運送業に必要な整備管理者とは
バス・タクシー・都市型ハイヤーなどの旅客運送業や貨物運送業を始める場合は、整備管理者を選任しなければなりません。整備管理者は、国家資格である運行管理者と合わせて選任しなければならない運送業にとって重要なポストであり選任・解任した場合は必ず運輸局に届出を行わなければなりません。整備管理者はどのような業務を行うのか?、どのようにすれば整備管理者になることができるか?、について解説をしていきます。旅客、貨物に問わず運送事業の経営者の方は整備管理者の資格要件を理解した上で、適切な選任を行うようにしてください。
目次
1.整備管理者とは
2.整備管理者の配置要件
3.整備管理者の資格要件
4.整備管理者選任前研修・整備管理者選任後研修
5.整備管理者の法定業務
6.整備管理補助者
7.他の職務との兼職は可能か?
8.介護タクシーの整備管理者
9.整備管理者の選任等の届出
10.お知らせ
1.整備管理者とは
整備管理者とは、トラック運送事業者、バス・タクシー・ハイヤーなどの旅客運送事業者において自動車の日常の点検を管理し、駐車場の適切な管理を行う責任者です。運行管理者と同じく運送事業者にとっては設置しなければならない(一部例外あり)職務になります。
運転者が道路運送車両法第47条の規定に基づいて、自動車の点検や整備を行い安全確保及び環境保全を図るための注意を払っています。使用する自動車の台数が多い事業者の場合、個々の使用者が1台1台の自動車の点検・整備状況を管理することが困難になるため、整備管理者を選任し日常点検や定期点検、車検について管理を行っています。あくまでも日常点検は個々の運転者が行い、その点検内容の管理及び定期点検や車検の手配を行います。
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2.整備管理者の配置要件
整備管理者が必要な配置要件、人数については道路運送車両法施行規則第31条の3に規定されています。事業用自動車だけではなく、自家用自動車を所有する事業者についても整備管理者は必要になります。
①事業用(緑ナンバー)
区分 | 自動車の種類 | 乗車定員 | 必要台数(営業所ごと) | |
旅客 | バス | 11人以上 | 1台以上 | |
タクシー・ハイヤー | 10人以下 | 5台以上 | ||
貨物 | トラック | ー | 5台以上 | |
軽トラック | ー | 10台以上 |
②自家用(白ナンバー)
区分 | 自動車の種類 | 乗車定員 | 必要台数(営業所ごと) | |
旅客 | バス | 30人以上 | 1台以上 | |
11人以上29人以下 | 2台以上 | |||
貨物 | トラック | ー | 5台以上 |
③レンタカー
区分 | 自動車の種類 | 乗車定員 | 必要台数(営業所ごと) | |
旅客 | バス | 11人以上 | 1台以上 | |
貨物 | トラック | ー | 5台以上 | |
その他 | ー | 10台以上 |
整備管理者は営業所ごとに1人以上選任しなければなりません。運行管理者と異なり〇〇台を超えることに1人追加するという要件はありませんので、営業所が所有する車両が5台でも100台でも1人選任していれば問題ないということになります。実際には、1人で100台の車両を管理することはできないので、管理できる車両台数ごとに適切な人数の整備管理者を選任することが必要です。
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3.整備管理者の資格要件
②自動車整備士技能検定に合格した者(1級、2級、又は3級)
③上記の技能と同等の技能として国土交通大臣が告示で定める基準以上の技能を有する者(現地点では自動車整備士技能検定と同等の技能を有する資格がないため③が適用されるケースはありません)
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4.整備管理者選任前研修・整備管理者選任後研修
運行管理者になるためには、2年以上の実務経験を満たした上で、整備管理者選任前研修を受講することで要件を満たします。自動車整備士技能検定合格者は、整備管理者選任前研修を受講しなくても整備管理者になることができます。整備管理者選任前研修は各都道府県の運輸支局で月1から2回開催されています。研修時間が3時間で、終了後、整備管理者選任前研修修了証明書が発行されます。整備管理者として選任される際に証明書の番号と発行年月日を記載しなければならないので、終了証明書は大切に保管しておいてください。
新たに整備管理者に選任された方もしくは、整備管理者として職務を行っている方は2年に一度、整備管理者選任後研修を受講しなければなりません。各運輸支局で受け付けておりますが、都道府県によっては、トラック協会、ハイヤー・タクシー協会、バス協会を通じて申し込む場合もあります。研修時間が2時間です。
整備管理者選任前研修、選任後研修共に自分の所属する営業所以外の都道府県で受講することも可能です。研修日程がスケジュールに合わない、開催日が満員で受講できない場合は、近隣の都道府県で受講することも検討しましょう。
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5.整備管理者の法定業務
整備管理者の法定業務は、道路運送車両法規則第32条に規定されています。
②日常点検の結果に基づき、運行の可否を決定すること。
③定期点検整備(道路運送車両法第48条第1項)に規定する定期点検を実施すること。
④日常点検・定期点検のほか、随時必要な点検を実施すること。
⑤日常点検・定期点検・随時必要な点検の結果、必要な整備を実施すること。
⑥定期点検及び⑤の整備の実施計画を定めること。
⑦点検整備記録簿(道路運送車両法第49条第1項)その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること。
⑧自動車車庫を管理すること。
⑨上記に掲げる事項(①~⑧)を処理するため、運転者、整備員その他の者を指導し、又は監督すること。
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6.整備管理補助者
整備管理補助者とは、整備管理者に代わって駐車場の整備やトラックの運行の可否決定などを行う代務者のことをいいます。整備管理者が休日や勤務時間外には整備管理補助者がこの任務にあたります。
②自動車整備士技能検定の3級自動車整備士以上の資格を持っていること
③整備管理者と同等の知識と能力があり事業者が任命した者
となります。
早朝・深夜の時間帯も稼働していたり、長距離輸送を行っている事業者は、複数の整備管理補助者を選任しておくことが望まれます。ドライバーは労働基準法や改善基準告示の規定にのっとって適切な時間管理をしていても、運行前点検の点検簿に毎回1人の整備管理者の検印が押され運行許可をしてるといった証跡が残っていると365日、24時間整備管理者が出勤していることになってしまいます。運送事業者として適切な労務管理を行っていないと疑われる可能性もありますので、複数の整備管理者補助者を選任して運行前点検のチェックを行うようにしましょう。
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7.他の職務との兼職は可能か?
整備管理者が他の職務と兼職が可能がについては、以下のようになります。
職務 | 兼職の可否 | 備考 |
運行管理者 | できる | |
指導主任者 | できる | タクシー、ハイヤーで選任が必要 |
ドライバー | できる | 現実的に兼職は難しい |
社長 | できる | |
他の営業所の整備管理者 | できない | 営業所ごとに選任が必要 |
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8.介護タクシーの整備管理者
介護タクシーで所有が車両4台以下の場合は、選任要件がありません。ただし新規許可の審査基準として原則として、常勤の有資格の整備管理者の選任計画があること。とあります。運用上、4台以下の場合は整備管理者を選任しなくてもよいですが、運行管理者と兼職で同じ人を整備管理者を選任しておくことが望ましいです。事業が拡大し介護タクシーが5台以上になった場合は、整備管理者を選任して届出を行わなければなりません。
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9.整備管理者の選任等の届出
新たに整備管理者を選任したとき、届出事項に変更があった場合には、道路運送車両法第52条の規定に基づき、15日以内に運輸支局を経由して地方運輸局長に届出をしなければなりません。届出の責任者は使用者であり届出を怠る、虚偽の届出を行った場合の処罰の対象は整備管理者ではなく、使用者になります。
①整備管理者の届出事項
番号 | 届出事項 |
1 | 届出者(事業者)の氏名又は名称及び住所 |
2 | 届出者(事業者)が自動車運送事業者であるかどうかの別 |
3 | 整備管理者の選任に係る自動車の使用の本拠の名称及び位置 |
4 | 使用の本拠に属する自動車の総数並びにこの内、乗車定員11人以上及び乗車定員10人以下で車両総重量8トン以上の自家用自動車の数 |
5 | 整備管理者の氏名及び生年月日 |
6 | 整備管理者の資格要件のうち該当するもの |
7 | 整備管理者の兼職の有無(兼職がある場合はその職名、職務内容) |
8 | 運輸局長から解任命令を受けたことがないこと。解任されてから2年(もしくは5年)を経過していることの書面 |
②整備管理者の選任等の届出を必要とする場合
届出の別 | 届出の事由 |
選任届 | 整備管理者を新しく選任したとき |
営業所(使用の本拠)を新設し整備管理者を選任したとき | |
変更届 | 届出者(事業者)の氏名又は名称もしくは住所が変わったとき |
営業所(使用の本拠)の名称又は使用の本拠の位置が変わったとき | |
事業の種類が変わったとき | |
人事異動等で整備管理者が変わったとき | |
整備管理者を増員もしくは減員したとき | |
整備管理者の氏名が変わったとき(婚姻、養子縁組) | |
整備管理者の兼職の有無に変更があったとき(兼職がある場合はその職名、職務内容) | |
廃止届 | 事業を廃止したとき、又は譲渡したとき |
営業所(使用の本拠)を廃止したとき、又は選任を必要としなくなったとき |
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10.お知らせ
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
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