアリングを受けた後、申請書類を窓口持参で提出
  3. 審査(大阪府)
  4. 大阪府から登録決定の通知を受ける
  5. 大阪府へ出向いて登録通知書を受領
  6. 申請手数料16,000円を納付
  7. 営業開始
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6.旅行業登録を受けずに営業してしまった場合の罰則

旅行業登録を受けずに営業してしまった場合の罰則

旅行業登録を受けずに営業してしまった場合は、年以下の懲役もしくは100万円の罰金が課されます(旅行業法第74条第1項)。
旅行業の登録が取り消されると、登録の拒否事由に基づいて年間は、旅行業の登録ができません(第6条第1項)。

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7.当事務所に旅行業登録の手続きを依頼するメリット

当事務所に旅行業登録の手続きを依頼するメリット

当事務所に旅行業登録の手続きを依頼するメリットは、許認可に特化した当事務所が手続きを代行・サポートすることで、手続きを迅速かつ円滑に進行させられ、事業開始までの時間を短縮できることです。
許可要件は登録行政庁によって開示されているため、「申請手続きを独力で進められる」と考える方もいるかもしれません。しかし、旅行業登録という1度だけの諸手続きのために、知識を仕入れ、人的要件や財産的要件を充足させていくのは、想像以上に手間がかかります。
それだけに、労力の大きい旅行業登録の手続きは、行政手続きのプロである当事務所に委任するのが得策といえるでしょう。

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8.まとめ

まとめ③

本記事では、旅行業の登録要件や、大阪で旅行業登録を受けるまでの流れについて解説しました。
旅行業は無形商材のため、受けるまでのハードルが低いイメージがありますが、実際はヒトモノカネに関わる厳格な要件を満たさなければなりません。そのため、旅行業へ新規参入を検討される方は、事前に要件を確認し、計画的に準備を進める必要があるでしょう。
当事務所は、旅行業登録を受けるうえで一番の関門になりうる、財産的要件のクリアに向けたコンサルタントやサポートに力を入れています。旅行業開業でお困りの際は、当事務所へご相談ください。

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9.お問い合わせ

お問い合わせ④
旅行業の新規開業、登録に関してご不明なことやご相談がありましたら、お電話または下記のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
下記のようなご相談に対応させていただきます。
1.旅行業の登録要件について詳しく聞きたい
2.資金はどれくらい必要なのか知りたい
3.何から始めて良いか開業に向けた段取りについて教えてほしい
4.すぐに旅行業を始めたいが、どのようなスケジュールで取得できるか
5.貸切バス事業・都市型ハイヤー事業との組み合わせで旅行業の運営をしたい
また、旅行業開業後の労務管理など経営全般について詳しく知りたい方もお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ新Ver①

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。