②物流情報(倉庫)

冷凍倉庫・冷蔵倉庫


最終更新日 2023年11月27日


冷凍倉庫TOP0531
物流関連の展示会へ行くと、不動産デベロッパーが多く出展して、自社が開発・運営する倉庫をパネル地図で紹介しています。ブースに入って見ていると一般倉庫だけでなく冷蔵・冷凍施設を備えたマルチテナント型の倉庫を建設されるデベロッパーが出始めています。今回は、そのような冷蔵冷凍倉庫について触れていきたいと思います。

【目次】

1.冷凍食品の現状
2.プロトン凍結機
3.3温度帯と4温度帯
4.冷蔵倉庫の区分
5.今までの冷蔵倉庫市場
6.専業の冷蔵倉庫業者に寄託
7.一般社団法人日本冷蔵倉庫協会のデータより
8.古いフロンの冷媒
9.自然冷媒とは
10.食品衛生法の改正
11.物流不動産デベロッパーがマルチテナント型の冷蔵倉庫を開発
12.関西でのマルチテナント型冷凍・冷蔵倉庫3物件
13.まとめ
14.営業倉庫の許認可取得はおまかせください
15.お知らせ

1.冷凍食品の現状

冷凍食品
街中の空き店舗の一角に、無人の冷凍餃子、冷凍肉の店が次々にオープンし店の前を通るたびにお客さんが中で購入されています。また、急速冷凍機の普及により今まで冷凍食品として販売されていなかった、お寿司、煮物、和菓子なども冷凍食品として販売されるようになり、それらの商品を保管する冷蔵冷凍倉庫の需要はますます高まっていくと考えられています。
一度溶けたアイスクリームを家庭用の冷凍庫にいれて再度凍らせても、氷菓子のようにジャリジャリでおいしくなかったイメージはないでしょうか。水から氷に変わるマイナス1℃からマイナス5℃の最大氷結晶生成温度帯を一気に通過できる冷凍技術がないと水から氷結晶になることによる膨張によって、中から旨味成分やドリップが流れ出てしまいます。これが、家庭の冷凍庫を使って冷凍するとおいしくなくなる最大の原因です。
生産者は、業務用の急速冷凍機を使って冷凍することによりこのうま味成分を逃がさずに冷凍食品に変えることができます。
ひと昔前は、急速冷凍機というと大型で専用の冷凍食品工場を持たなければ導入できませんでした。近年、技術革新が目覚ましく、マイナス35℃のアルコール液につける液体休息冷凍機は、店舗の調理場の一角において冷凍することができるため、一般の個人料理店でも冷凍食品を作ることが可能になりました。
このような冷凍技術の進化によって、冷凍食品の普及がますます広がり、それを保管する冷蔵冷凍倉庫の位置づけがますます重要になってきます。
 

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2.プロトン凍結機

フリーザー
次世代の冷凍技術と呼ばれるプロトン凍結機の登場により冷凍食品の技術がさらに向上しました。
肉やまぐろを解凍した際に、赤い汁がでてきますが、これがドリップといううまみ成分です。ドリップをできるだけ少なくする冷凍方法が今までの課題でした。通常の冷凍では、マイナス1℃からマイナス5℃までの最大氷結晶生成温度帯を30分で通過させ早く凍らせる(=急速冷凍)を行いドリップの流出を少なくするようにしています。
プロトン凍結は、この急速冷凍の際に磁力と電磁波、冷風を加えることによって、氷の粒を小さくし、食品の細胞膜を破壊しないようにしてドリップの流出をさらに少なくするという技術です。
※プロトン凍結は、奈良県奈良市にある㈱菱豊フリーズシステムズの登録商標です。
 

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3.3温度帯と4温度帯

3温度帯4温度帯
食品の保管や配送には3温度帯、4温度帯といった用語が頻繁に出てきます。物流業務を行う上で押さえておきたい用語ですので基準や相違点を説明していきます。
 
①3温度帯
3温度帯とは、常温、冷蔵、冷凍の3つに分けられた温度帯区分で保管・輸送することをいいます。保管温度帯とも呼ばれます。常温はドライとも呼ばれ10~20℃の温度帯を指し、チルドと呼ばれる冷蔵は5~-5℃、冷凍はフローズンと呼ばれ-15℃以下として区別されています。肉や魚などの生鮮食品は温度管理が大きく食品の品質に関わるため、食品にふさわしい管理方法ができる倉庫や輸送車両が求められます。
特に、輸送については積込み・積み降ろし時や車両を止めて休憩する際の温度管理等、習熟したドライバーでないと難しいといわれています。
 
②4温度帯
4温度帯とは、3温度帯の常温、冷蔵、冷凍に加えて定温を追加したもので、温度帯は常温と同じですが、生鮮野菜など温度・湿度を一定に保たなければ品質が劣化してしまう食品等を扱う温度帯で、保管する倉庫の位置によってバラツキがあったり、温度が一気に上がったり下がったりすることのないように管理ができる状態のことをいいます。
 

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4.冷蔵倉庫の区分

冷蔵倉庫の等級区分
倉庫業法施行規則等運用方針の[5]冷蔵施設明細書及び冷蔵倉庫の施設設備基準及び倉庫業法第3条の登録等に関する告示(平成14年1月31日 国土交通省告示第43号)の第19条(冷蔵倉庫の基準)によって7つの温度帯に区分されています。倉庫業法上では、冷凍倉庫という表現は使わず、冷凍倉庫であっても冷蔵倉庫と表記されています。
冷蔵倉庫がC3からC1まで3種類あり、冷凍倉庫(倉庫業法上は冷蔵倉庫の一種として規定)は、F1からF4まで4種類あり、温度帯はそれぞれ、下記の表のとおりとなっています。
一部、インターネット上の記事では、C3及びC2の温度が0℃を基準とされていましたが、倉庫業法上では、マイナス2℃が基準温度となっていますので、間違えないようにしてください。
 

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5.今までの冷蔵倉庫市場

冷凍倉庫・冷蔵倉庫0524B
国内の冷蔵倉庫の大半は、大手の冷蔵倉庫会社の自社所有物件でした。温度設定やメンテナンスを自社で行いたい、各店舗に近い都市近郊で設置したい、精肉等の輸入食品が多いため、港の検疫所の近くに設置したいなど個別的な要素が高く、賃貸用に冷蔵倉庫を建設しても、一旦、テナント契約が終わった際に新規の借主を見つけることが容易でなかったため、冷蔵倉庫の賃借物件はほとんどありませんでした。
事実、大手デベロッパーの開発物件でも、長期間契約の1棟貸しを前提とするBTS型が主体で、京都府八幡市にあるラサール不動産投資顧問㈱が所有し(正式には、京都八幡プロパティー特定目的会社)、㈱関西丸和ロジスティクスが使用しているAZ‐COMロジスティクス京都が関西では代表的な例です。
 

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6.専業の冷蔵倉庫業者に寄託

厨房
このように冷凍倉庫の一部を賃借する市場がないことから、小規模で倉庫を使用したい事業者、特に小売店舗や高齢者施設等への冷凍食の配食事業者は自社工場内に冷凍庫を設置するか冷蔵倉庫会社の営業倉庫に寄託するしか選択肢がありませんでした。営業倉庫に寄託する場合は、倉庫内での管理が倉庫会社に移ってしまうため自社で細かな管理や時間帯を気にせずに入出庫、配送を行うことが難しくなります。そこで1000坪程度から賃借できる冷蔵倉庫の需要が高まってきています。

・倉庫業開業マニュアル
・大阪で倉庫業登録(許可)を取得する流れをわかりやすく解説

 

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7.一般社団法人日本冷蔵倉庫協会のデータより

冷蔵倉庫収容容積
一般社団法人日本冷蔵倉庫協会(以下、冷蔵倉庫協会)のデータによりますと、2022年12月現在での冷蔵倉庫の事業所数はF級(冷凍)1190倉庫で、収容要請が2865万㎥となっています。その内訳はF級(冷凍倉庫)2485万㎥、C級(冷蔵)380万㎥です。
下記の表のように10年前の2013年12月と比べると倉庫数は1208から減っているものの収容面積では、F級(冷凍)2233万㎥、C級(冷蔵)330万㎥、合計2563万㎥と比べても11.78%も増えています。
大規模倉庫
また、収容能力が25,000㎥(1万トン)以上の大規模な施設が2022年では大規模な施設は事業所数の32%なのに対し、収容容積では73%を占め2013年、2017年のデータと比べても冷蔵倉庫の大型化が進んでいることがわかります。
 
冷蔵倉庫の庫齢②
冷蔵倉庫の庫齢①
少し古い資料ですが、国土交通省の物流施設整備に関するビジョンの策定によりますと、冷蔵倉庫の庫齢(築年数)30年以上は全体の42%、東京都内だけでみると59%と施設の老朽化が目立ってきており、現在でもこの状況は大きく改善していないと見られています。
 

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8.古いフロンの冷媒

フロンガス
冷蔵庫やエアコンの冷媒、プリント基板の洗浄液として利用されていたフロンガスが、オゾン層を破壊し地球温暖化の原因になるとして、1989年に発効したモントリオール議定書により日本では特定フロンは1996年までに撤廃、代替フロンとして使用されていきたHCFC(R22)も2020年をもって、日本冷凍空調工業会が生産中止をしています。
現在の冷蔵倉庫は、HCFC(R22)を冷媒として使用していますが、その割合も2011年80.9%から2019年53.1%に減少しています。また自然冷媒を使用している冷蔵倉庫の割合も2011年の15%から2019年には36.7%に増加しています。今後建設されていく冷蔵倉庫は100%自然冷媒を使用した倉庫になりますので、この割合がさらに増えていくとみられています。
 

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9.自然冷媒とは

自然冷媒ガス
代替フロンであるHCFC(R22)の生産中止に伴って、自然界に存在するアンモニアや二酸化炭素、プロパンなどを冷媒として使用する冷却方式のことをいいます。自然冷媒は、オゾン破壊係数がゼロであるのはもちろん、代替フロンと違って地球温暖化係数が低いなどの利点があります。
冷蔵倉庫のような大きな空間の冷却にはアンモニア直膨冷却方式が望ましいのですが、アンモニア自体に臭気性・毒性を持っていることから、二酸化炭素冷媒と組み合わせたアンモニア間接冷却方式において高い安全性が実現され高効率な冷却を行うことができています。冷蔵設備メーカーもアンモニア間接冷却方式の冷蔵設備を導入しています。
 

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10.食品衛生法の改正

お弁当の調理工場
2021年(令和3年)6月の食品衛生法の改正によって、食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取り組むことが義務化されました。冷蔵倉庫は、食品衛生法の営業許可が必要でしたが、改正後は届出となりました。冷蔵倉庫は、従来、食品の冷凍又は冷蔵業でしたが、改正後は冷凍・冷蔵倉庫業となり届出のみで行えることになり、冷凍食品製造業と区別されています。これに伴って倉庫業法施行規則も改正され、食品衛生法による許可年月日及び許可番号が不要になっています。
 

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11.物流不動産デベロッパーがマルチテナント型の冷蔵倉庫を開発

ランプウエイ倉庫③
今までの書いてきたように、冷蔵倉庫の賃借市場自体が未成熟でBTS型での1棟まるまま賃貸するのが主流でしたが、物流不動産デベロッパーがテナントの決定を待たずに冷蔵倉庫を開発したり、マルチテナント型物流施設に冷蔵倉庫と一般倉庫を併設する機能を持ちあせた倉庫を開発する動きがでてきました。
背景には、好調な冷凍食品需要に加えて急速冷凍機の普及で個人のお店でもインターネット通販サイトを通じて冷凍食品が販売できるようになったことがあげられます。
冷蔵倉庫協会の資料でも明らかなように庫齢(築年数)の古い倉庫も多く、加えて代替フロンの問題もあり設備の修理やガスの交換がいつまでできるのか不透明なことから、既存の冷蔵倉庫の建て替え、移転需要が見込まれます。
 

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12.関西でのマルチテナント型冷凍・冷蔵倉庫3物件

大型倉庫0509A
GPL住吉浜(兵庫県神戸市東灘区)は全館冷凍・冷蔵対応できるマルチテナント型施設で、延床面積約44,827㎡、4階建てで1階と3階にトラックバースが設けられており、2階、4階部分は垂直搬送機とエレベーター併用で商品の上げ下げができるようになっています。完成は2024年11月を予定しており、1246坪から賃借可能となっています。(日本GLP㈱ホームページより)
また、南港東物件(大阪市住之江区)にも2026年1月竣工予定で7,498㎡の冷凍・冷蔵倉庫(マイナス25℃)と低温倉庫(5℃)が計画されています。(同社物件概要資料より)
大和ハウスがDPL大阪舞洲(大阪市此花区)が81,712.84㎡、8階建ての倉庫を建築中で全フロアにトラックバースが設けられるランプウエイ方式で1階から4階が冷凍・冷蔵倉庫(マイナス25℃)、5階から7階が一般倉庫、8階が食堂などの休憩施設と乗用車駐車場となっています。2024年5月竣工予定であり、筆者も建設中の同倉庫を見てきましたが、まさに2024年に向けて急ピッチで工事がすすめられていました。(同社物件概要資料より)
Logicrossのブランドで展開する三菱地所も大阪府住之江区柴谷で冷凍・冷蔵倉庫の開発をすすめており、43,499.94㎡、BOX型倉庫で垂直搬送機8基、エレベーター4基を備えており、4分割して賃借可能なように設計されています。竣工は2025年1月を予定しています。
3社ともマイナス25℃まで温度調整でC3~C1及びF1倉庫として使用可能な温度帯可変式委になっており、冷媒は自然冷媒が採用されています。
 

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13.まとめ

まとめ③
冷蔵倉庫は一般倉庫に比べて賃料相場が2倍程度といわれています。高級冷凍食品であればいいのですが、スーパーなどで毎回特売の対象となる冷凍食品であれば売値も安く粗利も低くなる傾向にあります。売上高に占める保管コスト比率が高くなるためデベロッパーの建築する新築の高い倉庫のビジネスモデルがマッチするかどうかという意見もあります。
賃料をどれくらいに設定するのかは今後の動向を見ていかないとわかりませんが、冷凍食品業界の事情も意識した上での賃料設定が望まれます。
また、事業環境が刻々と変化する中、長期間契約の縛りをもうけるのではなく、一般倉庫と同じような5年程度の賃借期間で契約することができるようにし、リテナントできる賃借市場が確立されると、冷蔵倉庫の賃借市場がますます熱くなっていくと考えます。

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14.営業倉庫の許認可取得はおまかせください

倉庫業法①
冷蔵倉庫で営業倉庫の許認可を検討の方は、当事務所におまかせください。当事務所は、行政書士でも数少ない物流を専門にしている事務所です。物流業界経験20年以上あり多くの営業倉庫登録を手掛けてきました。特に冷蔵倉庫の場合は、一級建築士、冷蔵設備メーカーとの連携が不可欠です。既存の倉庫で営業倉庫の許認可が取れるかどうかの診断も行っていますのでお気軽にお声がけください。全国対応可能です。

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15.お知らせ

お知らせ③
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。