【コラム】ライドシェア解禁に反対が55%
固定電話・携帯電話による聞き取り(RDD Random Digit Dialing方式)によって全国18歳以上の男女にJNNが世論調査した結果によると、ライドシェア解禁に賛成が31%、反対が55%になりました。
ライドシェアとは、Ride(乗る)とShare(共有する)を掛けわせた相乗りのことを呼んでいました。現在ではアメリカやアジア諸国などで当たり前のように行われている、自分の自家用車を使ってタクシーの免許をもたない人が、Uber Eatsや出前館のような感覚で有償で客を送迎することをいいます。このライドシェアには、Uber、Lift、Grab(Uberが事業売却し東南アジアで利用されている)などのアプリを元に配車が行われます。現在、日本では道路運送法に違反するいわゆる白タク行為として3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課されます。新型コロナウイルスの蔓延によって観光需要がダメージを受けたため、タクシードライバーの離職、高齢化や担い手の不足など、タクシー不足が指摘されていて、インバウンド需要が本格化された際には、とても現状の台数、ドライバー数では対応できないといわれています。
ここに来て、菅義偉元首相や河野太郎もライドシェア解禁に意欲を占める等、一気に解禁の機運が高まったようにも見えましたが世間一般の反応としては、素人にタクシー事業をやらせるのは危険といった結果になりました。このライドシェア解禁の議論は、過去から何度か議論になり国土交通省も検討をしていましたが、タクシー業界の反対や、安全性が担保できないとして、解禁までには至っていません。タクシーGOのアプリはあくまでの免許をもったタクシー事業者が利用するアプリで、自家用車を使った有償旅客運送は認められていません。
他の国と違って、タクシー事業は、一般乗用旅客自動車運送事業と呼ばれ国土交通大臣の許可制となっています。また、タクシードライバーも営業ナンバーの車両(通称緑ナンバー)を付けた旅客自動車を運転するためには、普通自動車第二種免許が必要になっています。ここで審査をすることによって、交通安全の教育をしっかりやっている、事故再発防止に努めている、事故がおこった際に補償ができる資力を有している、などの審査が行われていて、これらの条件に合致しない事業者はタクシー免許をもらうことができないため、1つの歯止めになっています。ライドシェアを解禁して自分の自家用でお客を運ぶのが自由になると、極端な話、任意保険を付保していない自家用車で有償輸送を行うこともできてしまいます。ライドシェア解禁が日本以外の諸外国で当たり前に行われていて、既存のタクシー事業者とも共存・すみ分けがなされています。
とはいうものの日本では、安全性や事故の補償の問題が根強く残っている状況ですので、一足飛びにライドシェア解禁まで持っていくのではなく、タクシー不足が懸念される過疎地や観光地に限って、タクシーの許可要件を緩和するなどの措置が望ましいと考えています。
例えば、個人タクシーの要件を緩和して、安全面・事故の補償面をクリアできた事業者や個人でも届出でタクシー事業が行えるような議論をしたほうが賢明です。また、現在では最低台数が5台(地域によっては10台)という台数規制もネックになっていてこの台数制限も撤廃の検討余地があります。台数制限にひっかからない個人タクシーの場合は、10年以上タクシー経験がありかつ10年間無事故無違反、地理試験・法令試験の合格が必須条件になっていますので、単に第二種免許をもっているだけでは、個人タクシーをすることはできません。
もちろん、全国すべて規制緩和をするわけではなく、地域を限定して既存のタクシー許可制を緩和するのが先決で、その後ライドシェア解禁について議論していくわけですが、そのころには自動運転という次の波がやってきて、自動運転タクシーが当たり前になってくるので、今の段階では、ライドシェア解禁論に時間をかけずに、静観しておいたほうがよいのかもしれません。
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