年末年始の輸送等に関する安全総点検
年末年始は、旅客・貨物を問わず大量の輸送需要が発生します。ひとたび事件・事故が発生した場合には、大きな被害になることが予想されます。国土交通省は、12月10日から翌年の1月10日までを年末年始の輸送等に関する安全総点検実施期間と定めて、旅客運送事業者、貨物運送事業者、その他事業用車両を有する事業者に対して自主点検を通して、安全性の向上と、輸送安全等に対する意識の高揚を図っています。この安全総点検実施期間に旅客運送事業者、貨物運送事業者はどのようなことを行えばよいのでしょうか?これについて解説していきます。
1.増えている健康障害に起因する事故・自動車整備不良に起因する事故
テレビや新聞紙上で取り上げられていますが、脳疾患、心臓疾患を抱えているドライバーが運転中に意識がなくなり死亡事故等を発生させるケースが増えています。また、自動車整備不良によるタイヤ脱落事故が起こった場合には、大型車のタイヤ1輪が重さ100kg以上になるため、他の車に衝突した場合は、大破し乗員の死亡事項に至るケースもあります。このような重大事故を繁忙期に未然に防ぐためにも、普段の日常点検に加えて安全総点検を行いましょうといった目的でこの期間が設けられています。
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2.点検項目について
点検項目については、事故に直結する内容である重点点検事項が25項目、日常もしっかり実施しているが、再度、できているかどうか確認する内容の点検事項が21項目の合計46項目があります。
1.重点点検事項
①健康管理体制
事業用自動車の運転者の健康管理マニュアルに記載されているとおり、健康診断で乗車前に健康状態を確認し、体調変化等の場合は運転を中止させているか、脳・心疾患や睡眠障害等の早期発見のためスクーリニング検査を受けさせているか等チェックを行います。
②過労運転の防止
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(厚生労働省の改善基準告示)を遵守できているかについてチェックします。2024年4月からは新基準となり、1年間の拘束時間が3516時間から3300時間になりますのでそれに合わせた運行計画を策定できるようにしておくことが肝要です。
③飲酒運転の防止
点呼時のアルコール検知器によるチェックはもとより、飲酒運転防止に対する指導・啓発活動をしているか、翌日に乗務がある場合の飲酒等について指導ができているかについてチェックを行います。
④車両の日常点検整備、定期点検整備等の実施
昨今のタイヤ脱落事故の多発を踏まえて、大型車の車輪脱落事故防止「令和5年度緊急対策」で定めるタイヤ脱着作業管理表等を用い、適切なタイヤ脱着作業の結果を記録しているか等をチェックします。大型車両(車両総重量8トン以上又は乗車定員30人以上)を所有していない事業者についても、これと同様の対応が求められます。
⑤大雪に対する輸送の安全確保
降雪状況を適時把握し、運行経路の道路情報、道路規制情報、気象情報に基づき、ドライバーに適切な指示を与えているかについてチェックします。
2.点検事項
点検事項については、①点呼・指導監督が8項目、②コンテナ輸送安全対策が5項目、自然災害時の安全確保が4項目、テロ対策が2項目、新型インフルエンザ対策が2項目の合計21項目が定められています。
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3.ご注意ください
安全総点検実施期間中に各点検項目について自主点検を実施し、点検表に結果を記入します。自主点検結果を記入した点検表は、期間終了後、管轄運輸支局の安全総点検自動車運送事業者等担当宛にすみやかに提出しなければなりません。事業者からの総点検の結果の概要については、各地方運輸局がホームページへの掲載等を行うとしています。未提出についての罰則等はありませんが、きっちりと自主点検を行い、その点検結果を運輸支局に提出することをお勧めいたします。
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4.お知らせ
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
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