①物流情報(貨物運送)

テールゲートリフターの荷役作業の特別教育義務化


最終更新日 2023年11月27日



労働安全衛生規則第36条は、危険又は有害な業務であって特別教育が必要な業務が定められています。今回、規則改正によりテールゲートリフターの荷役作業が第5号に追加され2024年2月から特別教育が義務化されます。対象となる業務はどのような業務なのか? どのような教育を実施すればよいのかについて本項目で説明していきます。荷物をおろすという用語は、労働安全衛生規則での表現が卸すとしているため降ろすではなく、本項目では卸すの表現で統一しています。

【目次】
1.テールゲートリフターとは
2.テールゲートリフター荷役作業中の事故の事例
3.特別教育の対象となる業務
4.特別教育の内容
5.特別教育の講師について
6.注意すべき点
7.お知らせ


1.テールゲートリフターとは

トラックの車両後部に装着して使用する昇降装置のことをいい、車輪付の台車にのったまま、商品を卸すことができ、ドライバーの荷役作業の省人化が図れます。テールゲートリフターを使う商品の代表例として冷蔵庫や洗濯機などの大型家電製品、引越し時の家具、什器類、スーパーへの納品をかご台車で行う場合などです。テールゲートリフター付のトラックを使うことで、かご台車でそのまま納品することができるようになり、荷物の積み卸し作業の軽減だけでなく、荷崩れなどの商品へのダメージが大幅に減っています。パワーゲートという言葉も使われますが、極東開発工業が商標登録しており、一般名としては、テールゲートリフターになります。
 

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2.テールゲートリフター荷役作業中の事故の事例

トラックドライバーの労働災害は、79%が停車中の荷役作業によって発生しています。荷役作業を軽減するために使用されるテールゲートリフターにおいても労働災害が発生しています。特にスーパーマーケットやチェーン店への納品時に使用されるかご台車(ロールボックスパレット)が重くて倒れやすいため下敷きになると死亡事故など重篤災害につながります。このような災害が多く発生してることを踏まえて、特別教育が義務化されました。
<テールゲートリフターでの事故事例>
①作業者が転倒・転落
②荷物の転倒・転落による下敷き
③荷台と昇降板との間にはさまれ

 

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3.特別教育の対象となる業務

特別教育の対象となる業務は、テールゲートリフターを操作する業務になります。
具体的には、
①テールゲートリフターの稼働スイッチの操作
②備え付けのキャスターストッパーの操作
③昇降版の展開や格納の操作
をする人が特別教育を受ける対象となります。ただし、補助員としてかご台車(ロールボックスパレット)を載せたり卸したりする作業員も特別教育を受けることが望ましい、とされています。
また、テールゲートリフターを操作するが、特別教育の対象外となる業務が定められています。
①荷の積み卸しを行わない定期点検等の業務
②介護用の車両に設置されている車椅子を対象とする装置の操作
特別教育は、運送業のドライバーだけでなく、すべての業種でテールゲートリフターを操作する作業者が対象となります。営業用の緑ナンバーのトラックを使って納入をする人だけではなく、自家用の白ナンバートラックで納品する人も対象となりますので、特別教育は運送業だけでなないということを理解しておいてください。また、トラックの最大積載量に関係なくすべてのトラックが対象になります。昇降設備設置やヘルメット着用義務は最大積載量2トン以上のトラックに限定(2023年10月から5トンから2トンに法改正)されていますが、テールゲートリフターの特別教育は、設置されているすべてのトラックが対象となります。
 

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4.特別教育の内容

特別教育は、学科4時間、実技2時間になっています。

1 テールゲートリフターに関する知識

(テールゲートリフターの種類、構造及び取扱い方法、テールゲートリフターの点検及び整備の方法)

 1.5時間
2 テールゲートリフターによる作業に関する知識

(荷の種類及び取扱い方法、台車の種類、構造及び取扱い方法、保護具の着用、災害防止)

 2時間
3 関係法令(法令及び労働安全衛生規則中の関連条項)  0.5時間
4 実技  2時間

同じ日にすべて実施しなくても、学科と実技が別の日になっても構いません。また、科目ごとに別の講師が担当しても構いません。
例外として特別教育を一部省略できる場合があります。
①荷役作業従事者のための安全衛生教育実施要項に基づく安全衛生教育(テールゲートリフターを含むもの)受講者は、テールゲートリフターに関する知識1.5時間とテールゲートリフターによる作業に関する知識  2時間を省略することができます。
②陸災防が実施する「ロールボックスパレット及びテールゲートリフター等による荷役作業安全講習会」受講者は、テールゲートリフターによる作業に関する知識  2時間を省略することができます。
③令和6年(2024年)2月1日時点で、うテールゲートリフターの操作の業務に6か月以上従事した経験を有する者は、テールゲートリフターに関する知識を45分以上受講し、実技講習を1時間以上受講するだけでよいとされています。
④テールゲートリフターの製造者、取付作業等による説明が、操作を実際に行わせながら実施された場合は、その時間を実技の2時間の中に含めることができますので別途、2時間実技講習を受講する必要はありません。
 

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5.特別教育の講師について

テールゲートリフター特別教育の講師について、資格要件はありません。学科・実技科目について十分な知識・経験があれば講師になることができます。学科科目の講師が社内で要請するのが難しい場合は、学科科目のみ社外で受講し、実技のみ社内講師が担当することもできます。社内講師による特別教育を実施する場合ですが、陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)からテールゲートリフター作業者必携、テールゲートリフター安全作業ハンドブック、学科教育用映像補助教材としてDVDが販売されているのでそれらを使用するとよいと考えます。また、テールゲートリフター特別教育のインストラクター養成講習も本協会で実施しており、今後、新人ドライバーへの講習を年に数回自社で実施する場合は、講師になる自社社員をこの養成講習に参加させるのもよいかと思います。
貨物運送業以外の方は、陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)が馴染みがないですが、一度ホームページにアクセスされるとテールゲートリフター特別教育に関する有益な情報が得られると思います。
 

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6.注意すべき点

従業員に特別講習を受講させた場合は、その受講させた名簿を作成して確実に把握をしておきます。自社で行った研修記録は3年間保存しておいてください。また、研修を受講した本人に修了証を発行する義務はありませんが、1人1人がテールゲートリフター特別教育を受講したということをわかるようにしておくという目的で、修了証を発行したほうがよいでしょう。労働安全衛生規則で定められた学科4時間、実技2時間は確実に実施するようにしてください。自社の中でテールゲートリフターを操作するもしくは補助員として操作する可能性がある社員をリスト化して対象者の漏れがないようにしておくことも大切です。2024年2月から特別教育が義務化されます。現在、テールゲートリフターの操作に従事している作業者は確実に2月までに特別教育を修了しておかなければなりませんので早め早めの準備が大切です。
 

 

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7.お知らせ

当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。