運送業開業マニュアル
運送業(一般貨物自動車運送事業)を開業するにあたって、どのような手続きが必要なのか、どんな要件があるのか、許可が不要な場合はどのような場合かについてのガイドマニュアルです。これから運送業を開業しようとお考えの方はぜひ、一読お願いします。
【目次】
1.白ナンバー(自家用)と緑ナンバー(営業用)の違い
2.運送業の許可が不要な場合
3.運送業は責任の重い事業です
4.一般貨物運送事業の種類について
5.運送業開業までのフローチャート
6.運送業許可の要件
6-1.場所(駐車場・営業所)の要件
6-1-1.駐車場の要件
6-1-2.営業所の要件
6-1-3.休憩・睡眠施設
6-2.車両の要件
6-3.人・資格の要件、欠格事由
6-3-1.人・資格の要件
6-3-2.欠格事由
6-4.資金の要件
6-5.定款上の要件
7.運送業許可取得にかかる期間
8.役員法令試験
9.運送業許可取得後の手続き
10.迷った時には専門家に相談を
11.お知らせ
1.白ナンバー(自家用)と緑ナンバー(営業用)の違い
公道を走っているトラックには白ナンバー(自家用)と緑ナンバー(営業用)の2種類あります。
運送業(他人から依頼をうけて、有償で荷物を運ぶ)を営む場合は貨物自動車運送事業法に基づき国土交通大臣(実際は運輸局長)の許可を取得し、緑ナンバー(営業用)のナンバープレートをつけます。
緑ナンバー(営業用)をつけているトラックは国土交通大臣(実際は運輸局長)の許可を取得している運送会社が所有するトラックということになります。
それとは別に自分の会社の商品や原材料を運んでいるトラックは白ナンバー(自家用)ナンバープレートをつけています。白ナンバー(自家用)では、荷物を運んで運賃を収受することは禁止されています。
運送業の許可を取得して緑ナンバー(営業用)ナンバープレートをつけるということは、貨物自動車運送事業法他関連法規の制約を受けることになります。また、定期的にトラック協会の巡回指導、運輸局の監査を受けなければなりません。
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2.運送業の許可が不要な場合
運送業は他人から依頼をうけて、有償で荷物を運ぶ場合に許可が必要ですので、自分の荷物を運ぶ場合は運送業許可は不要です。その他次の場合も運送業許可は不要です。
①自分の荷物を運ぶ(自家輸送)の場合
自社所有の荷物のみを運ぶ場合です。他人から運賃を収受しないため運送業の許可は不要です。
購入した原材料を運ぶ場合は仕入先の工場で所有権が自社に移転しており、自社の荷物になっていることが条件となります。また、販売する商品もお客様の軒先で所有権が移転する契約をしており、運んでいる間は自社の所有権になっていることが必要になります。
②軽自動車・二輪車の場合
軽自動車やバイク便などの二輪車の場合は、一般貨物自動車運送事業ではなく貨物軽自動車運送事業の範疇になりますので貨物軽自動車運送登録が必要になります。無許可で軽自動車運送を行ってよいという訳ではなく運送業許可は不要だが運送登録(届出)は必要になります。
くわしくは貨物軽自動車運送事業(軽黒ナンバー)の専用ホームページを参照してください。
③無償にて輸送する場合
運賃をもらわずに無償で荷物を運ぶ場合も運送業の許可は不要です。
但し、別の費用項目で運送費相当分の費用をお支払いしている場合は無償で輸送しているとみなすことができませんので、有償で輸送していると見なされ、運送業許可が必要になる場合があります。有償とみなされるかどうかはケースバイケースでの検討が必要ですので、専門の行政書士にお問合せをされることをお薦めします。
④産業廃棄物の収集・運搬の場合
産業廃棄物は収集とセットで運搬(運送)を行う場合のみ、運送業の許可ではなく都道府県知事による産業廃棄物収集運搬の許可が必要になります。ただし、運搬(運送)のみであったり有価物(廃棄物であっても有償で売却するもの)の運搬(運送)の場合は運送業の許可が必要です。
【注意】
グループ会社間の運送であっても法人が異なる(別会社)の場合は他人から依頼を受けると見なされますので運送業許可をうけていないとお金の収受をすることができません。
・大阪で運送業許可を取得するまでの流れとは?許可が必要な場合や許可の要件も解説!
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3.運送業は責任の重い事業です
ドライバーの飲酒運転や過重運転、居眠り運転等が起因して重大な交通事項を引き起こす可能性があります。これらを未然に防ぐためにドライバーの健康管理等を十分に管理できる会社に運送業の許可が与えられます。運送業の許可取得後も業務前後の点呼、アルコールチェック、運転時間・拘束時間の制限、資格者の確保・研修、運転記録などの多くの帳票類の毎日の記録管理、車両の定期的な整備点検の義務、事業報告や運送実績等の報告書の提出義務、社会保険の加入、社内教育や健康診断の実施等の管理を日々適正に行わなければなりません。事故が多発したり監査や巡回指導で指摘を繰り返した場合には、最悪の場合許可の取り消し処分がされる場合もあります。
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4.一般貨物運送事業の種類について
運送事業は貨物自動車運送事業法で
①一般貨物自動車運送事業
②特定貨物自動車運送事業
③貨物軽自動車運送事業
の3種類に区分されています。
一般的に運送業と呼ばれているのは一般貨物自動車運送事業のことで他人から依頼をうけて、有償で荷物を運ぶ事業のことをいいます。
特定貨物自動車運送事業とは、輸送の依頼者が特定の1社のみとなる運送業のことをいいます。通常の運送業の許可取得は開始直後は1社からのみの依頼であっても、その後の事業拡大を見越してすべての会社から運送受託できる一般貨物自動車運送事業の許可を取得しておきます。
・大阪で運送業許可を取得するまでの流れとは?許可が必要な場合や許可の要件も解説!
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5.運送業開業までのフローチャート
①資金計画作成、事業開始に必要な資金の確保
②営業所(事務所)と駐車場の確保
③人の確保(運行管理者、整備管理者、ドライバー5名以上)
④トラックの用意(許可取得までに購入、リース)
⑤運送業許可の申請書類の作成
⑥運輸支局への申請書類の提出(運輸局の審査期間4~5か月)
⑦役員法令試験受験
⑧補正があれば補正対応、2度目の残高証明書提出(近畿運輸局管轄の場合は日付指定されます)
⑨社会保険、労働保険加入、36協定締結
⑩運送業(一般自動車運送事業)許可取得
⑪許可証交付式
⑫登録免許税納付(許可取得後1か月以内に納付)
※登録免許税の納付(支払)は銀行・郵便局(ゆうちょ銀行)のみでコンビニでは納付できません。
⑬運行管理者・整備管理者の選任届の提出
⑭運輸開始前届の提出
⑮事業用自動車連絡書の取得
⑯事業用ナンバー(緑ナンバー)の取得、自動車任意保険加入
⑰運輸開始届・運送約款・運賃料金設定届の提出
⑱運送事業開始
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6.運送業許可の要件
6-①.場所(駐車場(車庫)・営業所)の要件
6-①-1.駐車場(車庫)の要件
①原則として営業所に併設していること
併設できない場合は、平成3年6月25日「運輸省告示第340号」に適合することとされており、大阪府内の場合は営業所と車庫の2点間の距離が10km以内で駐車場をさがさなければなりません。
「運輸省告示第340号」では、貝塚市、泉佐野市、泉南市、豊能郡、泉南郡並びに南河内郡のうち太子町、河南町及び千早赤阪村に限っては営業所・駐車場(車庫)間の距離が5km以内になっています。
②車両と駐車場(車庫)の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保され、かつ申請する車両台数すべてを収容できること
③駐車場(車庫)以外の用途に使用されている部分と明確に区画されていること
④使用権原を有するものであること
・自己所有の場合は問題ありませんが、賃借の場合は契約期間が2年以上もしくは自動更新になってることが必要です。
⑤農地法(昭和27年法律第229号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等の関係法令の規定に抵触しないこと
⑥前面道路(車庫の出入口が面している道路)については幅員証明書により車両制限令に適合すること
・国道もしくは全面道路の道路幅が6.5m以上あることが要件となります。
・大阪府下では道路幅員事務を廃止している自治体が多くあります。幅員証明書を取得できない場合はメジャーで図った幅員の写真及び宣誓書(前面道路の状況書・指定様式)をもって幅員証明書に代用することができます。
・駐車場・営業所の賃借契約時の注意点①(普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約)
・駐車場・営業所の賃借契約時の注意点②(貸す側が所有者でない場合)
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6-①-2.営業所の要件
①使用権原を有するものであること
・駐車場の場合と同じく賃借の場合は契約期間が2年以上もしくは自動更新になってることが必要です。
②農地法(昭和27年法律第229号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等の関係法令の規定に抵触しないこと
・都市計画法では一部例外がありますが、市街化調整区域での駐車場は認められていません。
③規模が適切なものであること。必要な備品を備え、事業遂行上適切なものであること。
・駐車場・営業所の賃借契約時の注意点①(普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約)
・駐車場・営業所の賃借契約時の注意点②(貸す側が所有者でない場合)
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6-①-3.休憩・睡眠施設
①営業所もしくは駐車場に併設されていること
・つまり、営業所+休憩施設、もしくは駐車場+休憩施設のどちらかが必要になります。
②乗務員に睡眠を与える必要がある場合には、少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さを有すること
・長距離運転を行う場合で、運行管理上ドライバーの休憩時間が8時間以上確保できないような場合には睡眠施設を設置する必要があります。日帰りで運行できる短距離のみの輸送を行う場合は睡眠施設は必須ではありません。
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6-②.車両の要件
①事業用自動車は5両(5台)以上
・車検証の用途欄に貨物と記載されたトラック(大型、トン数を問わない)が5台以上必要になります。
②トレーラーの場合はけん引車(トラクターヘッド)と被けん引車合わせて1台とカウントされます。
③霊きゅう運送、一般廃棄物運送、離島での運送業の場合は、5台以上でなくても許可を取得できますが、このような場合は許可の条件として「霊きゅう運送に限る」等がつけられます。
④使用権原を有していること
・すでに保有している場合は自動車車検証、これから購入する場合は売買契約書(中古でも可)、リース契約を行う場合はリース契約書をもって使用権原を証明します。
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6-③.人・資格の要件、欠格事由
6-③-1.人・資格の要件
①ドライバー5名以上、運行管理者(ドライバーの教育や点呼を行う)1名の6名以上
・運行管理者はドライバーとの兼任が認められていませんのでドライバー以外の有資格者が必要です。
②国家資格を有する運行管理者(貨物)を1名以上配置する
・年に2回(3月の第1日曜日と8月の第4日曜日)に実施される試験に合格すると運行管理者(貨物)となることができます。ただし、受験資格があり1年以上の実務経験もしくは独立行政法人自動車事故対策機構の運行管理者基礎講習を16時間受講する必要があります。
・試験問題は30問で60%の18問以上正解で合格することができます。
③整備管理者(車両の点検整備記録の管理を行う)1名以上の配置
・ドライバーが整備管理者を兼務することができます。
・3級以上の自動車整備士資格保有者もしくは2年以上のトラックの整備・点検の実務経験があり「整備管理者選任前研修」を受講すれば整備管理者になることができます。
④代表取締役もしくは運送事業に専従する役員1名が法令試験に合格していること
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6-③-2.欠格事由
①許可申請者もしくは役員が1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行が終わってから5年を経過しない者
②許可申請者もしくは役員が運送業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者
③許可申請者と密接な関係を有する者(親会社、子会社、グループ会社など)が運送業の許可の取消しを受け、その取消しの日から5年を経過しない者
④許可申請者もしくは役員が、運送業の廃止をした者で、その廃止の日から5年を経過しないもの
⑤許可申請者が未成年者または成年被後見人である場合において、その法定代理人が懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行が終わってから5年を経過しない者
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6-④.資金の要件
2019年の貨物自動車運送事業法改正により資金の要件が格段に厳しくなりました。ドライバーへの給与・残業手当の支払い、損害補償能力などを勘案して充分な資力がないと運送業の許可がとれなくなっています。必要な資金はトラックを新車で購入するか中古車か、2トン車か大型車かによって大きく変わってきますが概ね1500万円から2000万円程度の初期資金が必要になります。
必要な資金があることを証明するために申請時と審査途中に2回銀行が発行する残高証明書を提出しなければなりません。特に近畿運輸局の場合は2回目に提出する残高証明書の日付が指定されるので注意が必要です。
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6-⑤.定款上の要件
民法第34条(法人の能力)において「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」とされており、一般貨物運送事業の許可要件として定款の目的欄に運送業が記載されていることが必要です。運送業を新たに始めるために法人を設立する場合は最初から定款に運送業が目的として入れられているためあまり気にする必要はないですが、既存の法人で異業種から運送業に新規参入する場合は注意が必要です。ほとんどの場合は一般貨物運送事業と利用運送事業を一緒に取得しますので、定款の目的には運送業にプラスして貨物利用運送事業も合わせていれておいてください。
定款の目的は事業を行うにあたっての基本事項で運輸局の公示要件にもこの件は記載されていません。会社の規模が大きいほど、定款を変更するために株主総会を開催して特別決議で出席した株主の3分の2以上の賛成を得るという行為は大変労力と時間もかかりますので、早めに準備していくことをおすすめいたします。
日本を代表する大手企業の定款の目的欄には「陸上運送業、海上運送業、航空運送業、荷役業、貨物利用運送事業、運送取次事業、通関業、輸出入代行業及び倉庫業」と記載されています。ここまで記載すればパーフェクトです。
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・大阪で運送業許可を取得するまでの流れとは?許可が必要な場合や許可の要件も解説!
7.運送業許可取得にかかる期間
近畿運輸局の公示(令和元年10月1日 近運自貨公示第3号)によると、一般貨物運送事業許可に関する標準処理期間は3~5か月となっています。申請後許可まで約4か月かかると見ておいてください。
また、特別積み合せ貨物運送を同時に申請した場合は4~6か月の標準処理期間がかかります。
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8.役員法令試験
①運送業許可申請を行った翌月もしくは翌々月(近畿運輸局の場合は奇数月の10日前後に実施)に申請者(代表取締役もしくは運送事業に専従する役員)が法令試験を受験しなければなりません。複数の役員が受験することはできず申請した法人(もしくは個人事業主)に対して1名のみ受験することができます。
②試験時間は50分、出題数は30問で80%の24問以上正解しなければなりません。資料の持ち込みはできませんが、試験当日に「一般貨物自動車運送事業等に係る法令試験条文集」が配布されその条文集は参照することができます。
③出題範囲
・貨物自動車運送事業法
・道路運送法、道路交通法
・労働基準法、労働安全衛生法、独占禁止法、下請法
等、運送会社を経営していくうえで必須の法律を網羅した試験になります。
④受験した結果、不運にも不合格になった場合は2か月後に再受験することになります。2回不合格となった場合は申請を取り下げて再申請となります。
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9.運送業許可取得後の手続き
許可証取得・登録免許税の納付完了で運送業が開始できるわけではありません。
許可取得後に
・運行管理者・整備管理者の選任届の提出
・運輸開始前届の提出
・事業用自動車連絡書の取得
・事業用ナンバー(緑ナンバー)の取得、自動車任意保険加入
・運送約款・運賃料金設定届の提出等
を行わなければ運送業を開始することができません。
また、運送業開業までのフローチャート⑰の運輸開始届提出後3か月以内にトラック協会の適正化指導員による巡回指導がありますので、その対策をしておかなければなりません。
当事務所では、運送業許可証取得後運送業開始までサポートさせていただきますので安心してご相談ください。
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10.迷った時には専門家に相談を
運送業の許可取得は、多額の資金が必要であり、さまざまな許可要件をクリアしていかなければなりません。当事務所は運輸・物流専門の法務事務所で運送業許可を専門に扱っています。これから運送業の開業をされる皆様に最短での許可取得へとナビゲートしていきます。また、申請前の資金計画については他社の事例を交えて最適な資金計画プランを提案いたします。許可を取得して終わりではありません。開業後のビジネスについても経営者に寄り添った支援をいたします。
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11.お知らせ
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
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