②物流情報(倉庫)

倉庫業に必要な倉庫管理主任者とは


最終更新日 2023年11月27日


倉庫管理主任とは
倉庫業を始めるにあたって、必ず営業倉庫毎に必要な倉庫管理主任者とは、どのような資格者なのか、日常、どのような業務を行うのか、倉庫管理主任者にはどのようにしてなることができるのかについて、簡単に解説していきます。これから倉庫業を始めたいが倉庫管理委主任者って何?と思われている方、倉庫業を行っていて、倉庫の増設のために新たに従業員を倉庫管理主任者に選任したい場合などの知識整理のためにぜひ、一読をいただけますようお願いいたします。

1.倉庫管理主任者とは?

倉庫管理主任者とは?
倉庫管理主任者とは、平成14年(2002年)の倉庫業法改正に伴い設けられた資格のことで、文字通り、倉庫を適切に管理するための知識・能力を有する責任者のことをいいます。倉庫では倉庫事業者の従業員、外部委託業者の社員、パート、アルバイト等立場の異なる多くの人が働いており、さまざまな物品を取扱います。昨今の倉庫では、ディストリビューションセンター、フルフィルメントセンターと呼ばれるように保管・荷役(にやく)だけでなく、流通加工や梱包などの軽作業を行っています。フォークリフト作業のみならず、流通加工時に用いる切断機や切削機、熱処理を行う機器等を取扱うことは、常に災害や事故の発生リスクと隣り合わせにあります。倉庫管理主任者は、このような事態が発生しないよう、日ごろから、倉庫全体の業務管理安全管理5S管理を行う役割を持っています。基本的に倉庫管理主任者は、その倉庫を管理する責任者もしくは副責任者がその役割を果たし、常にその倉庫に常駐して勤務していなければなりません。事故が発生した際にはその事故お収拾するために現場で指揮を執ります。また、事故後の役所への報告や監査など役所対応も倉庫管理主任者の役割です。

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2.倉庫業法で倉庫管理主任者の選任が規定されています

倉庫管理主任者は倉庫業法で規定
倉庫業法第11条では、倉庫業者に対して、倉庫ごとに倉庫の適切な管理に必要な知識及び能力を有する倉庫管理主任者を選任して倉庫の管理に関する業務を行わなければならないとしています。倉庫業を営むためには、営業倉庫ごとに最低1名の倉庫管理主任者を選任して、国土交通省に届出なければなりません。倉庫管理主任者が退職や異動、病気等による長期間の休職等によってその倉庫の管理ができなくなった場合には、すみやかに倉庫管理主任者を交代して、後任の物を倉庫管理主任者として届出しなければなりません。倉庫管理主任者が欠けた場合は、営業倉庫としての倉庫業務が行えなくなってしまいます。
これから倉庫業を始める事業者は最低1名の倉庫管理主任の有資格者を確保しなければなりません。また、既に倉庫業を営んでいる事業者も前出の理由により倉庫管理主任者が欠けた場合には、すぐに後任の倉庫管理主任者を届出なければならないので、1つの倉庫に対して数名の倉庫管理主任者の有資格者を確保しておく必要があります。ただし、同一敷地内に設けられている倉庫がその他の機能上一体の倉庫とみなされる場合は、倉庫管理主任者は倉庫棟ごとに選任しなくても敷地内で1人でもよいとされています。

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3.倉庫管理主任者の行う業務について

倉庫管理主任者の業務
倉庫管理主任者の行う業務については、倉庫業法管理規則第9条の2において以下のとおり業務内容が定義されています。

3-①.倉庫における火災の防止その他倉庫の施設の管理に関すること

倉庫には紙や段ボールなど燃えやすい資材が多いほか、可燃性の物品を多く保管しています。倉庫内で火災が発生すれば、それらの可燃性の資材・在庫に引火し、一気に火災が広がる可能性が高いです。2017年2月に埼玉県三芳町のアスクル倉庫火災、2022年11月の大阪市此花区の日立物流倉庫の火災を見ても倉庫の火災がいかに大惨事になるかがわかるかと思います。
倉庫内で火災が発生しないように火気を扱う場所や喫煙場所が徹底されているか、フォークリフトの充電場所に可燃物が置かれていないか、防火シャッター、スプリンクラーが正常に作動するよう常時点検されているか、消火栓、消火器が正しく作動するよう常時点検されているかなど、日々の管理がきっちりと行われているかを指示し確認しておくことが求められています。火災被害が拡大した理由として防火シャッターの下に物品が保管されていて正常に作動しなかった事故例がよくありますが、倉庫管理主任者としては、絶対にこのようなことがないように日々、倉庫内巡回によりチェックしておかなければなりません。倉庫管理主任者は、倉庫内のすべての設備について安全上・衛生上の問題がないかどうかを管理します。施設管理は倉庫内だけではなく、倉庫の敷地内全体が対象になります。敷地内の街灯、植栽、コンクリート壁や鉄柵、道路の舗装なども管理の対象となります。
 

3-②.倉庫管理業務の適正な運営の確保に関すること

倉庫内で働く人は、複数の会社の従業員が混在する複業態でありマニュアルや管理体制を書面化しておかないと、倉庫管理が適正に行うことができません。倉庫管理主任者は、業務管理マニュアルを策定して、新たな業務の追加や変更があった都度に改訂をしておきます。
業務管理マニュアルの中で重要な項目は、
(1)物品が適正に保管されているか。
荷崩れ防止措置を講じているか、段積みにより下の物品が変形していないか、温度や湿度、虫などによる物品のダメージはないかなどをチェックします。
(2)数量管理
入庫時、出庫時の数量を適正に記録し、巡回棚卸を実施して数量があっているか確認します。
(3)情報セキュリティ
製品情報や価格情報など、業務上知り得た情報が外部に漏れることなく適正に管理されているかを確認します。
 

3-③.労働災害の防止に関すること

労働災害が起きないよう安全管理を行うことが倉庫管理主任者の重要な業務です。特に倉庫内で縦横無尽に走るフォークリフトと作業員の接触事故は重大事故につながる恐れがあるため、専門家を派遣してもらうなどしてフォークリフトの安全教育を定期的に行うことが必要です。倉庫内での重量物の運搬の際に指詰め事故、足に落としたことによる骨折事故がよく発生しますので、事故事例の水平展開やヒヤリハット、危険予知訓練を行うことも倉庫管理主任者が行います。
 

3-④.現場従業員の研修に関すること

倉庫管理を適切に行なうためには、自社の従業員だけでなく倉庫で働かれるすべての従業員の意識向上が欠かせません。火災や労働災害の防止、倉庫業務の適正な運営を行なため、教育や研修の機会提供も倉庫管理主任者の重要な業務です。
 

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4.倉庫管理主任者になるには

倉庫管理主任者になるには
倉庫管理主任者の要件は、倉庫業法管理規則第9条において規定されており、実務経験または講習の受講のいずれかが必要とされています。
実務経験は、①2年以上倉庫管理業務の指導監督的実務経験を有する者、②3年以上倉庫管理実務経験がある者とされています。営業倉庫での実務経験が必要であり、自家用倉庫での実務経験はこれらに含まれませんのでご注意ください。
講習の受講は、一般社団法人 日本倉庫協会が主催する倉庫管理主任者講習を受講する必要があります。国土交通大臣の定める講習というのは、日本倉庫協会の研修のことをいいます。新たに倉庫業を始められようとされる場合は、中途入社での実務経験者がいない場合は、必ず、この講習会を受講して倉庫管理主任の資格を得ておく必要があります。倉庫管理主任者講習は、毎月、各地で開催されているのですが、東京以外は募集定員が少なくすぐに定員に達して募集締め切りになるため、早めの準備が必要です。

・倉庫業開業マニュアル
・大阪で倉庫業登録(許可)を取得する流れをわかりやすく解説

 

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5.倉庫管理主任者講習会

倉庫管理主任講習会
一般社団法人 日本倉庫協会が主催する倉庫管理主任者講習会は、①倉庫業法等関連法規、②労働安全に関する事項、③防火管理に関する事項、④倉庫管理実務で1時間ごとの講義が4コマあり1日で完結します。終了テストはなく、講義を最後まで受講すれば、全員に倉庫管理主任の資格が与えられます。実務経験の証明が難しい場合などは、この研修を受講して資格証を持っているほうが、経歴証明がしやすく便利なため時間的に余裕があれば、実務経験のある責任者に受講させておくことをお薦めいたします。
 
倉庫管理主任講習カリキュラム
 

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6.まとめ

まとめ①
倉庫業を始める場合には、倉庫施設要件の次に倉庫管理主任が確保できているかどうかが、キーになります。倉庫業を始めることが決まったらすぐに該当者に倉庫管理主任者研修を受講させるようにしましょう。
また、倉庫管理主任者は、多くの従業員の人命とお客様から預った大切な物品を適切に保管する責任者となります。大変な重責になり、事故が発生した後は、国土交通省、運輸局、労働基準監督署など関連省庁との対応の窓口責任者となりますのでその覚悟をもって日々の管理監督をしていかなければなりません。

・倉庫業開業マニュアル
・大阪で倉庫業登録(許可)を取得する流れをわかりやすく解説

 

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7.倉庫業をお考えの方は当事務所までご連絡ください

倉庫業に興味あればご連絡
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、倉庫業登録(許可)を行っています。通常は、一級建築士に依頼する倉庫が営業倉庫に該当するかどうかの建築面・施設面での診断も当事務所でサポートさせていただいております。許認可を取得する前段階からお客様と一緒に検討をさせていただきますので、倉庫業許認可の費用全体で考えて頂ければメリットが得られるかと考えております。倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします

・倉庫業開業マニュアル
・大阪で倉庫業登録(許可)を取得する流れをわかりやすく解説

 

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8.お知らせ

お知らせ④
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。