③物流情報(コンプライアンス)

令和4年度物流特殊指定書面調査の結果を公表


最終更新日 2023年11月27日



公正取引委員会は、令和5年(2023年)6月1日付で令和4年度に実施した物流特殊指定書面調査の結果を公表しています。この書面調査は、令和4年10月に実施した荷主向けの調査と令和5年1月に物流事業者向けに実施した2つの書面調査の結果をまとめています。また、令和4年度に公正取引委員会が実施した、荷主と物流事業者との取引に関する優越的地位の濫用事案の処理状況についても合わせて結果を公表しています。

【目次】

1.物流特殊指定とは
2.物流特殊指定書面調査
3.価格転嫁の達成状況調査ではトラック運送業が最下位
4.荷主と物流事業者との取引に関する調査結果
5.問題につながるおそれのある主な事例
6.優越的地位の濫用事案の処理状況
7.改善が認められた事例
8.まとめ
9.お知らせ

 

1.物流特殊指定とは

荷主と物流事業者との取引における優越的地位の濫用行為を規制するために独占禁止法の規定に基づき、公正取引委員会の告示として物流特殊指定を定めています。物流取引では、平成16年(2004年)の改正下請法施行により、役務提供委託も対象になったのを機に下請法の対象外である、物流を業としていない荷主から物流事業者への物流委託が物流特殊指定によって規制されることになりました。

物流特殊指定は下請法とほぼ同じ内容ですが、下請法でいう4つの義務・11の禁止事項のうち、4つの義務は規定されておらず11の禁止事項のうち製造委託に適用される①受領拒否、②返品、③有償支給原材料用の対価の早期決済の3項目を除いた8つの禁止事項が物流特殊指定の禁止事項として定められています。

・物流特殊指定マニュアル

※物流特殊指定は正式名称を特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合いの特定な不公正な取引方法といいます。

 

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2.物流特殊指定書面調査

公正取引委員会事務総局 経済取引局取引部長名で発行される①物流事業者との取引に関する調査について(荷主対象)②荷主との取引に関する調査について(物流事業者対象)の2つを合わせて物流特殊指定書面調査と呼びます。荷主対象、物流事業者対象のいづれも協力依頼となっており、任意で協力をお願いするものとなっています。書面調査に関する回答を行わなかった場合又は真実でない回答をした場合でも罰則はありませんが、公正取引委員会が、物流取引の公正化に向けて実態に即した状況を把握することを目的としており、できる限り正しい内容で調査に協力することが望ましいです。日頃の活動で公正取引委員会に協力する姿勢を示しておいたほうがよいと思います。
類似する下請法の書面調査(下請事業者との取引に関する調査について)は、下請法第9条第1項の規定に基づいて実施するものであり、未提出及び虚偽の報告をしたときは、50万円以下の罰金に処せられます。
 
下請法第9条第1項
公正取引委員会は、親事業者の下請事業者に対する製造委託等に関する取引(以下単に「取引」という。)を公正ならしめるため必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

 

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3.価格転嫁の達成状況調査ではトラック運送業が最下位



公正取引が令和4年5月31日に公表した価格転嫁に係る業種別分析報告書で、原材料や燃料費、人件費等の上昇によるコスト上昇分を価格転嫁できているかについての調査を行ってます。この中で①価格転嫁を発注側企業に受け入れてもらえたか、②発注側企業に価格転嫁の協議を申し込み話し合いに応じてもらえてか、についての調査結果では、全16業種中、価格転嫁の達成状況、価格転嫁の協議状況共にトラック運送業が最下位になっています。
価格転嫁の達成状況では、価格転嫁が全くできなかったが31.4%、価格転嫁を申し入れたにも関わらず逆に値下げをさせられた運送事業者が4.1%もありました。
価格転嫁の協議状況では、発注側企業に価格転嫁の協議を申し込まなかったが52.3%、協議の申し込みを行ったが応じでもらえなかったが5.2%ありました。
このように発注側企業である対荷主・対元請運送事業者において大変弱い立場である運送事業者が多数存在しています。
公正取引委員会、経済産業省、国土交通省もこの状況を重視し、2022年12月28日には公正取引委員会が下請け企業との取引価格に適切に転嫁しなかったとして、佐川急便を名指して公表しています。また、2023年2月7日には中小企業庁がコスト上昇分を下請け企業との取引価格に反映できていない(最低評価をうけた)企業として日本郵便を公表しいています。このように大手物流企業を実名で公表することにより物流業界全体で価格転嫁を進めていこうという国の強い姿勢が見受けられます。
※この2つの公表は、あくまでも公表のみであり下請法・物流特殊指定に違反したものではありません。

 

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4.荷主と物流事業者との取引に関する調査結果


荷主と物流事業者との間の物品の運送又は保管に係る継続的な取引を対象として、10月に荷主30,000社を対象として、翌年1月に物流事業者40,000社を対象として書面調査を実施しています。下請法書面調査のように回答に法的拘束力はなく協力依頼としているため、回収率は荷主61.5%、物流事業者44.8%になっています。この書面調査を踏まえて、原材料や燃料費、人件費等の上昇によるコスト上昇分を十分な協議を行わないで価格転嫁を行わなかった事案については、荷主101社に対して公正取引委員会の立入検査が実施されています。

また、立入検査まではいかないが物流特殊指定上、問題につながるおそれがある事案については、777社の荷主に対してのべ917件の注意喚起文書を送付しています。それらの事案件数を項目別でみると①買いたたき、②代金の支払遅延、③代金の減額の順になっています。

 

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5.問題につながるおそれのある主な事例

917件の注意喚起文書を送付した物流特殊指定・独占禁止法上、問題につながるおそれのある主な事例は下記のとおりです。

5-①買いたたき

(その他製造業)令和元年以降、価格交渉の場で明示することなく据え置いていた。
(窯業・土石製品製造業)30年ほど前の運賃を据え置いて運賃値上げ交渉に応じなかった。
(飲食料品卸売業)大型トラックでなかれば積載できない量を委託しているにもかかわらず中型トラックの運賃しか払っていなかった。
(協同組合)物流事業者がコスト上昇分の運賃引き上げを求めたが予算を理由に協議することなく一方的に運賃を据え置いた。

5-②代金の支払遅延

(各種商品卸売業)担当者が事務処理を忘れたため、運送事業者に請求書を再発行させて1か月遅れで支払った。
(飲食料品卸売業)自社の計算ミスが原因であるにもかかわらず支払を翌月に遅らせた。

5-③代金の減額

(食料品製造業)自社商品売上げの低迷を理由に、一方的に運賃を減額した。
(総合工事業)物流事業者に対し、運賃のうち1万円未満の端数を切り捨てて支払った。

5-④不当な給付内容の変更及びやり直し

(印刷・同関連業)当日キャンセルしたが、物流事業者において既に発生した費用を負担しなかった。
(物品賃貸業)積み込む荷物の用意を終えておらず、数時間に及ぶ待機を余儀なくさせているが、待機時間に関する支払を行っていなかった。

5-⑤不当な経済上の利益の提供要請

(生産用機械器具製造業)物流業務に附帯して輸入通関業務を委託するに際して、物流事業者に支払う手数料に比して極めて大きい額の関税及び消費税を立て替えさせた。
(化学工業)積荷の缶製品を手作業で大型トラックに積み込ませているが、それに対する作業料金を支払っていなかった。

5-⑥割引困難な手形の交付

(窯業・土石製品製造業)運賃の大半を手形期間150日の約束手形で支払っていた。

5-⑦物の購入強制・役務の利用強制

(協同組合)電話や訪問により繰り返し生鮮食品の購入を要請し、当該生鮮食品を購入させた。

 

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6.優越的地位の濫用事案の処理状況

917件の注意喚起文書を送付した物流特殊指定・独占禁止法上、問題につながるおそれのある主な事例は下記のとおりです。

6-①減額

(物品賃貸業)支払う段階になってから値引きを要請し、物流事業者に応じさせて値引き分を差し引いて支払っていた。
(製造販売業)振込手数料と称して支払代金から振込手数料相当額を上回る額を減額して支払っていた。

6-②支払遅延

(化学工業)事務処理の手違いを理由として、支払期日までに代金を支払っていなかった。(農産物の販売業)支払期日が金融機関の休業日に当たった場合に、合意を得ることなく、翌営業日に運送代金を支払っていた。

6-③不当な給付内容の変更及びやり直し

(卸売業)積込み及び荷卸しの際に待機時間が発生しているにもかかわらず、費用の支払について取り決めておらず、待機料を支払っていなかった。
(農産物の販売業)積込みの際に待機時間が発生しているにもかかわらず、費用の支払について取り決めておらず、待機料を支払っていなかった。

6-④購入・利用強制

(農産物の販売業)事業遂行上必要としない商品の購入を要請していた。

6-⑤その他経済上の利益の提供要請

(農産物の販売業)集荷場においてフォークリフトを使用した積込み作業を行わせていたにもかかわらず、作業に必要な費用を支払っていなかった。

 

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7.改善が認められた事例

1年前の令和4年5月25日に問題につながるおそれのある事例として、荷主が通関手続において発生する関税及び消費税を荷主において直接支払わず、物流事業者に対し、立替払をさせた事例が公表されました。その後の調査で、この荷主は令和4年度中に①包括納期限延長制度の利用を開始、②税関に対して提供する担保には金融機関が提供する保証サービスを利用することにより物流事業者の立替払を解消しています。また、別の荷主は同様の事例でリアルタイム口座振替方式の利用を開始し、物流事業者の立替払を解消しています。輸入貨物の引取り時に発生する関税・消費税の立替えは物流事業者にとって大きな負担になっています。毎月1億円の貨物を輸入し、輸入関税が5%だった場合、消費税の10%と合わせて1500万円を立替なければなりません。本業の運送・通関・保管等の物流費用が月300万円の場合は、物流費の5倍の金額を立替えなければならない。といった状態が発生しています。

 

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8.まとめ

物流特殊指定の書面調査には10年以上も携わっていますが、毎年、公表・注意喚起がおこなわれているにもかかわらず、同じような事案で注意喚起や立入検査が行われています。
物流事業者への書面調査から荷主の問題となる行為が発覚することが多いのが実情です。大手企業の場合は、社内での内部統制や監査体制が整っているはずなのですが、物流取引に関しては、よくわからないといった理由で法務部門、監査部門も詳細を精査できていないことが多いようです。製造業などでは、モノづくりや販売がメインの仕事のためどうしてもそれらの部門に目が行きがちですが、物流取引の適正化をおろそかにしていると、物流事業者から公正取引委員会への通報などで立入検査が行われる可能性があります。公正取引委員会の立入があると、それに至る証跡整備などの準備に関係者が多大な時間をとられます。また、立入検査で不備があった場合には勧告や公表といった社会的制裁を受けることもあります。取引適正化で襟を正しておかないと、大手通販事業者のように、物流部門の社員が不正行為を働くことにもつながりかねません。
荷主や元請物流事業者の皆様は、今一度、物流特殊指定や下請法に違反する行為を行っていないが、社内チェックを行ってみてください。
 

 

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9.お知らせ

当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。