①物流情報(貨物運送)

「運賃」・「料金」の収受ルールの変更(標準貨物自動車運送約款の改正)


最終更新日 2023年11月27日



運送業は、製造業と比べてその業務に付加価値が付けづらい業種です。また、一般的に配送ルートが固定されている場合が多く、荷主と運送事業者との取引は1回限りのスポット取引ではなく、継続的な取引となります。それが故に、荷主と運送事業者との関係は、荷主優位になりがちで、「荷主の言うことを聞かなければ取引を停止される可能性がある」ことから、物流の下請法といわれる「物流特殊指定」を平成16年(2004年)に制定して独占禁止法の優越的地位の濫用の対象とならない取引についても「買いたたき」行為の禁止で公正取引委員会や中小企業庁が対応してきました。特に運送委託においては、運送以外の附帯業務が多く、「運送料金に含まれる」という名目で、実質的に無償で運送事業者に提供させている部分も多いことから、運賃と料金を明確に区分し収受ルールを変更することを盛り込み、国土交通省が制定する運送事業者と荷主との契約書のひな形としての位置づけである標準貨物自動車運送約款及び標準貨物利用運送約款を改正しました。

【目次】

1.標準貨物自動車運送約款・標準貨物利用運送約款の改正
2.「運賃」と「料金」の区別の明確化
3.運賃以外の「料金」
4.標準約款第32条に規定される「積込料・取卸料」
5.標準約款第33条に規定される「待機時間料」
6.標準約款第60条第1項に規定される「附帯業務料」
7.運送事業者が実施する義務
8.荷主が注意すべきこと
9.まとめ


1.標準貨物自動車運送約款・標準貨物利用運送約款の改正

平成29年(2017年)11月4日より、適正な運賃、料金の収受を推進するために、標準貨物自動車運送約款、標準貨物利用運送約款が改正されています。これは、運送の対価としての「運賃」及び運送以外の役務の対価としての「料金」を適正に収受できる環境を整備する目的としています。
 

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2.「運賃」と「料金」の区別の明確化

今までは、運送業界の慣習上、運賃の範囲が不明確で人によってどこまでが運賃でどこまでが運賃でないのか、の解釈が異なっていました。運送事業者は荷主に対して概して弱い立場ですので、荷主がここまでは「運賃に含まれる」と判断すると一旦提示した見積運賃でその業務までを取り行うことが、多くの現場で行われていました。今回の改正で「運賃」とそれ以外の役務を明確に標準約款に記載することにより、それ以外の役務に対しても、運賃とは別建てで収受できるようにしています。
 

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3.運賃以外の「料金」

運賃以外の「料金」については、標準貨物自動車運送約款の第8条(送り状)第4項に規定されており、積込料・取卸料(第32条)、待機時間料(第33条)、附帯業務料等(第60条第1項)に個別に規定されています。この第8条(送り状)の項目では、荷送人(荷主)が、送り状に記載しなければならない事項を定めており、運賃及び料金はこの送り状に記載して、荷主から運送事業者に書面発行しなければなりません。送り状は、商品や原材料を購入する際の「注文書」に相当するものですので、第8条に記載されている内容すべてを網羅した「送り状」を発行しなければなりません。
 

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4.標準約款第32条に規定される「積込料・取卸料」

荷主からの指示によって、集荷先の工場、倉庫での積込みや配送先での取り卸しが行われた場合は、運賃とは別建てで「積込料・取卸料」を請求するとしています。この料金は作業員1人当たり1時間○○○○円として、運輸局に届出を行っています。ただし、積込みする商品の形状、重量やフォークリフトの貸与を受けて積込みするのか、手積みで積込みを行うのか、パレットを使用できるのか、トラックにベタ(床に商品をそのまま置くこと)で積み付けるのかによって料金が異なります。届出運賃では、上限○○○○円/時間、下限○○○○円/時間として設定し、積込み・取り卸しの条件に対応して金額を請求できるとしています。
 

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5.標準約款第33条に規定される「待機時間料」

集荷先の工場、倉庫や配送先で、トラックバースの順番待ちによる待機時間が発生した場合は、運賃とは別建てで「待機時間料」を請求するとしています。待機時間料についても通常、30分当たり○○○○円として、運輸局に届出を行っています。この届出運賃に基づいて、荷主に対して運賃とは別建てで請求されます。待機時間料についても、倉庫内で待機するのか、周辺の路上で待機するのか、ドライバーの待機室があるのか、待機室の冷暖房が完備しているか等によって条件が異なってきますので、届出運賃では、上限○○○○円/30分、下限○○○○円/30分として設定し、待機する環境に応じて金額を請求できるとしています。
 

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6.標準約款第60条第1項に規定される「附帯業務料」

標準貨物自動車運送約款の第60条第1項では、「附帯業務料」について具体的に記載されています。記載されている附帯業務料とは、①商品代金の取立て、②荷掛金の立替え、③貨物の荷造り、④仕分、⑤保管、⑥検収及び検品、⑦横持ち及び縦持ち、⑧棚入れ、⑨ラベル貼り、⑩はい作業、⑪その他一定の時間、技能、機器等を必要とする業務、とされています。これらの附帯業務の内容を明確化することにより運賃とは区別して、荷主が附帯作業料を支払わなければならないとなっています。
なお、積込料・取卸料、待機時間料、附帯業務料等の条数は、標準貨物自動車運送約款の条数を記載しています。標準貨物利用運送約款の場合、条数が異なりますが同様の内容が規定されています。
 

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7.運送事業者が実施する義務

平成29年(2017年)11月4日からの約款改正に伴って、運送事業者としては、順次、新しい約款の適用を運輸局に提出しています。貨物自動車運送事業法の第10条(運送約款)第2項の3で「運送の役務の対価としての運賃と運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係る料金とを区分して収受する旨が明確に定められているものであること。」という条文があり、これに沿って新しい運賃の届出も運輸局に対して行っています。
 
そして、その新しい約款及び届け出た運賃・料金を運送事業者の営業所に掲示をしています。約款及び運賃・料金の掲示は貨物自動車運送事業法で定められ正しく掲示ができていない場合は、罰則の対象となります。
 

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8.荷主が注意すべきこと

この約款改定以降、運送事業者から「運賃」と「料金」を分けた見積書を提示された場合、その見積金額が妥当であると判断した場合は、「運賃」と「料金」を分けた金額で契約しなければなりません。その場合に、運送事業者の見積提示を一方的に拒否したり、話し合いのテーブルにつかなかった場合は、物流特殊指定の禁止行為である「買いたたき」として公正取引委員会の勧告の対象となる場合があります。決定した「料金」については、運送状(運送約款上は送り状)に運賃とは別に積込み・取り卸し料など具体的に附帯業務の料金を記載する必要があります。契約書上に運賃・料金を定めている場合は、運送状に具体的金額を記載する必要はなく、「詳細の料金については、○○○○年○月○日締結の□□□□契約に紐づくものとする」のような文言を運送状に入れておくだけで構いません。
 
また、運送以外の役務等が生じる場合で、たとえ過去からの慣習上で料金をお支払していなかったとしても、今後は、運送事業者に対してお支払する必要があります。委託時に運送状(運送約款上は送り状)に記載されていなくても、お届け先で待ち時間が発生した場合には、その料金を支払う必要があります。
 

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9.まとめ

お届け先の待機時間については、荷主にとってもお客様であるだけに、なかなか改善要望が出しにくい状況にあります。物流は社会のインフラであり、運送事業者が疲弊してドライバーの長時間労働、低賃金が社会問題になっています。これを放置していくと社会インフラである物流が崩壊し、私たちの荷物が配送できないといったことが起きてしまいます。荷主側からお客様の配送センターの待機状況改善については、交渉してITシステムを導入した事例や、取り卸しをお客様側が手伝うことによって取り卸し時間が大幅に短縮し、回転が早くなったため結果として待機時間が短縮された事例もあります。運送事業者が抱える事情を十分にお届け先企業に理解して頂き、粘り強く交渉することが望まれます。
 

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。