物流特殊指定マニュアル




 
運送や物流に携わる方、企業の法務部門、弁護士等法律の専門家の皆様へ
物流の下請法とも呼ばれる「物流特殊指定」(独占禁止法)について解説しているガイドマニュアルです。下請法と物流特殊指定の違い、製造業や流通業等の荷主企業や物流子会社がやってはいけない禁止行為を具体的な事例を交えてわかりやすく解説していますので、初めての方でも理解できる内容になっています。また、年1回行われている公正取引委員会の「物流特殊指定 書面調査」にも対応しています。運送や物流に携わる方、特に企業の法務部門・法律の専門家の皆様は、ぜひ、一読お願いします。

【目次】

1.物流特殊指定とは
2.下請法と物流特殊指定の違い
2-1.下請法と物流特殊指定の違い
2-2.4つの義務と11の禁止行為
3.物流特殊指定で使われる用語について
4.規制の対象となる取引
4-1.荷主企業が物流事業者に対して直接依頼をする場合
4-2.荷主企業の物流子会社が物流事業者に対して再委託する場合
4-3.産業廃棄物収集運搬への委託する場合
4-4.乙仲業者への委託する場合
5.特定荷主の8つの禁止行為
5-1.支払代金の減額
5-1-1.単価の遡及適用
5-1-2.事務管理料として一方的に減額
5-1-3.予算が厳しいといった理由で減額
5-1-4.消費税10%を払わない
5-1-5.安全対策費として一方的に減額
5-1-6.振込手数料を一方的に減額
5-2.買いたたき
5-2-1.荷主の予算を基準にして買いたたき
5-2-2.一律に一定率の値下げを強要する
5-2-3.物流事業者からの値上げに応じない、応じても一方的に価格を据え置く
5-2-4.条件が変更されても価格変更を認めない
5-3.不当な給付内容の変更及びやり直し
5-3-1.一方的なキャンセルにもかかわらずキャンセル料を支払わない
5-3-2.荷主のミスで再配送する場合で料金を支払わない
5-3-3.配送先が変更になっても追加料金を支払わない
5-4.代金の支払遅延
5-4-1.荷主の資金繰りを理由に支払遅延
5-4-2.荷主の事務処理遅れによる支払遅延
5-4-3.物流事業者の軽微な請求遅れによる支払遅延
5-5.購入・利用強制
5-5-1.荷主の取引先商品の購入強制
5-5-2.再三の要請による役務の利用強制
5-6.不当な経済上の利益の提供要請
5-6-1.夏祭りの協賛金支払要請
5-6-2.荷主の倉庫の整理を無償で手伝い要請
5-6-3.別会社のトラック積込み手伝い要請
5-6-4.棄損のない商品まで費用負担要請
5-7.報復措置
5-7-1.値下げ拒否を理由に報復措置
5-7-2.公正取引委員会への通報を理由に報復措置
5-8.割引困難な手形の交付
6.公正取引委員会の書面調査
7.物流特殊指定違反かなと思ったら専門家に相談を


1.物流特殊指定とは

物流特殊指定(正式名称⇒特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法)とは、荷主(荷主企業、いわゆる真の荷主)と物流事業者との取引における優越的地位の濫用を効果的に規制するために指定された独占禁止法(正式名称⇒私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)上の告示のことをいいます。
独占禁止法では、公正かつ自由な競争の制限につながるような行為や競争の基盤を侵害するような行為を不公正な取引方法として禁止しています。物流特殊指定は、荷主企業と物流事業者との取引に適用される不公正な取引方法として、独占禁止法第2条第9項第6号に基づき、公正取引委員会が指定しています。
 
<独占禁止法・下請法・物流特殊指定の関係①>

 
<独占禁止法・下請法・物流特殊指定の関係②>

法律名 正式名称
独占禁止法 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
下請法 下請代金支払遅延等防止法

⇒独占禁止法の特別法

物流特殊指定 特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法

⇒公正取引委員会告示

 
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2.下請法と物流特殊指定の違い

2-1.下請法・物流特殊指定の対象範囲


 
まずは、下請法対象の概要です。上の図のように昭和31年(1956年)の制定時には製造委託のみが対象でしたが、平成16年(2004年)に物流、清掃、ソフトウエアのような情報成果物の役務提供委託も下請法の対象となりました。下請法は「業として行うこと」が条件とされていますので、下請法で物流委託の対象となるのは、運送業や倉庫の荷役会社が再委託を行った場合に限られ、製造業や流通業といった物流を業としない会社が物流委託を行った場合は下請法の対象外となります。
このような状況において製造業・流通業等、物流を業としない会社が運送代金を支払わない、一部減額して支払う、といった優越的地位の濫用を行わないよう平成16年(2004年)に公正取引委員会が物流特殊指定を公示し、この法規によって物流会社以外の業種の物流委託について取り締まることができるようになっています。
 

業種 適用される法令
物流業以外

(製造業・流通業等)

の物流委託

物流特殊指定
物流業 下請法
物流子会社 (対象資本金以下)下請法
(対象資本金から3億円以下)物流特殊指定

 
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2-2.4つの義務と11の禁止行為

下請法では4つの義務と11の禁止行為が定められていますが、物流特殊指定では4つの義務については定められておりません。ただし、4つの義務のうち書面の交付義務、支払期日の定める義務については、両者が合意した価格を定められた期日にきっちりと支払うように荷主企業に徹底してもらうために平成26年(2014年)に国土交通省がトラック運送業における書面化推進ガイドラインを定めて書面交付等の徹底を図っています。
また、下請法の11の禁止行為のうち、3項目は物流特殊指定の対象外となっています。これは受領拒否、返品の禁止、有償支給材料の早期決済禁止といった物の動きを伴う取引が物流委託にはないからです。減額や買いたたきといった残り8つの項目は物流特殊指定でも適用される項目となっています。
 
<下請法と物流特殊指定の順守すべき項目一覧>

 

・物流特殊指定違反の事例をまとめたページ

 
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3.物流特殊指定で使われる用語について

物流特殊指定では、物流特殊指定対象の物流会社(保管の受託等を行う会社)に委託する荷主企業のことを特定荷主といいます。特定荷主から委託を受けて物流を行う運送会社・物流会社で物流特殊指定の対象となる会社を特定物流事業者といいます。本ガイドマニュアルでは、物流特殊指定の公示を踏まえて、特定荷主、特定物流事業者という用語を使用していきます。
物流を業とする運送会社・物流会社は下請法の対象となりますので、再委託をする側の会社を元請物流事業者、下請法の対象となる受託側の運送会社・物流会社を下請物流事業者といいます。
 
<用語説明一覧表>

名称 説明
物流特殊指定 特定荷主 物流特殊指定対象会社に委託する物流を業としない会社(製造業や流通業など)
特定物流事業者 物流特殊指定の対象となる運送会社・物流会社
下請法(物流) 元請物流事業者 元請として下請法対象会社に委託する運送会社・物流会社
下請物流事業者 下請法の対象となる運送会社・物流会社

 
 

 
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4.規制の対象となる取引

4-1.荷主企業が物流事業者に対して直接依頼する場合


 
荷主が物流事業者に対して、継続的に物品の運送もしくは保管の委託を行っている場合において、荷主及び物流事業者の資本金や取引上の地位が物流特殊指定の定める関係にあるときは、それぞれ特定荷主、特定物流事業者に該当し、物流特殊指定の適用対象となります。
<物流特殊指定の適用対象となる場合まとめ>
物流を業としない荷主が物流事業者に対して運送・保管の委託をすること
継続的取引であること
※継続的取引とは毎月委託せず、数か月に1度の委託であっても繰り返し委託していると認められる場合は、物流特殊指定の対象となります。
 

※物流子会社については、資本金区分によっては下請法が適用されます。
 
資本金区分に該当すること
・荷主の資本金が3億円超の場合は資本金3億円以下の物流事業者
・荷主の資本金が1000万円超から3億円以下の場合は資本金1000万円以下の物流事業者
※物流事業者は法人である必要はなく個人事業者でも物流特殊指定の対象となります。
④取引上の地位が優越している荷主から取引上の地位が劣っている物流事業者への委託であること
※この項目は下請法にはなく物流特殊指定特有の規制対象内容となっています。令和3年(2021年)の書面調査で資本金が1000万円以下であっても売上高が年間100億円以上ある場合は、物流事業者の資本金に関係なく物流特殊指定の書面調査対象となっていることから、これらの売上規模の大きい荷主が取引上の地位が優越している荷主と考えられます。
 

 
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4-2.荷主企業の物流子会社が物流事業者に対して再委託する場合


 
荷主が物流子会社を経由して物流事業者に再委託する場合は、物流子会社を特定荷主とみなして物流子会社から物流事業者に対して再委託行う物品の運送・保管の委託については物流特殊指定が適用されます。この場合の資本金区分は荷主(親会社)の資本金で判断されます。上記の図では、資本金1億円の物流子会社から資本金2億円の物流事業者に再委託する取引が、物流特殊指定の適用対象となります。2者間の資本金だけを見ると物流事業者(資本金2億円)のほうが大きい会社ですが、判断する資本金基準が荷主(親会社)の資本金(5億円)であるため物流特殊指定の適用対象となります。また、物流子会社は、物流を業としているため資本金区分によっては下請法適用の対象となります。上記の図の場合、資本金800万円の物流事業者への委託は親会社からの委託、グループ会社以外の荷主からの委託を問わず下請法の対象になります。物流特殊指定の場合は、親会社からの委託の再委託のみが対象でグループ会社以外の荷主からの委託は対象となりません。物流子会社の親会社とは株式の50%超を保有する会社のことをいいます。
 
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4-3.産業廃棄物収集運搬への委託する場合

令和3年(2021年)の書面調査で産業廃棄物の運送又は保管の委託をしている場合についても物流特殊指定の書面調査対象となっていることから、産業廃棄物処理業者への運送・保管の委託も物流事業者と同様に物流特殊指定の対象と考えておいてください。
 
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4-4.乙仲業者への委託する場合

令和3年(2021年)の書面調査で乙仲業者(港湾運送事業法に基づく海運貨物取扱業者)との間で物品の運送又は保管業務について、代金や支払条件等の取引条件を定めて継続的に取引を行っている場合についても物流特殊指定の書面調査対象となっていることから、乙仲業者への運送・保管の委託も物流事業者と同様に物流特殊指定の対象と考えておいてください。
 
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5.特定荷主の8つの禁止行為


 

 

・物流特殊指定違反の事例をまとめたページ

 

5-1.支払代金の減額

荷主と物流事業者との間で合意をしてきっちりと契約書で取り交わした金額をお支払いするのは当然のことですが、物流事業者は小規模な会社が多く荷主が圧倒的に優越的な立場であることから、荷主が赤字であったり部門の収支が厳しい場合は無言の圧力に押されて荷主の発注担当者が減額をしてしまうのです。物流特殊指定の禁止行為の中でも減額が一番多い違反事例となっています。具体的にどのような減額をしているのか事例を紹介していきます。

5-1-1.単価の遡及適用

<事例1>

 
荷主と物流事業者との間で合意した新しい単価(値上げ後の単価)は役務を行う日が基準です。4月から値上げにより値上げ後の単価を適用する場合は、いくら3月中に発注を済ませていたとしても4月1日の運送の場合は、値上げ後の単価でお支払いしなければなりません。3月31日に出発して4月1日にお届け完了する運送委託についてどちらを基準日とするかは両社での取り決めによって決定します。一般的には役務を開始した日(この場合は3月31日)を基準日とするのが一般的です。
 
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5-1-2.事務管理料として一方的に減額

<事例2>

 
荷主の運送費管理システム等の情報システムを使用して物流事業者の請求金額を計算している場合などで、運送事業者が合意していないのに一方的に通告して請求金額から減額して支払うといった行為です。情報システムを使って運賃計算を代行するといった正当な事務管理の場合は、あらかじめ金額を取り決めておき請求金額から減額するのではなく、その事務管理料を請求するのであれば問題ありません。この場合でも運送代金の一律○○%ではなく、十分に見合った月額固定金額での請求を行ってください。
ほとんどの荷主や元請物流事業者でこのような情報システムを持っていますが、自社の予算管理・収支管理を主目的として運用しているため、物流事業者に事務管理費を請求しているところはほとんどありません。
 
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5-1-3.予算が厳しいといった理由で減額

<事例3>

 
ほとんどの人はこのイラストを見られて、大の大人が何をやっているのか?と思われるかもしれません。荷主の物流担当者も悪いという認識をもっているのですが、月次で決算を行っている場合は単月での収支管理を求められるため稼働日数の少ない2月や8月は赤字に転落してしまうスレスレの収支ラインかもしれません。このような場合に、つい3月で埋め合わせをするから2月の物流費を少し減額して払う、といった行動をとってしまうのです。会社として複数人でチェックができる内部統制のしくみを確立しておかなければこのような問題は解決しません。
 
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5-1-4.消費税10%を払わない

<事例4>

 
これも常識の範疇の問題ですが、実際に発生している事例です。
特に物流事業者からの値上げ要請を受諾した後に、荷主の物流担当者が少しでも物流費の支払いを少なくしようとして、このような事をしてしまいます。これも複数人でチェックができる内部統制のしくみを確立して防止しなければなりません。
 
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5-1-5.安全対策費として一方的に減額

<事例5>

 
企業の安全対策は年々、重要な課題となっており、自社の工場などの敷地内で事故が発生すると労働基準監督署の対応やその他の対応等で多大な工数が発生します。事前に労働災害を防ぐために安全設備を導入したり警備員を配置したりと安全対策費用は荷主企業にとって大きな課題となっています。特に工場や倉庫の近隣に小学校・中学校があり大型トラックが頻繁に出入りする場合等は、警備員を常駐させなければなりません。この費用は荷主の負担になるのですが、これを一方的に物流事業者に負担させ、請求金額から差し引いて支払うことは減額にあたります。ただし、正当な安全対策費用で掛かる費用の大部分は荷主で負担するが一部の費用を物流事業者で取引金額に応じて相応に負担していただくことを協議の上、合意しておれば問題ありません。協議もせずに一方的に減額をすることが問題であり、合意されている安全対策費は別途、月額固定金額での請求を行ってください。協議の上の合意とありますが、物流事業者が拒否できないような状況で無理やり合意させることは、問題となりますので注意をしてください。
 
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5-1-6.振込手数料を一方的に減額

<事例6>

 
振込手数料を荷主・物流事業者のどちらで負担するかは契約上の取り決めであり、契約書上で物流事業者の負担となっておれば、振込手数料を差し引いて支払っても問題はありません。合意がされていないにもかかわらず、一方的に振込手数料を差し引いて支払うことは減額に当たる行為となります。
 
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5-2.買いたたき

買いたたきとは荷主の優越的な立場を利用し、取引量を減らすなどの言葉をちらつかせて、一方的に値下げを要求する行為のことをいいます。昭和の時代にはこのような行為が横行してあちこちで見られましたが令和の時代になった現代では、ほとんど見られなくなりました。昨今では、物流事業者からの値上げ申し入れに対して、協議に応じずもしくは協議には応じて話し合いの場を持ったが、一方的に従来どおりの運賃・料金の額を据え置いた場合も買いたたきにあたりますので、注意をしてください。

5-2-1.荷主の予算を基準にして買いたたき

<事例7>

 
物流部門への割り当てが、月○○○万円のため今の運送費でお支払いしていると慢性的に物流部門が赤字になってしまうような場合に、物流事業者に対して、当社の予算が決められているからといった物流事業者に関係のない理由で一方的に値上げを要求する行為は、買いたたきにあたりますので注意をしてください。
 
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5-2-2.一律に一定率の値下げを強要する

<事例8>

 
荷主企業も自社の販売商品を顧客から〇%下げるよう要求されている場合に、製造原価を下げるために運送費を一律〇%減額を求める行為は買いたたきにあたります。わざわざ、荷主企業の顧客からの値下げ要求書を物流事業者に見せて、優越的な立場で値下げを迫る行為をしますが、物流事業者にとって関係のない理由です。
 
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5-2-3.物流事業者からの値上げに応じない、応じても一方的に価格を据え置く

<事例9>

 
昨今の買いたたきで一番多い要因がこの行為です。2016年、17年あたりからトラック不足、ドライバー不足、燃料費高騰を背景に今の価格では経営ができないとして一斉に値上げ要求が荷主に対してなされました。これを受けて
①物流事業者からの値上げ要請に対して、協議に応じなかった。
②協議には応じたが、値上げを認めす一方的に従来通りの運賃・料金を据え置いた
③一部の物流事業者と協議した値上げ金額をベースに他の物流事業者の値上げを一部分のみ認める決定を一方的に行った。
といった行為については買いたたきの可能性がある、とされています。
 
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5-2-4.条件が変更されても価格変更を認めない

<事例10>

 
午前・午後2回配送することをベースに1日○○○○円で価格を決めていたが、荷主の出荷数量減で午前のみの配送になった場合でドライバーを午後から別の仕事に転用できず、トラックも別の仕事に使えない場合に物流事業者としては収入減となります。この場合は最低保証金額を設けてその金額まではお支払いするもしくは1日あたりの運賃を改定するなどの対応を協議して決定をしていきます。話し合いを行わず、一方的に午前のみの配送にしてくれ、という通知のみでは買いたたきとみなされる可能性がある行為となります。
 
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5-3.不当な給付内容の変更及びやり直し

物流事業者に発生する無駄や追加的費用を払わせることを防止するために、物流事業者に責任がないのにキャンセルや配送先の変更、やり直し配送をさせることを行うと、不当な給付内容の変更及びやり直しの行為に該当します。

5-3-1.一方的なキャンセルにもかかわらずキャンセル料を支払わない

<事例11>

 
当日になって配送をキャンセルにも関わらず、キャンセル料を支払わない行為は、不当な給付内容の変更に該当します。物流業界の通例にあてはめると、当日キャンセルは運転手がすでに営業所で点呼を行い出勤体制ができているので、間違いなくキャンセル料を荷主が負担、前日の場合は、事前の取り決めにより負担するかどうかを決定、前々日の場合は一般的にキャンセル料なしとなっていますが、トラックの台数等条件によって異なりますので、事前に荷主と物流事業者間でキャンセルの場合の規定について取り決めをしておくことが望ましいです。
 
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5-3-2.荷主のミスで再配送する場合で料金を支払わない

<事例12>

 
荷主のミスにより間違った商品を配送してしまい、その商品の持ち帰り・再配送を無償で物流事業者にさせた場合は、不当なやり直しに該当します。これらによって発生した費用を荷主が負担して物流事業者へお支払いしなければなりません。
 
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5-3-3.配送先が変更になっても追加料金を支払わない

<事例13>

 
配送の直前になって配送先がお客様の倉庫から工事現場に変更になり、距離が遠くなった場合はドライバーの拘束時間や燃料費が余分に発生しますのでその距離に応じた追加料金を別途、支払わなければなりません。お客様の倉庫の場合は4トン車1台で配達できていたが、工事現場は道が狭く、2トン車2台に分けて配送しなければいけない場合は、2トン車2台と4トン車1台との差額料金をお支払いしなければなりません。
 
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5-4.代金の支払遅延

物流事業者に責任がない場合もしくは請求書への一部記載漏れ等軽微なミスの場合は、定められた期日に代金を支払わないと、代金の支払遅延に該当します。物流特殊指定では、定められた期日についての取り決めはありませんが、下請法では役務が提供された日から60日以内に支払うとなっていることから物流特殊指定でも支払締め日から支払日までの期日を60日以内としておいたほうが良いと思います。

5-4-1.荷主の資金繰りを理由に支払遅延

<事例14>

 
荷主がお客様からの入金遅れであっても物流事業者には何も責任がありません。このようなケースでは荷主が短期借入を行ってでも定められた期日にお支払いをしなければなりません。
 
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5-4-2.荷主の事務処理遅れによる支払遅延

<事例15>

 
在宅ワークが浸透するにつれて、荷主企業の部門間での連携ミス等により支払手続き漏れが発生することがあります。これらの場合は、安易に翌月に合算請求扱いにせず、気づいた時点で特別処理等で当月の支払日にお支払いを行うようにしましょう。
 
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5-4-3.物流事業者の軽微な請求遅れによる支払遅延

<事例16>

 
物流事業者が1件、請求書に入れ忘れた、請求書の送付が半日遅れた等の軽微なミスの場合でも荷主企業は特例対応をして
定められた期日にお支払いしなければなりません。安易に翌月分と合算支払することのないように気をつけてください。
この場合、物流事業者のミスの度合いにもよりますが、荷主企業が特別対応しても当月のお支払ができない場合は、代金の支払い遅延とはなりません。
 
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5-5.購入・利用強制

物流事業者が荷主の指定する物や役務を強制的に購入させ又は役務を強制して利用させると購入・利用強制が適用されます。これは物に限らずに荷主の指定する「物」のすべてであり、不動産やゴルフ会員権、株券等も含まれます。子会社や関連会社の商品を購入させることもこの項目に該当します。

5-5-1.荷主の取引先商品の購入強制

<事例17>

 
原材料を販売している関係上、お菓子メーカーからお付き合いで毎月、スナック菓子を購入している。荷主企業の従業員にも販売しているが、それでも余って消費しきれないので物流事業者に買ってもらおう、といった事例です。商品を指定して、購入を強制又は断れない状況で購入させることを行った場合は利用・購入強制に該当します。
 
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5-5-2.再三の要請による役務の利用強制

<事例18>

 
物だけでなく形のない役務の利用強制も本項目にあたります。一度、断ったにも関わらず何度にもわたって再三要請することは強制ととられますので注意が必要です。物流の仕事を円滑に行うために荷主の情報システムを物流事業者に使わせる場合がありますが、この場合は、利用料を無償にするか、必要最低限の利用料を負担してもらってその費用を荷主がお支払いする物流費用に上乗せするかを行います。物流業務の効率化のためであっても、荷主の情報システムの開発費やシステムの維持管理を物流事業者に負担させることは強制にあたりますので注意をしてください。
 
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5-6.不当な経済上の利益の提供要請

ずいぶん前のことですが、大手の家電量販店が家電メーカーからの販売応援員に商品の陳列や清掃等を無償でさせ、優越的地位の濫用として公正取引委員会から排除命令を受けました。このように荷主の優越的な立場を利用して物流事業者に対して契約外の業務を無償で行わせることは、不当な経済上の利益の提供要請に該当します。特に物流事業者の会社を通さずに現場で荷主の担当者からドライバーに直接、○○やっておいてくれる。等のお願いをすることがこれに該当しますので、ついやってしまわないようにけん制できる仕組みを作ることが重要です。

5-6-1.夏祭りの協賛金支払要請

<事例19>

 
毎年7月の第四週に行われてる荷主の物流部門主催の夏祭りで会社からの予算だけでなくもっと盛大に、従業員にも豪華賞品が抽選で当たるようにしたい、という夏祭り企画担当者が優越的な立場を利用して物流事業者に協賛金を強要する場合は本項目に該当します。夏祭り以外にも荷主のA物流部長の定年退職記念品代を強要する等の行為は不当な経済上の利益提供要請にあたりますので注意が必要です。
 
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5-6-2.荷主の倉庫の整理を無償で手伝い要請

<事例20>

 
積込み待ちでトラックの中で居眠りをしているドライバーに対して、待ち時間で何もすることがないからと言って、散らかっている倉庫の中の整理をドライバーに無償でさせることは、不当な経済上の利益提供要請に該当します。この場合、物流事業者の事務所を通さずに荷主の担当者がドライバーに直接指示することで、ドライバーも断れない状況に置かれますので絶対にしないようにしてください。物流特殊指定だけでなく請負の観点からも会社を通さずに担当者に直接指示を出すことは禁止されています。
 
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5-6-3.別会社のトラック積込み手伝い要請

<事例21>

 
工場や倉庫でトラックを横付けして積込み・積卸しを行うスペース(専門用語でトラックバースといいます)は、限られており、1台のトラックが積込みを完了して出発するまで次のトラックがトラックバースに横付けすることができません。1台のトラックがもたもたして積込みが遅れていると、倉庫の外で待っているトラックが入ることができないので荷主の担当者としては、待機しているトラックのドライバーに他社のトラックへの積込みを手伝わして早く出発させようとする事例があります。これも物流事業者の事務所を通さずに荷主の担当者がドライバーに直接指示していること、必要な対価を払わずに無償でさせていることに問題があります。
 
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5-6-4.棄損のない商品まで費用負担要請

<事例22>

 
トラック運転中の事故により外箱3箱が壊れてしまった場合の事例です。中身が精密機械で箱が壊れていなくても中の商品に影響があるかどうかわからないので、物流事業者にトラックに積んでいたすべての箱の商品分を賠償請求するといった事例です。また、壊れやすい精密機械や高額品の配送を委託する場合は、あらかじめ商品の金額をお知らせして、その金額を補償できるだけの損賠賠償保険に入るよう依頼をすることを事前にしておくことが望ましいです。また、運送約款等で損害賠償金額の上限が定められている場合はその金額を超えての賠償請求はできませんので荷主自ら財物保険を付保するなどして、損害の場合に備えておくことが必要です。
 
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5-7.報復措置

値下げ要求をしたのにA社だけ要求をのまなかった、緊急で1車増車を依頼したのにトラックの手配をしてくれずに翌日配送になってしまった等、荷主の担当者からの依頼に対して物流事業者が応じなかったことを根に持って、取引量を減らしたり契約を打ち切ったりする行為を行った場合には報復措置に該当します。また、公正取引委員会や中小企業庁は弱者救済のための省庁であるので、そこに知らせたことで裏で荷主企業から報復されて取引量を減らされるのであれば誰も通報しなくなり、問題の早期発見ができなくなります。そこでこのように報復措置の規定を設け物流事業者が相談しやすい環境を整えています。

5-7-1.値下げ拒否を理由に報復措置

<事例23>

 
他の会社はすべて4月からの値下げを受諾したのにA社だけ、値下げを認めなかったため荷主の担当者があからさまに嫌がらせをして取引量を減らすといったことを行うと報復措置に該当します。相見積をとってA社が高かったため、岡山県行きの配送をA社からB社に変更する、といった場合は正当な理由がありますので報復措置とは異なります。明らかに事象があってその事象に対して報復をするとこの項目に該当します。
 
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5-7-2.公正取引委員会への通報を理由に報復措置

<事例24>

 
物流事業者が公正取引委員会に通報したらしい、という噂を荷主の担当者が聞いて、取引量を減らしたり物流事業者との取引を打ち切ったりする場合は、報復措置に該当します。公正取引委員会や中小企業庁だけでなく、全国中小企業振興機関協会が行っている下請かけこみ寺や国土交通省のトラック輸送適正取引推進相談窓口、トラック協会等も物流事業者の救済窓口になっていますので、それらの機関に相談したらかといった報復措置を行うことは禁止されています。
 
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5-8.割引困難な手形の交付

<事例25>

 
物流費用は振込が主流のため手形取引は少なくなっていますが、手形を交付する場合は60日以内のサイトで交付してください。下請法では繊維業以外の手形は120日以内となっていますが、通達等で将来的に60日以内に短縮するよう努めることを要請しています。法改正がなされて60日以内の手形交付となる可能性もあることから、今から60日以内で備えておくことをおすすめいたします。
 
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6.公正取引委員会の書面調査

平成15年(2003年)から毎年9月(令和3年は10月)に公正取引委員会による物流特殊指定の書面監査が実施されています。この書面調査は、荷主と物流事業者の取引状況を公正取引委員会が把握するために実施しており、令和3年は荷主約3万社、物流事業者約4万社が調査対象になっています。
下請法の書面調査は、回答しなかった場合には罰則規定がありますが、物流特殊指定の書面調査は協力依頼となっており、回答しなかった場合でも罰則規定はありません。ただ、公正取引委員会としてできる限り協力を呼び掛けていますので、荷主及び物流事業者の皆様は協力して正しく回答するようにしてください。
 

 
書面調査の内容は5.特定荷主の8つの禁止行為に関わる項目が設問10、小設問が29~31問あります。また、この回答に合わせて物流特殊指定の対象物流事業者の名簿を提出するようになっています。
令和28年(2016年)の物流特殊指定書面調査では製造業、卸売業、建設業などの荷主企業707社に物流特殊指定に照らして問題となるおそれがあるとして、公正取引委員会が物流事業者との取引内容の検証・改善を求める文書を発送しています。その内訳は代金の支払遅延(329件、41.6%)、代金の減額(165件、20.9%)、割引困難な手形の交付(105件、13.3%)となっていました。
 
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物流特殊指定違反かなと思ったら専門家に相談を

7.物流特殊指定違反かなと思ったら専門家に相談を

物流特殊指定は下請法と同じとよく言われますが、下請法にない資本金区分以外の取引上の地位が優越している荷主に対して物流特殊指定が適用されるなど、その適用範囲は公正取引委員会の動向を常にチェックしておかなければなりません。また、物流子会社は自分の会社の資本金区分では下請法が適用され、親会社の資本金区分では物流特殊指定が適用されるといった2つの法律に対しての対応が求められています。
令和3年(2021年)の物流特殊指定 書面調査では貨物自動車取扱事業である運送業の対象ではない、産業廃棄物の収集運搬や港湾運送事業法の対象である乙仲業者の運送や保管に対しても書面調査の対象として物流特殊指定が適用されるという方向性に動いています。
物流特殊指定は特殊な法律で、実務に即した対応をしていないと法律の専門家でもなかなか全体の概要がよくわからないのが実情だと思います。
当事務所は運輸・物流専門の法務事務所として今まで100以上の物流現場で物流特殊指定の問題解決に取り組んできた実績があります。どんな些細な問題でも構いません。荷主企業、物流事業者を問わずお問い合わせいただけましたら、現場の実務に即した対応をアドバイスさせていただきます。
 

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楠本浩一

代表 行政書士

楠本浩一

物流業界で20年以上法務担当の仕事をしてきました。現場や業務に即した法務相談を専門としていますので、お困りのことがありましたらご相談ください。英語での対応も可能です。