特定信書便事業許可
貨物運送業を行っていると荷主であるお客様から、請求書を届けてくれないか、検査成績書を届けてもらえないか、という依頼を受けることがあります。これらの信書と呼ばれる書面を送達することは、信書法で規定されており、一般貨物運送事業の免許を持っていても信書にあたる書類を送達することはできません。信書を送達するためには信書便の事業許可を取得しなければなりません。信書とは何か、信書便事業許可にはどのような要件が必要なのかを解説してきます。
目次
1.運輸・物流専門の行政書士
2.信書とは何か
3.信書に該当するもの該当しないもの
4.運送事業者を悩ませる信書便の送達
5.信書に対する例外規定
6.一般信書便事業と特定信書便事業
7.特定信書便事業
8.許可の要件
9.特定信書便許可取得までの流れ
10.許可取得後に行うこと
11.特定信書便の許可申請をサポートいたします
12.お知らせ
1.運輸・物流専門の行政書士
当事務所は大阪府大阪市にある運輸・物流専門の行政書士事務所です。大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県の関西地区を中心に運輸・物流に関する許認可を行っています。物流業界で20年以上法務を担当してきた経験がありますので、特定信書便事業許可のサポートをさせていただきます。Teams、Googlemeet、Zoomでのオンライン対応も可能ですので、関西地区以外の方もお問い合わせください。
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2.信書とは何か
信書とは、郵便法第4条第2項及び民間事業者による信書の送達に関する法律(以下、信書便法)第2条第1項で特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書と定義されています。
①特定の受取人とは、差出人が宛名として記載した事業者もしくは個人のことです。
チラシ・リーフレットのように宛名が記載されてないものや〇〇各位とった文書は信書に該当しません。
②意思を表示し、又は事実を通知するとは、差出人の考えや思いを表し、現実に起こり若しくは存在する事柄等の事実を伝えることをいいます。
③文書とは、文字によって認識することができる情報が記載された紙のことです。
CD、DVD、USBメモリーなどの電子データとして記録された電磁的記録物は文書ではないため信書に該当しません。
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3.信書に該当するもの該当しないもの
どのような文書が信書に該当するのかについては、平成15年総務省告示第270号信書に該当する文書に関する指針にてまとめられています。信書に該当する文書としては、①請求書、納品書、領収書、見積書、契約書、依頼書等、②株主総会などの会議招集通知等、③許可証等、④証明書等、⑤ダイレクトメールなどがあります。特に、注意しなければならないのは、①の請求書の類に関する文書です。運送事業者(一般貨物運送事業者)が信書のことをよくわからないままにこれらの文書の送達を受託することが郵便法違反になります。
<信書に該当する文書・該当しない文書>
※総務省資料より
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4.運送事業者を悩ませる信書便の送達
信書という言葉は、一般には馴染みが薄く信書自体を知らないという人がたくさんいます。荷主の物流担当者からちょっとお客様宛の請求書を一緒に運んでくれないかという依頼があったとします。このお客様宛の請求書が信書に該当します。運送事業者のドライバーも信書について理解できていない場合で、お客様の依頼だからと引き受けてしまうと無許可で信書を送達したことになり郵便法違反となります。特に着荷主(荷主企業のお客様)から返品の依頼書(返品伝票)を持って帰ってくれと要求されるケースがあり、荷主企業の担当者に相談してもお客様の依頼だから持って帰ってきてと依頼される場合です。返品伝票は特定の受取人に対し、差出人の意思を表示ている文書で信書にあたります。信書便事業の許可取らずに信書を送達した場合には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課せられます。(郵便法第76条)依頼した荷主企業側も直接の罰則はありませんが社会的責任が問われ、公表や指導が行われる可能性がありますので信書に対して正しく理解し対応することが必要です。
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5.信書に対する例外規定
信書の送達については、郵便法第4条第3項但書において、信書であっても貨物に添付する無封の添え状又は送り状については、運送営業者による送達が認められています。総務省見解で送り状とは、送付される貨物の種類、重量、容積、荷造りの種類、個数、記号、代価、受取人並びに差出人の住所及び氏名等当該貨物の送付に関する事項が記載されたものとされています。
つまり、送り状=納品書とされており、貨物に納品書を添付する場合に限っては、納品書が貨物の付属物扱いになるため信書送達ではないということです。貨物と一緒に運ぶ場合のみOKで納品書単独で送達する場合には信書とみなされます。ただし、無封(=信書に封をしていないこと)が条件ですので貨物の入った段ボール箱に中に入れるのではなく、段ボール箱の側面に封をせずに添付しなければなりません。納品書のみ例外が認められており請求書や見積書、契約書などはこの例外規定に含まれません。
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6.一般信書便事業と特定信書便事業
信書便事業とは、平成15年(2003年)に信書便法が施行され、それまで日本郵便㈱(郵政民営化が2006年のため当時の郵便局)のみが扱うことが可能であった信書の送達を規制緩和により民間事業者にも解放し、総務大臣の許可を取得することにより信書の送達を行うことができるようになりました。この許可を受けて事業を行うことを信書便事業といいます。
信書便事業には、一般信書便事業と特定信書便事業があります。
①一般信書便事業は、はがきや封書などを全国において引き受けできる事業者で参入障壁が非常に高く、今のところ日本郵便㈱1社のみ許可を受けています。
②特定信書便事業とは、信書の送達に関して民間事業者の創意工夫を凝らした高い付加価値を有するサービスを提供する事業のことをいい、大型信書便サービス(1号役務)、急送サービス(2号役務)、高付加価値サービス(3号役務)のいずれかの役務に該当するサービスを提供する事業となります。
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7.特定信書便事業
①大型信書便サービス(1号役務)
長さ・幅・厚さの合計が73cm超える信書便物または重量が4kgを超える信書便物を送達する役務
②急送サービス(2号役務)
信書便物が差し出された時から3時間以内に当該信書便物を送達する役務
③高付加価値サービス(3号役務)
信書便物送達の料金が、消費税含め801円以上で設定されている役務
特定信書便事業は、令和5年6月現在で584社(個人事業主含む)が許可を受けています。大手の運送事業者だけでなく、資本金1000万円以下の事業者でもエリアを限定したサービスであれば取得は可能です。また、許可を受けている割合では、一般貨物運送事業者が289社、軽貨物運送事業者が106社などの運送事業者が多いですが、運送業の免許を持っていない警備業や広告関連の事業者、福祉関連事業者がダイレクトメールを送達するために特定信書便事業の許可を受けているケースもあります。
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8.許可の要件
特定信書便事業の許可を受けるためには、適切な事業計画と事業遂行能力を有するかどうかの審査が行われます。提供する役務の種類や信書便物の引受け・配達の方法などを明記した事業計画、事業収支見積書等を提出して総務大臣の許可を受けなければなりません。
総務省の公表している許可基準によると
①その事業の計画が信書便物の秘密を保護するため適切なものであること。
② ①の他、その事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
③その事業を適確に遂行するに足る能力を有するものであること。
となっています。
実際の審査にあたっては、必要な資料を一式作成した上で、総務省の出先機関である各地方通信局との事前協議を行います。大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県の関西エリアであれば大阪市中央区大手前にある近畿総合通信局が窓口になります。近畿総合通信局の担当者と事前協議を行い必要な資料を修正して最終調整を行って受理となります。その後、近畿総合通信局の局内審査を経て、情報通信行政・郵政行政審議会へ諮問し、許可となります。近畿総合通信局との事前協議が最も重要でここをパスすればほぼ許可をうけることができます。
標準処理期間は、1から2か月となっていますが、事前協議に相当の時間を要すること、情報通信行政・郵政行政審議会が年に3回しか行われないことからタイミングを逸すると許可取得まで1年近くかかってしまいます。
申請時に手数料等は不要ですが、許可内示を受けた時点で登録免許税3万円の納付が必要です。
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9.特定信書便許可取得までの流れ
1 | お問い合わせ | このホームページのお問合せフォームもしくはお電話にてお問合せください。
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2 | ご面談 | 要件の詳細の確認及び許可までのスケジュールを共有させていただきます。(対面もしくはTeams、googlemeets、Zoom可能) |
3 | お見積・ご契約 | ご面談後、お見積書を作成致します。ご納得いただいた上でご契約ください。 |
4 | 要件確認・申請書類作成 | お客様とヒアリングの上、事業計画、収支計画、その他申請書類の案を当事務所で作成します。 |
5 | 近畿総合通信局との事前相談 | 作成した事業計画(案)等の資料を基に近畿総合通信局へ事前相談を行います。 |
6 | 事前協議 | 資料の中身について近畿総合通信局と事前協議をすすめていきます。 |
7 | 許可申請 | 審議会の諮問の日程を確認しながら近畿総合通信局と申請の日程を調整後、申請を行います。 |
8 | 情報通信行政・郵政行政審議会への諮問 | 近畿総合通信局での審査後、総務局より情報通信行政・郵政行政審議会への諮問します。 |
9 | 許可内示・登録免許税支払 | 情報通信行政・郵政行政審議会から許可等を行うことを適当とする旨の答申を受けた後、許可となります。許可内示を受けた後登録免許税3万円を支払います。 |
10 | 事業開始の届出 | 特定信書便事業を開始 |
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10.許可取得後に行うこと
特定信書便事業の許可には有効期限がないので、更新の手続きは必要ありません。一般貨物運送事業と同じく①事業概況報告書を事業年度終了後100日以内(3月決算の場合は7月10日まで)、②事業実績報告書を7月10日までに年1回毎年提出しなければなりません。また、変更が生じた場合には都度、認可申請もしくは届出を行なわなければなりません。
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11.特定信書便事業の許可申請をサポートいたします
特定信書便事業の許可取得を考えておられる事業者は当事務所までお問い合わせください。大型信書便サービス、急送サービス、高付加価値サービスのどの分野で取得するか、また、複数の役務を組み合わせて取得するかをお客様とのヒアリングを通じで適切なアドバイスをさせていただきます。また、従業員の人数、提携事業者の数や車両台数を勘案した上でどの地域までの許可を取得するかについても納得いくまで整合をさせていただいた上で、許可申請を提出します。お客様との対話を通じた上での申請範囲を決定しますので、決して書類にハンコを押すだけの丸投げではない方式を採用しています。
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12.お知らせ
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
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