①物流情報(貨物運送)

運送業許可要件


最終更新日 2023年8月28日

前提
他人から依頼をうけて、有償で荷物を運ぶ(いわゆる業として営む)場合には運送業の許可(緑ナンバーの取得)が必要になります。自社の荷物を運ぶ場合、無償で運ぶ場合、軽自動車で運送する場合(貨物軽自動車運送事業を参照)は運送業の許可は不要です。

運送業許可の要件

1.場所(駐車場・営業所)の要件

1-1.駐車場の要件
①原則として営業所に併設していること
併設できない場合は、平成3年6月25日「運輸省告示第340号」に適合することとされており、大阪府内の場合は営業所と車庫の2点間の距離が10km以内で駐車場をさがさなければなりません。
「運輸省告示第340号」では、貝塚市、泉佐野市、泉南市、豊能郡、泉南郡並びに南河内郡のうち太子町、河南町及び千早赤阪村に限っては営業所・駐車場間の距離が5km以内になっています。
②車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保され、かつ申請する車両台数すべてを収容できること
③駐車場以外の用途に使用されている部分と明確に区画されていること
④使用権原を有するものであること
・自己所有の場合は問題ありませんが、賃借の場合は契約期間が2年以上もしくは自動更新になってることが必要です。
⑤農地法(昭和27年法律第229号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等の関係法令の規定に抵触しないこと
⑥前面道路(車庫の出入口が面している道路)については幅員証明書により車両制限令に適合すること
・国道もしくは全面道路の道路幅が6.5m以上あることが要件となります。
・大阪府下では道路幅員事務を廃止している自治体が多くあります。幅員証明書を取得できない場合はメジャーで図った幅員の写真及び宣誓書(前面道路の状況書・指定様式)をもって幅員証明書に代用することができます。


1-2.営業所の要件
①使用権原を有するものであること
・駐車場の場合と同じく賃借の場合は契約期間が2年以上もしくは自動更新になってることが必要です。
②農地法(昭和27年法律第229号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等の関係法令の規定に抵触しないこと
・都市計画法では一部例外がありますが、市街化調整区域での駐車場は認められていません。
③規模が適切なものであること。必要な備品を備え、事業遂行上適切なものであること。


1-3.休憩・睡眠施設
①営業所もしくは駐車場に併設されていること
・つまり、営業所+休憩施設、もしくは駐車場+休憩施設のどちらかが必要になります。
②乗務員に睡眠を与える必要がある場合には、少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さを有すること
・長距離運転を行う場合で、運行管理上ドライバーの休憩時間が8時間以上確保できないような場合には睡眠施設を設置する必要があります。日帰りで運行できる短距離のみの輸送を行う場合は睡眠施設は必須ではありません。


2.車両の要件
事業用自動車は5両(5台)以上
・車検証の用途欄に貨物と記載されたトラック(大型、トン数を問わない)が5台以上必要になります。
②トレーラーの場合はけん引車(トラクターヘッド)と被けん引車合わせて1台とカウントされます。
③霊きゅう運送、一般廃棄物運送、離島での運送業の場合は、5台以上でなくても許可を取得できますが、このような場合は許可の条件として「霊きゅう運送に限る」等がつけられます。
④使用権原を有していること
・すでに保有している場合は自動車車検証、これから購入する場合は売買契約書(中古でも可)、リース契約を行う場合はリース契約書をもって使用権原を証明します。

3.人・資格の要件、欠格事由

3-1.人・資格の要件
①ドライバー5名以上、運行管理者(ドライバーの教育や点呼を行う)1名の6名以上
・運行管理者はドライバーとの兼任が認められていませんのでドライバー以外の有資格者が必要です。
②国家資格を有する運行管理者(貨物)を1名以上配置する
・年に2回(3月の第1日曜日と8月の第4日曜日)に実施される試験に合格すると運行管理者(貨物)となることができます。ただし、受験資格があり1年以上の実務経験もしくは独立行政法人自動車事故対策機構の運行管理者基礎講習を16時間受講する必要があります。
・試験問題は30問で60%の18問以上正解で合格することができます。
③整備管理者(車両の点検整備記録の管理を行う)1名以上の配置
ドライバーが整備管理者を兼務することができます。
・3級以上の自動車整備士資格保有者もしくは2年以上のトラックの整備・点検の実務経験があり「整備管理者選任前研修」を受講すれば整備管理者になることができます。
④代表取締役もしくは運送事業に専従する役員1名が法令試験に合格していること


3-2.欠格事由
①許可申請者もしくは役員が1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行が終わってから5年を経過しない者
②許可申請者もしくは役員が運送業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者
③許可申請者と密接な関係を有する者(親会社、子会社、グループ会社など)が運送業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者
④許可申請者もしくは役員が、運送業の廃止をした者で、その廃止の日から5年を経過しないもの
⑤許可申請者が未成年者または成年被後見人である場合において、その法定代理人が懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行が終わってから5年を経過しない者


4.資金の要件
2019年の貨物自動車運送事業法改正により資金の要件が格段に厳しくなりました。ドライバーへの給与・残業手当の支払い、損害補償能力などを勘案して充分な資力がないと運送業の許可がとれなくなっています。必要な資金はトラックを新車で購入するか中古車か、2トン車か大型車かによって大きく変わってきますが概ね1500万円から2000万円程度の初期資金が必要になります。

必要な資金があることを証明するために申請時と審査途中に2回銀行が発行する残高証明書を提出しなければなりません。特に近畿運輸局の場合は2回目の残高証明書を提出する日付が指定されるので注意が必要です。
ページのトップに戻る

関連記事

・運送業開業マニュアル
・利用運送開業マニュアル
・運送業コンプライアンスマニュアル(運送業2024年問題対応)

 
 

 

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 
 


Generic selectors
完全一致検索
タイトルから検索
記事本文から検索
 お問い合わせ
contents
カテゴリー

楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。