大阪で倉庫業登録(許可)を取得する流れをわかりやすく解説
大阪で倉庫業の登録(許可)を受けるためにはどのような手続が必要なのか?
新たに倉庫を借りて倉庫業を始めたい、自社の倉庫が空いているので倉庫業の登録(許可)を受けたい、運送業にプラスして倉庫業を始めたい、事業再構築補助金を使って倉庫業を展開したい。など倉庫業を開業にまつわる課題を抱えている方も少なくありません。
当事務所は大阪府大阪市にある運輸・物流専門の行政書士事務所です。代表が物流業界で20年以上、法務を担当し倉庫業についても多くの許認可やその後の運営を行って参りました。倉庫業が必要なのか、倉庫業を始めるにあたってのどのような要件が必要かについてわかりやすく解説いたします。ぜひ参考にしてください。平成14年(2002年)の倉庫業法改正により倉庫業が許可制から登録制に変わりました。2002年以前に倉庫業の許認可を取得した際には倉庫業許可証と記載されています。現在では倉庫業登録証となっています。本記事では倉庫業登録(許可)と併用したかたちで記載をいたします。
目次
1.倉庫業とは
2.倉庫業は倉庫業法によって規定されています
3.倉庫業と営業倉庫
4.営業倉庫と自家用倉庫
5.倉庫の種類
6.倉庫業が必要な場合・不要な場合
7.営業倉庫類似行為
8.トランクルーム
9.寄託契約
10.寄託契約の3期制
11.倉庫寄託約款
12.倉庫証券
13.マルチテナント倉庫とビルド・トゥ・スーツ倉庫
14.倉庫管理主任者
15.事業所税の減免
16.当事務所は物流専門の行政書士事務所です
17.物流専門の当行政書士事務所に依頼するメリット
18.大阪で倉庫業登録(許可)を取得するための流れ
19.まとめ
20.お問い合わせ
大阪で倉庫業登録(許可)を取得する流れ
1.倉庫業とは
広義な意味での倉庫業とは、日常生活や産業活動に欠くことのできない物品を安全に保管し輸送と輸送との間の物流の結節点としての重要な役割を担う事業のことをいいます。昨今の大型倉庫では、保管や荷役といった本来の倉庫業の業務だけではなく、流通加工や受発注の情報管理業務、カタログや広告用の撮影スタジオまで備えた倉庫もあり、多機化していることからディストリビューションセンター(Distribution Center)、フルフィルメントセンター(Fulfillment Center)などと呼ばれることがあります。
一方、倉庫業法で規定されている倉庫業とは国土交通大臣の登録(許可)を受けた倉庫(営業倉庫と呼ばれます)のみでしか業務を行うことができません。ここでは、倉庫業法に規定される倉庫業・営業倉庫について解説をしていきます。
目次に戻る
2.倉庫業は倉庫業法によって規定されています
倉庫業法第2条で倉庫業、営業倉庫について規定されています。倉庫業とは、寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業、と定義されており民法及び商法で規定されている寄託を受けることができる事業のことをいいます。つまり、寄託預りを行うのであれば国土交通大臣による倉庫業の登録(許可)が必要になります。高速道路のインターチェンジ付近に立地する巨大倉庫でも倉庫業の登録(許可)を受けていない倉庫もありますので、それらの倉庫では寄託預りを行っていないということになります。営業倉庫とは、物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物(建物)又は土地・水面と定義されています。寄託預りしている物品を安全に保管するため建物の仕様については、倉庫業法施行令、倉庫業法施行規則、倉庫業法施行規則運用方針で細部まで定められています。必ずしも建物である必要はなく、野積倉庫や水面倉庫でも営業倉庫の登録(許可)を受けることができますので、数は少ないですが日本全国には建物でない営業倉庫も存在します。
目次に戻る
3.倉庫業と営業倉庫
倉庫業と営業倉庫の違いについても理解をしておく必要があります。倉庫業というのは事業者に与えられる登録(許可)のことです。営業倉庫とは、倉庫業を行っている事業者が運営している倉庫のことでこちらも倉庫ごとに、営業倉庫の登録(許可)を受けなければなりません。倉庫業の許認可を取得するためには、必ず営業倉庫が1つ必要になります。その後、事業拡大により営業倉庫を2か所、3か所と増やしていく場合は、倉庫業の変更という形で事業者に与えられる倉庫業はそのままで営業倉庫が増えていくかたちになります。2022年7月現在の営業倉庫の棟数データによると一番多くの営業倉庫を運営している日本通運株式会社はトランクルームを含んで1156棟の営業倉庫を運営しています。倉庫業としては1社の扱いです。
目次に戻る
4.営業倉庫と自家用倉庫
倉庫には大きく分けて2種類あります。倉庫業法に基づいて国土交通大臣の登録(許可)を受けた倉庫が営業倉庫です。営業倉庫は他人の物品を寄託預りを行うことができますので、不特定多数の顧客の物品を保管している倉庫事業者などは、営業倉庫の登録(許可)を受けています。営業倉庫以外の倉庫を自家用倉庫と呼びます。自家用倉庫は自社が所有する物品を保管する倉庫のことですので、倉庫業法の規制の対象外になります。建物の状態にも規制がなく、倉庫として建てられた建物でなくても、使っていない工場や、店舗、事務所の一部を自家用倉庫として使用することができます。自家用倉庫は、自社の物品を保管する倉庫ですので、他人の物品を寄託することは倉庫業法で禁止されています。
倉庫の種類 | 登録(許可) | 用途 |
営業倉庫 | 必要 | 国土交通大臣の登録(許可)を受けた倉庫
他人の物品を寄託預りできる |
自家用倉庫 | 不要 | 自社の物品を保管するための倉庫 |
目次に戻る
5.倉庫の種類
倉庫業法上の倉庫は普通倉庫と呼ばれる1類倉庫、2類倉庫、3類倉庫、野積倉庫、水面倉庫、貯蔵槽倉庫、危険品倉庫、冷蔵倉庫の8種類になります。令和4年(2022年)7月1日時点で全国の営業倉庫は26,186棟あり(トランクルームを除く)そのうち、1類倉庫が16,728棟で64%を占めます。危険品倉庫が2,733棟で10.7%、冷蔵倉庫(冷凍倉庫)が4,566棟で17.4%です。これから新規で倉庫業を始めようとされる方は、1類倉庫、危険品倉庫、冷蔵倉庫(冷凍倉庫)の3種類に限られてくるかと思いますので、その3つの倉庫について解説していきます。
5-①.1類倉庫
普通倉庫と呼ばれる建屋型倉庫の多くがこのタイプで倉庫業法で規定される第1類物品から第6類物品まで保管することができます。具体的には日用品、繊維、紙・パルプ、電気機械などの物品を保管しています。壁や床の強度、防水、防湿、耐火性能などお客様の大切な物品を預るのに適した建物構造であるとして13の基準がありすべて基準を満たした倉庫になります。近年、大手不動産デベロッパーが建設している倉庫はほぼすべてがこの基準を満たしおり、1類倉庫として登録(許可)することができます。
5-②.危険品倉庫
危険品倉庫は、倉庫業法で第7類物品に指定され、消防法第2条の危険品に分類されるガソリンなどの引火性液体、硫化りんや固形アルコールなどの可燃性固体を保管するための倉庫です。事故があった際に爆発や火災を伴う危険があるため区画が最小限の区画に分けられ壁面ではなく天井から爆風を逃がす設計になっています。落雷があった場合には大きな被害がでますので、天井には多くの避雷針が建っているのが特徴です。
5-③.冷蔵倉庫・冷凍倉庫
常時10℃以下で保管することが必要な野菜、肉、魚などの生鮮品及び冷凍食品等を保管する倉庫のことをいいます。冷蔵倉庫はC帯(Cool)と呼ばれ10℃からマイナス20℃まで3つの級別の温度帯、冷凍倉庫はF帯(Frozen)と呼ばれマイナス20℃からマイナス50℃以下まで4つの級別温度帯があります。倉庫業法では冷凍倉庫という表現はなく、冷凍機能の備えた倉庫であっても冷蔵倉庫に包含しています。冷蔵倉庫の場合は、倉庫の中に閉じ込められた際に命の危険性があるため緊急通報用の設備が備えられていることが、倉庫業登録(許可)の条件になっています。
・冷凍倉庫・冷蔵倉庫
<倉庫業法で定められている倉庫の施設基準>
倉庫の種類 | 施設基準 | 倉庫の特徴 |
1類倉庫 | 13項目すべて基準を満たす | 一番基準の厳しい倉庫で、いろいろな貨物を保管することができます。しかし、冷蔵倉庫、危険品倉庫での保管が義務づけられている物品は保管できません。 |
2類倉庫 | 耐火性能が不要 | 1類倉庫に比べ保管可能な品物が制限されます。 |
3類倉庫 | 耐火性能に加え、防湿、防水、遮熱、防鼠性能も不要 | 燃えにくく、湿気にも強い貨物が保管されます。 |
野積倉庫 | 屋外にて物品を保管 | 柵や塀などの防護施設を設置 |
水面倉庫 | 水面で物品を保管する場
所 |
原木を保管 |
貯蔵槽倉庫 | サイロやタンク | 燃えやすい物品が多くなることから、消化器や消火設備の設置が必須 |
危険品倉庫 | 危険物や高圧ガスなどを保管 | 引火性のある危険物を保管するため施設設備基準は大変厳しい |
冷蔵倉庫(冷凍倉庫) | 10℃以下で保管することができる倉庫 | 冷蔵設備を兼ね備えた倉庫 |
目次に戻る
6.倉庫業が必要な場合・不要な場合
倉庫業法で規定されている、①寄託を受けた物品を倉庫に保管する行為、②有償で保管する行為を行う場合は、倉庫業の登録(許可)をうけなければなりません。有償で寄託預りを行う場合でも次に記載する場合は、倉庫業にあたらず営業倉庫の登録(許可)を受ける必要はありません。
①港湾運送事業において一時保管用に供される倉庫
②貨物自動車運送事業の運送契約において一時保管用する場合の倉庫
③ロッカーなど外出時の携帯品の一時預り
④銀行の貸金庫などの保護預り
⑤特定の物品を製造・加工した後で他人に譲渡する営業
⑥クリーニング店の衣類の預り
です。倉庫業法の登録(許可)は不要ですが、他の法律に規定される許認可が必要な場合もありますので、上記①から⑥の事業を行う場合には都度、許認可事業かどうかを確認することが必要です。
無許可で倉庫業を行った場合は、倉庫業法第28条で1年以下の懲役か100万円以下の罰金もしくはそれらを同時に科すと規定されています。
・寄託と倉庫賃貸借の違い(倉庫業の登録が必要な場合)
目次に戻る
7.営業倉庫類似行為
倉庫業法第25条の10では、倉庫業の登録(許可)を受けていないものが倉庫業と誤認を与える行為を行ってはならないと規定されています。これは、営業倉庫類似行為と呼ばれ自家用倉庫で営業倉庫と疑われるような行為を行うことです。倉庫業以外の事業者が営業倉庫類似行為を行ったり、寄託ができる倉庫であるという表示や広告を出した場合には、国土交通大臣が改善命令を出すことができるとしています。
倉庫業とは、どのようなものか世間一般に知らない人が多く、倉庫のスペース貸し(賃貸借)は倉庫事業者や運送事業者などの物流関連事業者でなくてもできるため、異業種の事業者がこの法律を知らずして、結果的に営業倉庫類似行為となるような保管をしている実態があります。通告や国土交通省の調査でこのような行為が判明した場合には、営業倉庫類似行為ではなく最悪の場合、無許可営業になり、事業者の代表者が懲役刑に処せられる可能性もあります。自家用倉庫でこのような行為を行っている場合は、早急に倉庫業の登録(許可)を取られるよう検討するようにしてください。
目次に戻る
8.トランクルーム
トランクルームというと私たちは、衣類や趣味・レジャー用品などの日常使用しない物を自宅の収納の延長として利用できる貸しスペースをイメージすると思います。これらの機能を持つ貸倉庫は正式にはレンタル収納スペースもしくはセルフストレージといい、不動産会社もしくはオーナーと賃貸借契約を結んで一定の面積の個室を借りるものです。倉庫業法上のトランクルームとは、個人の物品を保管する倉庫のことで、個人と寄託契約を締結して預ります。海外転勤時の家具一式の預りや引っ越し時の家具類一時預りの際に私たちは倉庫業法に規定されたトランクルームを利用します。アート引越センターやサカイ引越センターなどの大手の引越し会社は自社でトランクルームを持っており、その他の引越会社でも提携しているトランクルームに一時的に預けますので私たちの知らないところで、倉庫業法上のトランクルームで一時保管されていることもあります。
平成14年(2002年)の倉庫業法改正時に、一定の性能(定温、定湿、防塵、防虫、防磁、常温、常湿)を有するなど、基準に適合するトランクルームについては国土交通大臣の認定を受けることができるようになりました。認定を受けたトランクルームは認定(優良)トランクルームとして認定マークを営業所等に掲示できるようになっています。
・トランクルーム
目次に戻る
9.寄託契約
寄託とは、当事者の一方(受寄者)が、相手方(寄託者)のために物品を保管することを約束し、その物品を受取ることによって成立する契約のことをいいます。寄託はお客様から物品を預って契約通り保管するというサービス提供の一種です。営業倉庫でお客様の物品を預かるということはこの寄託行為を行いますのでそれに沿った契約を締結しなければなりません。
寄託については、民法第657条から第666条、商法第595条から第598条に規定されており、そのルールに則って倉庫での保管業務を行います。寄託行為を行う際には受寄者(倉庫業の事業者)は善管注意義務を課せられます。これは民法第644条(受任者の注意義務)に規定されているとおり、寄託を受けた場合には、全量者管理者の注意をもって受寄する義務を負っています。民法上に規定されている内容ではありますが、倉庫業(受寄者)はお客様(寄託者)と締結する寄託契約書には、善管注意義務の条項を入れておいたほうがいいでしょう。
営業倉庫が満杯で寄託物品が溢れた場合には、同業他社にお願いして近隣の営業倉庫に再寄託することになります。民法第658条では、寄託者の承諾を得たときでなければ第三者に保管させることができない。規定されています。この条項も寄託契約書を締結する際に自社の倉庫で寄託できない場合は、第三者の営業倉庫に再寄託することができる文言を入れておくことをお薦めします。
・寄託と倉庫賃貸借の違い(倉庫業の登録が必要な場合)
目次に戻る
10.寄託契約の3期制
寄託預りの場合は、預った物量(立方メートル、キログラム)x日数で保管料金を計算します。倉庫事業者(受寄者)にもお客様(寄託者)にも双方、一番公平な課金体系です。ただし、大量の物品が毎日入庫され、出庫していく倉庫事業者にとっては、すべての物品にバーコードやQRコードが付いている訳でもないので課金するための管理が大変煩雑になります。
一般的に営業倉庫の寄託保管料は3期制という制度が使われています。これは1か月を1期、2期、3期の3つの期に分けて、1期を1日から10日、2期を11日から20日、3期を21日から月末までとします。1期は1日から10日までですので、1日に入庫して2日に出庫した場合は、2日間だけ保管したことになります。1日に入庫して10日に出庫した場合は、10日間保管したことになります。1期=1日から10日の間は、何日間保管しても一定の保管料に設定します。2日間だけ保管するのと10日間まるまま保管するのが同じ1期分の保管料金になります。1期と2期、1期から3期までと期をまたいで保管した場合のルールについては、下記のリンクより寄託倉庫保管料金の3期制を参照してください。
・寄託倉庫保管料金の3期制
目次に戻る
11.倉庫寄託約款
倉庫寄託約款とは、倉庫事業者(受寄者)が不特定多数のお客様(寄託者)に対して物品の保管をするにあたっての定型的な契約条項です。ほとんどの倉庫事業者は、国土交通省の定めた標準倉庫寄託約款を自社の約款としています。標準倉庫寄託約款には、倉庫証券を発行する(甲)約款と、倉庫証券を発行しない(乙)約款の2種類があり、今日ではほとんどの倉庫事業者が倉庫証券を発行しない(乙)約款を使用しています。(甲)約款も(乙)約款も昭和56年3月4日 港倉第11号の改正が現在でも使用されています。標準倉庫寄託約款は国土交通省が定めたものですが、若干、倉庫事業者に有利になるような内容になっています。寄託者と受寄者(倉庫事業者)との間で個別契約を定め、約款よりも優先させることができますので、内容を確認した上で気になる部分があれば個別契約で明確に定めるようにしましょう。
個別契約で定めておいたほうがよい条項は、以下の3点になります。
1.(乙)約款第17条(保管方法)
寄託者の承諾を得ずに、受寄物の入庫当時の保管箇所の変更、受寄物の積換、他の貨物との混置ができるとなっています。寄託する物品の性質上、寄託者の同意なくこのような事が行われると支障が出る場合は、事前に書面にて承諾を得る内容で契約書に盛り込んでおきます。
2.(乙)約款第38条(賠償自由及び挙証責任)
故意又は重大な過失の場合のみ受寄者(倉庫事業者)が損害賠償の責を負うとしています。また、立証責任を寄託者側に求めており、倉庫事業者の倉庫内部での故意・重過失の立証は寄託者側では、ほとんどできないことから、個別契約で損害賠償責任については明確に定めておくようにしましょう。
3.(乙)約款第38条(引渡による責任の消滅)
寄託者が留保しないで寄託物を受け取った後は、その貨物の損害について責任を負わない。となっています。箱の中身が破損していて箱を開けて初めて損害が判明したということはよくあることです。直ちに発見することができない損傷あった場合は、引き渡しの日から○○日以内に倉庫事業者に対して通知をしたときは、この限りでない。という契約不適合の内容を契約書に入れておくことを推奨します。
寄託者にとってどのような内容を盛り込んだ寄託契約にするかについては、当事務所でアドバイスをさせていただいております。寄託契約書の内容がわからない、教えてほしいという場合は、当事務所までお問い合わせ下さい。
目次に戻る
12.倉庫証券
営業倉庫で受寄する際に寄託証券を発行することはほとんどなくなりましたが、穀物や貴金属などいわゆる先物取引を行う物品については、今での倉庫証券が発行されています。倉庫証券は、倉庫業の登録(許可)を受けた事業者がその営業倉庫で受寄する場合に発行します。倉庫証券については、商法第599条から第617条の倉庫営業に規定されています。倉庫証券は小切手や約束手形と同様に有価証券であり、倉庫証券に裏書をすることによって証券に記載されている物品の所有権を移転することができます。受寄(倉庫事業者)の知らないところで寄託物品が売買されて所有者が変わることになるので、所有者変更の際の事前通知などのルールを寄託契約書で定めておきます。倉庫証券を発行する倉庫事業者は、標準倉庫寄託約款(甲)を使用します。甲約款第25条では、保管料が適正に支払われていない場合には、倉庫証券所持者であっても物品の出庫を拒むことができるとされています。これは倉庫証券を発行しない場合の乙約款でも第22条で同様の規定があります。
倉庫証券は有価証券ですので、紛失しないように注意しなければなりません。通常、紛失等で再発行する場合は、寄託物品と同価額の金銭を供託しなければ発行してもらえません。受寄(倉庫事業者)側も物品の内容を確認しないまま、寄託者の情報を鵜呑みにして発行してしまうと、倉庫証券が第3者に譲渡されると、その記載内容どおりの物品を引き渡さなければならない(善意の第3者に対抗できない)ので物品の受寄する際にしっかりと確認することが必要です。
目次に戻る
13.マルチテナント倉庫とビルド・トゥ・スーツ倉庫
昨今、高速道路のインターチェンジ付近に大手不動産デベロッパー、外資系不動産デベロッパーが大型倉庫を建設し入居企業を募集しています。これらのデベロッパーが建設する倉庫に入居する場合は2つのパターンがあります。
1つめは、マルチテナント倉庫です。マルチテナント倉庫は、1棟の倉庫を複数のテナントが賃貸し共有する倉庫のことをいいます。どのようなテナントでも使い勝手のよい標準的な倉庫になっており、トラックが各階まで上がって積込み・積み降ろしをそのフロアーごとに行うことができるランプウエイ型倉庫や倉庫の保管面積を最大化し、1階で積込み・積み降ろしができるようにエレベーター、垂直搬送機を備えたBOX型倉庫が代表的な例です。BOX型の場合は、1階の荷捌き場(倉庫の1/4のスペース)と4階の保管場所(倉庫全スペース)といった賃借形態をとるため、エレベーターや垂直搬送機を専用に使用できるよう停止階を1階と4階(2階と3階は停止しないよう)に設定して使います。
もう1つは、ビルド・トゥ・スーツ倉庫です。ビルド・トゥ・スーツ倉庫は、いわゆるオーダーメイド型の倉庫のことで、デベロッパーがあらかじめ入居する企業の要望に沿って倉庫を建築し、1棟まるごと賃借する形式の倉庫のことをいいます。マルチテナント倉庫では、ほとんどが高床式倉庫ですが、重量物や容積の大きい物品を保管する場合には、フォークリフトでの作業が中心になるため、低床式倉庫のほうが使い勝手がいい場合もあります。この場合は、設計段階から低床式倉庫で建設してもらいます。1社で1棟賃借するため、1階で集中して積込み・積み降ろしを行います。保管する商品を2階以上に上げるための、エレベーター、垂直搬送機の数、加えて床過重や天井高を何メートルにするかなどの倉庫の仕様をデベロッパーと打合せしながら決めていくことができます。このように建設する前段階から倉庫の仕様打合せを行いますので、入居まで2年以上かかります。ビルド・トゥ・スーツ倉庫を賃借する場合は、長期的な倉庫移転計画をたてて進めていかなければなりません。ビルド・トゥ・スーツ倉庫は、テナント企業の要望に沿って建設されるため、長期間の賃借が条件となります。場合によっては、10年から20年の長期賃借契約を締結することもあり事業変化のリスクも織り込んでおかなければなりません。
冷蔵倉庫(冷凍倉庫)は、従来、ビルド・トゥ・スーツ倉庫で建設してもらって借りるしか選択肢がありませんでしたが、近年では冷凍食品需要が大きくなり、大手のデベロッパーで複数の企業が入居することができるマルチテナント倉庫を建設するところが出てきています。
・冷凍倉庫・冷蔵倉庫
目次に戻る
14.倉庫管理主任者
倉庫管理主任者は平成14年(2002年)の倉庫業法改正により設けられた資格です。倉庫業の登録を受けた事業者は倉庫管理主任者を選任し、国土交通省令の定める倉庫管理に関する業務を行わせなければなりません。
①倉庫管理主任者の業務内容
・倉庫における火災の防止その他倉庫の施設の管理
・倉庫管理業務の適正な運営の確保
・労働災害の防止
・上記3項目に関して現場従業員に研修を実施
②倉庫管理主任者に選定されるための要件(下記のうち1つを満たす必要があります)
・倉庫の管理業務に関して2年以上の監督的実務経験もしくは3年以上の実務経験を有する者
・実務経験がない場合は、倉庫協会が主催する倉庫管理主任者講習会(1日講習)を終了した者
・その他、国土交通大臣が上記と同等以上の知識及び能力があると認める者
③倉庫管理主任者の欠格事由
・1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わってから2年を経過しない者
・倉庫業法に基づく取消をうけてから、2年を経過しない者
・倉庫業に必要な倉庫管理主任者とは
目次に戻る
15.事業所税の減免
事業所税とは、1975年(昭和50年)に都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるために制定された目的税で、地方税法で定められた都市だけで課税される市町村税のことをいいます。概ね人口30万人以上の都市が事業所税を課しており全国で77の市町村(東京23区を含む)が事業所税課税の対象となります。
営業倉庫の減免率は倉庫の面積によって課税される資産割が3/4減免となります。従業員の人数によって課税される従業者割の減免適用はありません。例えば16500㎡(5000坪)の倉庫を使っている場合は、自家用倉庫の場合は、年額990万円の事業所税がかかります。これを営業倉庫に転換した場合は、1/4の税額になる(3/4減免される)ためかかる事業所税は247.5万円となり742.5万円節税になります。
・営業倉庫にすると安くなる事業所税とは
目次に戻る
16.当事務所は物流専門の行政書士事務所です
当事務所は、倉庫業の許認可、運送業の許認可やそれに伴う経営サポートを行う運輸・物流専門の行政書士事務所です。代表が物流業界で20年以上法務を担当してきた経験があり、倉庫業の経営を熟知していますので、単なる許認可の書類作成・申請だけではなく、許可申請時には倉庫業が取得可能かどうかの現場診断、倉庫業をとるための最低限の工事の仕様についてご提案をさせていただいております。許可取得後は、3か月ごとの事業報告書の作成、倉庫レイアウト設計、WMSなどの管理システムの導入のサポートまで請け負わさせていただいております。また、運輸局からの監査対応、事故が起こった際の事後対策等、倉庫業に係る日々の業務課題、経営をサポートできる専門事務所です。
目次に戻る
17.物流専門の当行政書士事務所に依頼するメリット
倉庫業などの物流分野を専門に取り扱っている当行政書士事務所に依頼するメリットは、次の4つです。
①一級建築士に依頼することなく倉庫業登録(許可)をすすめることができる
②事故防止の教育・行政処分対策がしっかりしている
③倉庫のレイアウト設計、システム導入の相談にのってもらえる
④運送業・利用運送業と組み合わせた収益率の高い事業へ伴走してもらうことができる
倉庫業の登録(許可)には、行政書士の申請業務以外に物流の知見、建築の知見、ファシリティマネジメントの知見が必要とされ高い専門性が求められます。事業者が独力で種々の事務手続きを完遂するのは至難の業です。倉庫業を専門に取り扱っている当行政書士に登録(許可)手続きをサポートさせていただきます。
17-①.一級建築士に依頼することなく倉庫業登録(許可)をすすめることができる
倉庫業の登録(許可)を受けようとする倉庫が営業倉庫として登録(許可)できる仕様になっているのかどうか、素人で判断することができません。そのため、専門家である一級建築士に依頼して営業倉庫が取得できるかどうかの審査をしてもらう形になります。また、建築関連図面が読めないため倉庫業登録(許可)のための申請資料が作成できない、運輸局からの質問にスムーズに回答することができないことがあります。これに対応するため、別途、一級建築士にサポートしてもらうことになってしまいます。一級建築士に依頼した場合は、それ相応の費用が発生します。当事務所では、建築の知識を持った行政書士が対応することができます。また、提携する一級建築士からの簡単な助言であれば、追加料金なしで進めることができるため、トータルの費用を考えると大きなメリットがあります。
17-②.事故防止の教育・行政処分対策がしっかりしている
物流専門の行政書士で長年、倉庫業をサポートしてきた当行政書士事務所では、開業後のサポートが充実しています。フォークリフトが縦横無尽に行きかう倉庫内の現場では、常に重大事故の危険性と隣り合わせです。許可を取って終わりではなく、許可後の安全対策、安全教育、5S教育までサポートを致します。
17-③.倉庫のレイアウト設計、システム導入の相談にのってもらえる
倉庫は保管面積が限られているため、ラックやネステナーを導入して保管面積を最大化して効率を高めていきます。その際どのようなレイアウト設計がいいのか、保管商品に基づいてアドバイスをさせていただきます。また、倉庫を管理するシステムWMS(Warehouse Management System)導入に関しても相談いただければ一緒に導入の検討をいたします。
17-④.運送業・利用運送業と組み合わせた収益率の高い事業へ伴走してもらうことができる
倉庫業を単独で行う場合、運送業を単独で行う場合に比べて、倉庫業+運送業の組み合わせを行うことによって、荷主の依頼を一貫して受けることができます。これに物流企画機能を併せ持つことによって3PL(Third Party Logistics)企業として高い収益をあげる事業体に成長することができます。
目次に戻る
18.大阪で倉庫業登録(許可)を取得するための流れ
ここからは、大阪で倉庫業登録(許可)を取得するまでの流れについて解説します。
18-①.倉庫業登録(許可)がとれる倉庫がどうかの診断
通常であれば、この工程はお客様側で一級建築士に依頼し倉庫業が取得できる倉庫の確認が取れたうえで行政書士に申請手続きを依頼します。当事務所では、建築図面の確認、現地確認の上、倉庫業がとれるかどうかの段階から関わります。近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)の審査基準に基づいて、施設の改修工事が必要になるケースもありその場合には適確なアドバイスをさせていただきます。
18-②.近畿運輸局 交通政策部(大阪府大阪市中央区)との折衝
倉庫業法及び倉庫業施行規則に基づく登録(許可)基準に加えて近畿運輸局 交通政策部(大阪府大阪市中央区)での審査基準もあるため、事前に準備する事項確認、申請から登録(許可)までのスケジュール確認を行います。倉庫業登録(許可)の場合は、大阪運輸支局(大阪府寝屋川市)が窓口ではなく、直接、近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)が申請窓口になります。
18-③.申請書類の提出と審査
近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)に申請書類提出後、書類審査が行われます。現地の実地審査はなく、登録(許可)は書類審査のみです。倉庫業登録(許可)後に非定例で近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)の現場確認・監査が行われます。
18-④.登録免許税の納付
近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)から登録(許可)内示とともに登録免許税の振込通知書を受領します。初めて倉庫業を登録(許可)をうける際の登録免許税は9万円で、その後、営業倉庫を追加する場合は1棟あたり3万円の登録免許税を支払います。
18-⑤.倉庫寄託約款・料金の届出
倉庫業の営業を開始する前に、倉庫寄託約款及び寄託料金表を近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)に届出を行います。運送業と異なり運賃タリフが存在しませんので、自社で策定した入庫料金、出庫料金、3期制による保管料を近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)に届け出ます。届出が完了しましたら倉庫業を開始することができます。
18-⑥.期末倉庫使用状況報告・受寄物入出庫高及び保管残高報告
倉庫業を開始後、4半期ごとに(3月、6月、9月、12月)期末倉庫使用状況報告及び受寄物入出庫高及び保管残高報告を近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)に対して行なわなければなりません。当事務所では、登録(許可)後のこの報告書の作成まで責任をもってサポートさせていただいております。初めて倉庫業を開始される方は、この実績報告の記入が煩雑なため近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)への実績報告サポートは大変好評を得ています。
目次に戻る
19.まとめ
本記事では、倉庫業登録(許可)ができるかどうかの建物要件、倉庫管理主任者などの人の要件、近畿運輸局(大阪府大阪市中央区)での書類審査など、大阪で倉庫業の登録(許可)許可を取得するまでの流れについて解説しました。ご覧いただいた通り、倉庫業登録(許可)を取得するまでは、いくつもハードルがあり、一筋縄にいきません。特に、申請書類を提出する前段の要件クリアには、倉庫業法以外にも建築やファシリティマネジメントの専門知識が必要で、多大な労力がかかります。
当事務所は、通常、一級建築士の仕事であり、一般の行政書士が介入しにくの建築関連の要件のクリアに向けたコンサルタントをいたします。場合によっては提携している一級建築士と連携して、倉庫業の登録(許可)ができるように進めて参りますので、倉庫業を始めようと考えておられる方は、ぜひ、大阪市城東区にある当事務所までご相談ください。
目次に戻る
20.お問い合わせ
倉庫業の登録(許可)取得に関してご不明なことやご相談がありましたら、お電話または下記のお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
①倉庫業の登録(許可)要件について詳しく聞きたい
②現在所有している倉庫で倉庫業の登録(許可)がとれるか建物診断をしてほしい
③確認済証や検査済証を紛失してしまったが登録(許可)ができるかどうか
④建築関係の図面はどの程度まで準備すればよいのか
⑤すぐに登録(許可)を取りたいがどのようなスケジュールで取得できるか など
また、倉庫業開業後の料金設定や労務管理、安全対策など経営全般について詳しく知りたいかたもお気軽にお問い合わせください。
目次に戻る
ページのトップに戻る
・プライバシーポリシー
関連記事
・倉庫業開業マニュアル
・倉庫業登録(許可)・営業倉庫登録(許可)
・保税蔵置場(保税倉庫)の許可 大阪税関・神戸税関管轄エリア
・寄託倉庫保管料金の3期制
・冷凍倉庫・冷蔵倉庫
・倉庫業に必要な倉庫管理主任者とは
・営業倉庫にすると安くなる事業所税とは
・トランクルーム
・危険品倉庫
・寄託と倉庫賃貸借の違い(倉庫業の登録が必要な場合)
・寄託倉庫保管料金の3期制