年末年始(12月10日~1月10日)は国土交通省の「安全総点検」実施期間です

 

毎年、年末年始は物流・旅客ともに輸送需要が一気に高まる時期です。この期間は長期休暇による帰省・旅行などの人の移動や年末ギフト商戦による物の移動とが集中し、ひとたび事故やトラブルが起これば重大な被害につながるおそれがあります。そのため国土交通省は、12月10日から翌年1月10日までを年末年始の輸送等に関する安全総点検実施期間と定め、全国の運送事業者に対して自主点検の実施を求めています。

この総点検は、国が事業者に対して厳しい検査や強制でやれという趣旨ではなく、自主点検による安全意識の向上を目的とした取り組みです。特にこの時期の立入検査は通常より限定的となり、事業者自らが点検表にもとづいて安全管理体制を確認することが重視されています。

この年末年始の安全総点検は、国土交通省がすべての運送事業者に求める自主点検です。旅客運送・貨物運送など業態によって重点項目や求められる水準が大きく異なるため点検表をただ埋めるためでは不十分です。

当事務所で確認した2025年版・公式自主点検表(貸切バス/タクシー・ハイヤー/トラック)を踏まえ、3業態のポイントを比較・整理します。

1.貸切バス/ハイヤー・タクシー/トラック3業態に共通する絶対に外せない点検項目

すべての点検表を精査すると、以下の項目はバス/ハイヤー・タクシー/トラックに共通して最重要扱いになっています。

①乗務員の健康管理(健康起因事故対策)

健康状態の把握
過労運転の防止
体調不良者の乗務禁止判断
健康管理マニュアルの遵守状況

この項目は貸切バス/ハイヤー。タクシー/トラックの3業態すべてで強調されており、国土交通省が最も重点化している分野です。

②適正な点呼(アルコール・指示事項の徹底)

対面点呼・IT点呼・電話点呼の適正実施
アルコール検知器の作動確認と記録
運行前後の運転者への注意喚起

点呼はアルコールチェックだけではなく、運転者の健康状態の確認と安全運転の注意喚起が必要です。また、宿泊を伴う運行の場合は電話点呼がしっかりとできているかも強調されています。

③ 車両の日常点検・定期点検整備

法令に基づく点検整備(12か月点検、3か月点検、日常点検)
タイヤの脱落事故防止(特に冬用タイヤへの交換時期、大型車では厳格に注意)
災害や悪天候時の運行の可否判断

トラックとバスは車両構造が大きいことから、タイヤ・ホイールの点検記録がより重視されます。整備管理規程にタイヤ着脱作業について盛り込んでいますでしょうか。タイヤ着脱作業管理表、タイヤ巻締作業・管理一覧表を作成しているか確認してください。

④ 事故・災害発生時の連絡体制

連絡経路の明確化
連絡先一覧の整備
緊急時マニュアルの周知

貸切バス/ハイヤー。タクシー/トラックの3業態共通で必ず点検が求められています。

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2.貸切バス/ハイヤー・タクシー/トラック 業態別の特徴的な点検ポイント比較表

項目貸切バスタクシー・ハイヤートラック
安全対策の重点性最も厳しい。軽井沢事故を踏まえた特別項目がある乗客対応・接遇が含まれる荷役・積載・車輪脱落・コンテナ輸送が独自
運行管理運行計画の適正性(速度・休憩・夜間)乗務員の交替・街中での安全確保配車・荷待ち・拘束・過労防止が中心
健康管理二種免許の特性上、特に厳格乗客対応への影響から重視健康起因事故が多いため重点化
車両整備大型車のため重点が多い車両規格が比較的シンプル車輪脱落防止・貨物固定が重要
事故防止旅客重大事故防止が最優先交通トラブル・乗客対応含む荷物落下・積み込み起因事故が独自
危機管理(テロ等)バスターミナル等の対策あり乗車場所での安全確保倉庫・物流拠点の警戒が対象
書類整備乗務記録・指導記録の厳格化乗務日報・苦情記録など運行指示書・点呼記録・整備記録

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3.業態別 点検表の読み方と特に注意すべき項目

①貸切バス:最も厳しい自主点検(事故の重大性)

貸切バスは国土交通省が最も重点的に安全対策を実施しており、「軽井沢スキーバス事故を踏まえた項目」が単独で記載されていることが特徴です。

特にチェックすべきチェック項目として、

  • ドライブレコーダーの記録を利用した運転者への指導・監督を実施している
    ⇒当事務所が顧問先へ指導している毎年12月の安全教育テーマです。
  • 運転者に直近1年間に乗務していなかった車種区分の自動車を運転させる場合に、初任運転者と同様の指導・監督を実施している
    ⇒準初任運転者区分(運転経験のある貸切バスより大型の区分のバスに乗務しようとする運転者)には法定の座学・実技指導が必要
  • 長距離運行等、乗務の途中に点呼が必要な場合に点呼を確実に実施し、録画・録音、アルコール検査時の写真を撮影している
  • 乗客にシートベルト着用を促し、発射前に乗客のシートベルト着用状況を目視で確認している
  • フットブレーキの使い方など安全指導をおこなっている

など、旅客事故の社会的影響が大きいため、他の業態よりも点検項目が細かく構造化されています。

②ハイヤー・タクシー 

ハイヤー・タクシーでは、特有の項目がないため割愛

③トラック(貨物運送):大型トレーラー輸送に関する安全状況チェック

貨物輸送の場合は、大型トレーラーによる輸送チェック項目が貸切バス/ハイヤー・タクシーとは別に存在します。

  • トレーラーの荷台とコンテナを固定する緊締装置のロックを徹底しているか
  • トラクタ・トレーラの構造上の特性を踏まえた指導をしている
  • コンテナ内の品目や危険物に関する情報を運転者に共有している

 また、貸切バスと同様に大型車両を運行するためタイヤの着脱に関してのチェック項目が9項目あります。
タイヤ脱着作業は、計画的に正しい知識を有する者に実施させて

とりわけ運送業界では、飲酒運転防止、過労運転防止、健康起因事故の予防、タイヤ脱落事故防止など、例年指摘が多い項目が重点化されています。

当事務所では、自主点検表を保有しています。点検シートは貸切バス、トラック、タクシー、都市型ハイヤー、軽貨物自動車など各業態に対応したものを取り揃えております。ご希望の運送会社様には、無料で様式をお渡しするとともに、必要に応じて点検方法や記載のポイントについてのアドバイスも行います。

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