④物流情報(その他)

日野自動車と三菱ふそうの経営統合


最終更新日 2023年11月27日



2023年5月30日に日野自動車株式会社(以下、日野)と三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下、三菱ふそう)との経営統合が発表され、翌31日には、日野自動車代表取締役社長(CEO)小木曽 聡、代表取締役社長(CEO)カール・デッペン、及び双方の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)社長(CEO)佐藤 恒治、ダイムラートラック社(以下、ダイムラートラック) CEO マーティン・ダウム氏の4名による記者会見が1時間30分にわたって行われました。この記者会見は、トヨタ自動車コーポレートの公式YOUTUBEサイトで公開されているので、私も最後まで拝見させていただきました。4社の協業の狙いや思いをそれぞれの企業のトップが話されていましたので、その内容を要約してお伝えしたいと思います。

【目次】

1.日本におけるトラック製造業界地図
2.日野自動車(日野)のエンジン不正問題
3.この経営統合は親会社のトヨタ、ダイムラートラックを含めた4社の協業
4.CASE技術
5.商用車の未来を共につくる
6.お知らせ

 

1.日本におけるトラック製造業界地図


2022年は世界的な半導体不足、新型コロナウイルスの流行により輸入原材料の物流停滞により各自動車メーカーは生産量を大きく減らしています。加えて、日野のエンジン不正問題で一部車種の認定取り消しを受け、生産できなくなりました。2022年のトラック国内販売台数は2021年比で66.7%の55,875台と大きく落ち込みました。特に日野は前年比48.6%と2021年の約半分の販売台数となっています。
日本国内でのトラック製造メーカーは日野、三菱ふそう、いすゞ自動車、UDトラックスの4社であり世界的な規模に比べると大きく劣っており資本提携が加速しています。
日野は、1966年にトヨタの傘下に入り、2001年にトヨタが株式の過半数を取得して子会社化しています。
三菱ふそうは、2005年には、ダイムラートラック(旧ダイムラークライスラー)の連結子会社となっています。
UDトラックスは、旧日産ディーゼルでしたが、2007年にボルボによる買収、2020年にいすゞが買収し、現在は、いすゞの100%子会社となっています。
今回の日野と三菱ふそうの経営統合により日本のトラック製造メーカーは日野・三菱ふそうグループといすゞグループの2社連合になりました。
 

世界のインターネット通販の市場規模2019年3.4兆ドル、2020年4.2兆ドル、2021年4.9兆ドル、2022年5.6兆ドルと年間10%以上も伸び続けており2025年には7.4兆ドルの市場規模になると予測されています。物流におけるトラック輸送は世界で約50%、日本で約90%を占め、トラックなしに物流が成り立たない状況になっています。
 

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2.日野自動車(日野)のエンジン不正問題

2022年3月4日の日野の社内調査によって発覚し、3月25日の国土交通省の聴聞によってディーゼルエンジンの排出ガス、N04C(尿素SCR)の排出ガスのデータを改竄していたことを認め、道路運送車両法第75条に基づいて型式指定の取消処分が行われました。これによって日野は、エンジンの数機種が出荷停止になりプロフィア、レンジャー(HC-SCRのみ)が生産できなくなり、2023年3月期の決算では、純利益で847億円の赤字に転落しています。
ただ、この問題は今回の経営統合との関係性はほとんどなく、日野社内で解決に向かっていると報道されています。
 

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3.この経営統合は親会社のトヨタ、ダイムラートラックを含めた4社の協業


報道発表では、日野と三菱ふそうの2社の経営統合とされていますが、記者会見で4社のCEOが出席し発表したように4社での協業の色が濃く出ています。経営統合の目的の2つめに、ダイムラートラックとトヨタは、水素をはじめCASE技術開発で協業、統合会社の競争力強化を支えると表記されています。トヨタとしても、日本の商用車の市場は世界の市場に比べて小さく、全世界で年間52万台を販売しているダイムラートラックと協業して水素エンジンやCASE技術の開発をしていきたいという思いが会見で表れていました。
 

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4.CASE技術

2016年のパリモーターショーでメルセルス・ベンツ社が提唱した造語で、Connected(C:車内外のデータ連携)、Autonomous(A:自動運転)、Shared & Service(S:カーシェアリング、ライドシェア)、Electric(E:電気自動車)の頭文字をとった技術のことをいいます。
自動車メーカーがただ製造するだけにとどまらず、モビリティのサービスプロバイダへと変わる」という戦略で、自動車メーカーや自動車部品メーカーだけでなく、GAFAやBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)といった巨大IT企業も技術開発を加速させています。
トヨタはいすゞ自動車と2021年に商用車のCASE技術の共同開発をするために共同出資会社CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)をつくっています。記者会見では、将来ダイムラートラック、三菱ふそうもCJPTに参加する可能性もあるという含みも持たせていました。
 

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5.商用車の未来を共につくる

この統合の一番の背景として商用車の未来をともにつくるという4社の強い思いが、伝わってきています。人や物の移動を通じて暮らしを支える商用車は、社会インフラといえる重要なモビリティであり、社会システムに組み込まれることで移動の価値をさらに高めることができます。カーボンニューニュートラルに向けては世界の自動車市場の40%を占める商用車(トラック、バス、タクシー等)環境にやさしいモビリティへ進化させていくことが大切です。
その鍵を握るのは電動化や自動運転などのCASE技術で、日本の商用車市場は規模が小さく各社単独で戦うことが難しい状況であり、豊かなモビリティ社会を創造していくためには、競争のみならず、みんなで力をあわせて未来をつくっていくことが求められています。
三菱ふそうと日野は両社の統合を通じて両者のシナジーを高め、開発、調達、生産における事業の効率化を図ることでCASE技術に取組む事業基盤、競争力を強化していくとしています。
4社での協業を通じて水素をはじめCASE技術開発で協業、統合会社の競争力強化を支えることを目的としています。

 

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。