⑤コラム

【コラム】高速道路深夜割引料金の拡大


最終更新日 2023年11月27日


高速道路深夜割引運賃
この記事は、NEXCO3社(東日本・中日本・西日本)の2023年11月7日のプレリリースを元に書いています。
高速道路の利用時間帯分散を目的として開始された深夜割引料金ですが、とりわけ長距離トラックは2024年問題を抱えドライバーの手取り収入が減少するという課題を抱えています。運送事業者の収益改善にも貢献する高速道路の深夜割引料金の拡大の具体案がまとめられ、パブリックコメントを経た後、2024年(令和6年)度中に運用開始される見込みです。ただ、今回の割引制度は単純に拡大するだけでなく細かなルールが付加されており、わかりづらい内容になってます。2024年(令和6年)から実施される新しい深夜割引料金制度とはどのようなものなのか解説していきます。

ETC①

1.現在の深夜割引制度と拡大される背景

現在、首都高速や阪神高速などを除いたNEXCOが管理する高速道路では、深夜0時から午前4時までの高速道路を通行する車両の料金が3割引になっています。長距離トラックの場合、ETCコーポレートカード割引と合わせて大きな割引率になっています。このメリットを生かせる走行と深夜時間帯にかからない割引のない時間帯の走行では負担する高速道路料金に大きな差があります。長距離トラックのドライバーは、深夜料金を適用できる料金をできるだけ大きくするために、何が何でもこの時間帯に走行するようにしています。その結果、深夜0時前に高速道路の料金場手前で多くの車両が待機し、社会問題になっています。高速道路各社が現地での注意喚起、横断幕や看板、チラシ等での啓発活動等に取り組んでいますが課題解決には至っていない状況です。

ETC②

2.新しい深夜割引制度(2024年度(令和6年度)より実施予定)

2-①.割引適用時間帯を22時から5時に拡大

現在の深夜0時から4時までの割引適用時間帯を22時から5時までに拡大します。これによって適用時間帯が4時間から7時間に拡大します。
 
時間帯の変更
 

2-②.割引適用時間帯に走行した分のみ3割引

これは若干、デメリットにもなってくるのですが、今までは0時から4時までの時間帯に高速道路を通行していれば、その前後の時間帯に走行した高速道路料金もすべて3割引が適用されていました。今回の改定では、深夜割便時間帯が拡大した代わりに前後の時間帯の割引適用がなくなりました。割引率としては、(割引適用時間帯の走行距離÷全走行距離)x30%となります。
この割引率算出には、料金所通過時間に加えて、高速道路内にETC無線通信専用アンテナを設置し、各アンテナから車両毎の通行記録を収集し、それらのデータを基にした割引対象距離が使われます。
 
深夜割引適用料金
 

2-③.割引の還元が後日還付型に変更

現在は、対象時間帯に走行すれば全走行分が3割引になっていますので、高速道路の料金所での精算時に自動的に割引運賃が適用されます。見直し後の新制度では、実際にどう走ったかも割引適用の対象になってくることから、料金所で割引適用後の料金を表示することが難しく、ETCマイレージポイントでの還元大口・多頻度割引と合わせて割引処理されることになります。
 

2-④.法令を守った割引適用

22時から5時を超えた時間帯の走行分は割引対象外になるため、制限速度を無視して5時までに料金所を通過するような走行をさせないように法令に違反するような走行を行うと割引が適用されないようになっています。
 

2-④-1.割引対象距離の上限設定
割引対象距離の上限を、割引適用時間における利用時間1時間あたり普通車で100km、大型・特大車で80kmに設定(メーターの誤差を加味して実際には105km、85kmを上限として設定)されます。100km/時、80km/時を超過して走っても割引対象にはならないようになっています。
2-④-2.4時間以上走ったら自動的に30分は割引適用外
ドライバーの改善基準告示では、4時間走ると30分間の休憩をとらなければならないと規定されています。これを高速道路の割引適用に準用させて、割引適用時間帯において利用時間が4時間を超える場合には、それぞれの車種の利用時間30分に相当する上限距離を割引適用から減じるとしています。

・改善基準告示2024
 

3.まとめ

見直し後の深夜割引制度ではあ、概ね利用者にとってメリットのある制度となっています。ただ、速度超過や休憩など法令に基づいた走行以外は、割引適用外としたことで、新制度が複雑化し大変わかりづらくなっています。この複雑な制度のため、料金所で割引運賃の適用ができません。個人や零細運送事業者ではETCマイレージポイントでの還元となってしまうため、その場で割引が適用されていた現在の制度と比べると、やや不満に思えるかもしれません。
 

4.お知らせ

お知らせ⑧
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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。