⑤コラム

【コラム】リニア中央新幹線にかける熱い思い


最終更新日 2023年11月27日



この記事は、講談社出版の国商 最後のフィクサー葛西敬之(森功著)の書籍を呼んだ書評になります。
2022年5月25日に元JR東海の葛西敬之(かさい よしゆき)氏は間質性肺炎のため享年81歳でお亡くなりになりました。葛西敬之といえば、第三次中曽根政権の時代に井手正敬、松田昌士と共に国鉄分割民営化を推進してきた立役者であり、その後、JR東海の社長、会長を歴任された方です。東海道新幹線をJR東日本と綱引きの末、JR東海に持ってこれたことによってJR東海の経営が安定できたことは、葛西さんの人力と経営手腕によるところが大きいと言われています。
もともと金丸信などの大物政治家による国策として進められてた超電導磁気浮上式リニアモーターカーを現在の東海道新幹線に代わる大動脈として東京(品川)から名古屋を経て大阪(新大阪)までリニア中央新幹線を建設するとしてJR東海を率いてきたのが葛西さんであってその熱い思いが後半の100ページにわたって書かれています。総額10兆円とも言われる巨大プロジェクトを国の財政投融資なしで、民間だけの力でやる。そのためには、品川―名古屋間で先行開業して投資回収を行いながら名古屋―新大阪間を建設するため、2011年に発表した当初計画では、2027年に品川―名古屋間開業、その後、2037年に新大阪までの全線開業の予定でした。現在では、南アルプストンネル工事の環境問題への反対から工事がストップしており、2027年の開業はできないといわれています。
新大阪まで同時開業しなければ、関西経済が沈下するなどと関西の財界から同時開催を要望する声が多くあがりましたが、JR東海が国の経済支援を受けずに建設する道を選んだため、先行開業して投資回収をしながら、名古屋―新大阪を建設するのは仕方がないことだと思います。品川―名古屋間が先行開業して新大阪延伸までの約10年間は伊丹空港から羽田空港への航空需要バブルが来ることになるでしょう。

また、リニア中央新幹線のルートは、東京・名古屋・大阪の3大都市圏を最短で結ぶルートが予定されており、品川を出て、相模原(神奈川県)、甲府(山梨県)、南アルプス南部、名古屋、奈良県を通り新大阪へのルートです。なぜ、国際都市で観光需要も旺盛な京都を経由しないのか、という声も多くあがりましたが、3大都市圏を最短ルートで結ぶという方向性からすると東海道新幹線のような雪の多い関ケ原を経由して京都に迂回するルートが外れてしまうことになります。あくまでもJR東海の独自資金での建設を行うので、地元自治体の要望で政治駅をつくらないことも一貫していました。
正直、アメリカもドイツもリニアモーターカーの開発はストップしていて、今現在、リニアの開発を行っているのは日本と中国だけです。新幹線の時速300kmでも十分なのになぜ、時速500kmのリニア中央新幹線を開発するのか、という問いに対して、葛西さんは、高い鉄道技術を世界に示し、アメリカを始めリニアを世界に輸出したい。という強いを持っていました。事実、台湾新幹線は日本の新幹線技術を持って建設されています。
遠い未来には、日本の技術でロサンゼルスからニューヨークまでリニアモーターカーで移動できるといったことが現実化されるかもしれません。現在、東京―大阪間を移動する方の約20%は、腰に負担がかかる等の理由で飛行機を利用されています。リニアが開通して67分で東京―大阪間が結ばれると、ほぼ100%の方がリニアを選択することになると思います。それを見越してJR東海もリニア中央新幹線の採算をはじいています。
現在、大井川の流量減少への懸念を理由とした静岡県のトンネル着工反対などにより、一部区間の工事がストップしており、リニア開業時期の目途がたっておりません。葛西さんの思いの実現に向けて、一刻も早くこの問題を解決していただいて、私が老いて歩けなくなる前にリニア中央新幹線の開業を見届けて乗車したいものです。

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。