【2025年改正】製造・流通業の荷主企業が知っておくべき運送委託に関する下請法改正のポイント
目次
1.下請法制定の背景
2.下請法とは
3.平成16年(2004年)の改正で役務提供委託が新たに対象
4.運送分野の下請法について
5.運送分野には物流特殊指定という法律もある
6.下請法勧告・指導・働きかけの件数
7.下請Gメン・トラックGメンによる取締りについて
8.運送分野での下請法勧告の事例
9.運送業における現状
10.2024年問題とその影響
11.令和7年(2025年)の下請法改正について
12.荷主から運送事業者への委託が物流特殊指定の対象から下請法対象取引にかわる
13.荷主・着荷主が注意すべきポイント
運送業では、人件費や燃料費高騰における価格転嫁が進んでいません。また、長時間の荷待ちや契約にない附帯作業をさせられています。このような現実を踏まえ、令和7年(2025年)に通常国会で下請法改正が成立する見込みです。公正取引委員会と中小企業庁は下請法の見直しを議論する有識者会議を開き、報告書をとりまとめています。また、この改正により下請という表現が廃止され、中小受託事業者に変更されることが決定しました。これにより、取引関係の公平性と透明性がさらに求められることとなります。本記事では、改正の背景や運送分野における製造・流通業などの荷主企業が受ける影響について詳しく解説します。
1.下請法制定の背景
下請法(正式名称 下請代金支払遅延等防止法)は、下請取引における取引の公正性を確保し、中小企業の利益を保護するために制定されました。高度経済成長期において、大企業が中小企業に対して不公正な取引条件を強いるケースが多発したことが背景にあります。特に、代金の支払遅延や一方的な価格引き下げなどが問題視され、これらを是正する目的で昭和31年(1956年)に施行されました。
下請法は、当初製造業を中心とした取引に適用されていましたが、その後、他の業種にも対象が広がり、取引の透明性と公平性を確保する重要な法律となっています。
2.下請法とは
下請法は、大企業(親事業者)が中小企業(下請事業者)に対して取引を行う際、不公正な行為を防止するための法律です。主な規制内容は以下のとおりです。
①代金の支払遅延や減額の禁止 | 親事業者が一方的に代金の支払いを遅延したり、減額する行為を防ぎます。 |
②一方的な返品や取引条件の変更の禁止 | 合意なく商品を返品したり、契約条件を変更する行為を規制します。 |
③書面での契約締結義務 | 契約条件を明確化するため、取引内容を文書で記載することが義務付けられています。 |
下請法は、公正取引委員会と中小企業庁が管轄しており、違反が確認された場合は勧告や指導が行われます。また、悪質な場合には、罰則が科されることもあります。
3.平成16年(2004年)の改正で役務提供委託が新に対象
平成16年(2004年)の下請法改正により、役務提供委託も下請法の適用対象となりました。これにより、物品の運送・保管の委託も下請法の対象となり、取引条件の透明性が強化されました。
例えば、運送分野では、元請運送事業者が中小運送事業者に対して不当に低い運賃を強いる事例が問題視されていました。役務提供委託が下請法の対象となったことで、これらの不公正な取引を是正する仕組みが整備されました。
4.運送分野の下請法について
運送分野では、下請法の適用が広がることで、以下のような問題が解消されることが期待されています。
①荷主からの一方的な運賃引き下げ要求の抑止
前年と比較して一律に運送料金の引き下げを要請し、下請事業者と十分な協議を行うことなく、前年から一定割合を引き下げた単価で運送を委託したケースがあります。このような行為は、下請法第4条第1項第5号の買いたたきに該当し、下請法に違反するおそれがあります。
②運送契約に基づかない附帯作業の強要の防止
運送受託者のドライバーに対し、契約で定められていない倉庫内での荷役作業やピッキング、仕分け、清掃、検査・検収、ラベル貼りなどの業務を無償で行うよう求めました。これらの作業は当初の運送契約には含まれておらず、追加の労力を伴うものであり、下請法第4条第2項第3号の不当な経済上の利益の提供要請に該当し、下請法違反となるおそれがあります。
③運送事業者に対する適正な代金支払いの促進
中小運送事業者が元請運送事業者から配送業務を請け負い、発注金額を決めて業務を行っていました。しかし、運ぶべき荷物が減少したため、元請運送事業者は発注金額を減額して代金を支払いました。この場合、中小運送事業者に責任がないにもかかわらず代金を減額することは、下請法第4条第1項第3号の代金の減額に該当し、下請法違反となるおそれがあります。
5.運送分野には物流特殊指定という法律もある
運送業界には、独占禁止法に基づく物流特殊指定が存在します。これは、荷主が運送事業者に対して不公正な取引条件を強制する行為を規制するものです。ただし、物流特殊指定は法令ではなく公正取引員会の告示であり、下請法にある書面交付などの4つの義務がない、罰則規定がないなど十分に機能しておらず、下請法の適用拡大が求められる背景の一因となっています。
6.下請法勧告・指導・働きかけの件数
公正取引委員会は、毎年多くの下請法違反案件を調査しています。特に運送分野では、以下のような違反が報告されています。
①契約条件の書面不備
契約書が締結されていない。
②運送代金を減額して支払い
荷主側の予算の都合で一方的に運送代金を減額して支払う。
③一方的な取引条件変更
荷降ろしは倉庫側で行う取決めにもかかわらず、ドライバーに荷降ろしを強要する。
令和5年度(2023年度)には、下請法違反に対する措置件数は8281件、そのうち運送業関する措置件数は495件と全体の約6%を占めています。
※公正取引委員会発表資料より
7.下請Gメン・トラックGメンによる取締りについて
下請Gメンとは、公正取引委員会が設置する専門の調査員で、不公正取引の取り締まりを行います。運送分野では、令和5年(2023年)7月に国土交通省・地方運輸局の職員で構成されるトラックGメンを設置して荷主による不当な契約条件の押し付けが重点的に監視されています。これにより、下請事業者の立場が強化される一方、荷主側のコンプライアンス意識も高まっています。また、トラックGメンは倉庫事業者への荷主の行為の情報収集、是正指導も強化することから令和6年(2024年)11月にトラック・物流Gメンと改称しました。
具体的な事例
ある荷主が、燃料価格の高騰にも関わらず運賃を据え置いた事例が調査対象となりました。トラックGメンの介入により、適正な価格転嫁が実現されました。
8.運送分野での下請法勧告の事例
具体的な事例として、以下のようなケースがあります。
①長時間の荷待ち時間を適正に評価しない契約条件の改善
運送事業者に対して長時間の荷待ちを強いているとの情報が寄せられました。元請運送事業者に対して働きかけを実施し、改善策を提案・指導しました。
②運送業者に対する一方的な附帯作業の押し付けに対する是正指導
長時間の荷待ちや無理な到着時間の設定、過積載となる依頼など、複数の違反原因行為を行っているとの情報が寄せられました。元請運送事業者に対して勧告を行い、是正措置を求めました。
③運送事業者に対するサービスの利用強制に関する勧告
元請運送事業者は、荷主等から請け負った貨物の運送を運送事業者に委託している際、運送事業者に対し、自社が提供する貨物運送サービスの利用を強制していました。具体的には、運送事業者ごとに目標金額を設定し、その達成状況を複数回にわたり確認するなどして、運送サービスの利用を余儀なくさせていました。
9.運送業における現状
運送業では、人件費や燃料費高騰における価格転嫁が進んでいません。また、長時間の荷待ちや契約にない附帯作業をさせられています。
運送業界は現在、多くの課題に直面しています。その中でも特に深刻なのが、低賃金や長時間労働の問題です。
トラックドライバーの給与が低い要因には以下のようなものがあります。
①燃料費やその他コストの運賃反映が不十分 | 荷主が燃料費高騰分を運賃に反映しない場合、運送事業者の利益が圧迫され、結果的にドライバーの給与が低くなる。 |
②荷待ち時間の無償化 | 長時間の荷待ちが発生しても、運送事業者が荷主に対して適正な報酬を請求できないケースが多い。 |
③契約にない附帯作業 | 荷主から契約外の作業を強要されることがあり、その分の労働が正当に評価されない。 |
10.2024年問題とその影響
2024年4月に施行された労働時間規制の強化(いわゆる2024年問題)により、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されました。これにより、以下の影響が懸念されています。
①ドライバー不足の深刻化 | 規制により、長時間労働ができなくなることで、輸送能力が低下する。 |
②社会インフラの停滞 | 物流の滞りが生じることで、消費者や産業界に大きな影響を与える。 |
実態の掘り下げ
事例1 | 荷主からの荷待ち時間が1日6時間に及ぶケースが日常化していました。この時間は無報酬であり、ドライバーの労働意欲を著しく低下させています。 |
事例2 | 契約にない倉庫内作業を強要された結果、実質的な労働時間が増加し、他の業務に支障をきたしたケースが報告されています。 |
11.令和7年(2025年)の下請法改正について
令和7年の通常国会で下請法の改正が予定されています。この改正では、運送分野における価格転嫁の促進や、荷主と下請事業者の間の取引条件の透明化が図られる見込みです。
改正のポイント
①価格転嫁拒否に対する罰則強化
②契約条件の書面明記の義務化
③荷待ち時間に関する明確な規定追加
12.荷主から運送事業者への委託が物流特殊指定の対象から下請法対象取引にかわる
改正に至った背景
物流特殊指定では以下のような課題が指摘されていました。
①規制の限界 | 物流特殊指定は独占禁止法に基づいていますが、具体的な取引条件の改善に十分な効果を発揮できない場合がありました。 |
②運送業界の構造的な問題 | 燃料費高騰やドライバー不足が深刻化する中、取引条件の透明性を高め、公平な環境を整える必要性が高まっていました。 |
③現場の声 | 中小運送業者からの訴えにより、物流特殊指定だけでは現場の問題を解決できないことが明らかになりました。 |
下請法対象取引への移行の意義
①運送事業者の保護強化 | 下請法の適用により、運送事業者が不公正な取引条件を受けた場合、公正取引委員会への相談がしやすくなります。 |
②荷主の責任明確化 | 荷主が適切な取引を行う義務が明確化され、契約条件の透明性が向上します。 |
想定される改善例
物流特殊指定では対応しきれなかった長時間の荷待ちや、附帯作業の強要が問題視されてきました。例えば、ある荷主が運送事業者に対し、夜間の荷下ろし作業を追加料金なしで求めた事例があります。このケースでは、下請法改正後、適正な追加報酬が支払われるようになり、荷主と運送事業者の信頼関係が向上していくことになるでしょう。
13.荷主・着荷主が注意すべきポイント
令和7年の下請法改正により、荷主と運送事業者の取引関係が大きく変わることが予想されます。荷主だけではなく、荷主のお客様である着荷主や着荷主から委託を受けている倉庫会社についても下請法の適用をうける可能性があるため、下記のポイントについて注意する必要があります。
荷主が注意すべきポイント
①契約条件の明確化 | 附帯作業や荷待ち時間を含め、契約書に詳細を明記し、それに基づく適正な報酬を支払う。 |
②価格転嫁への対応 | 燃料費や人件費の変動に柔軟に対応し、運送事業者への適切な配慮を行う。 |
③コンプライアンス強化 | 下請法違反行為を未然に防ぐため、社内体制を見直し、法令遵守を徹底する。 |
着荷主が注意すべきポイント
①対応の迅速化 | 荷物の受け取りにおける待機時間を短縮し、運送業者への負担を軽減する。 |
②負担の適正化 | 過剰な負担を運送業者にかけないよう、柔軟な納品条件を設定する。 |
③法的な責任 | 着荷主は運送業者との直接契約がなくても、下請法違反行為に関与した場合、指導や勧告を受ける可能性があるため注意が必要です。 |
物流業界全体での持続可能性を確保するためには、荷主、着荷主、運送事業者が協力し、公正かつ透明性のある取引環境を構築することが求められています。法改正を契機に、業界全体の意識改革が進むことを期待します。
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