③物流情報(コンプライアンス)

物流革新緊急パッケージ


最終更新日 2023年10月14日



2023年9月28日(木)に岸田文雄首相は、斉藤鉄夫国土交通大臣らと共に東京都大田区平和島の物流会社、株式会社浅井を訪問し、トラック運転手の時間外労働に上限が導入され人手不足が懸念される物流2024年問題に関して意見交換を行いました。その後の会見で、来週閣僚会議を開いて物流革新緊急パッケージを取りまとめる方針が示され、10月6日(金)の閣僚会議で物流革新緊急パッケージが発表されました。この物流革新緊急パッケージとはどのようなものなのか、その内容について解説していきます。


1.我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議
今回の物流革新緊急パッケージを決定したのが、我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議です。この閣僚会議は、岸田首相肝いりで2023年3月31日に第1回が開催され、荷主、物流事業者、一般消費者が一体となって我が国の物流を支える環境整備を国土交通省、経済産業省、農林水産省などの行政機関が連携して政府一体となって総合的な検討をしていくとしています。NX総研(旧日通総研)の調査では、時間外労働規制とトラックドライバーの不足により2030年には物流全体の34.1%(9.4億トン)が運べなくなるといわれています。この課題を物流事業者だけで解決するのは難しく、荷主や一般消費者、政府も巻き込んで、物流危機を未然に防ぐために法整備を含めて大胆な対応をしていくとしています。6月2日の第2回会議で物流革新に向けた政策パッケージが発表され、今回10月6日の第3回会議で物流革新緊急パッケージが発表されるに至っています。

・我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議
・物流革新に向けた政策パッケージ

 

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2.物流革新に向けた政策パッケージ
6月に発表された物流改革に向けた政策パッケージでは、次のような内容が盛り込まれています。
①発荷主企業、物流事業者、着荷主企業が連携・協働して発注形態、配送納期など商慣行の見直しによる物流負荷の軽減
②物流GX、物流DXの推進、トラックバース予約システムなどの即効性のある設備投資、パレットサイズの規格など物流標準化の推進
③役員クラスの物流担当役を設置させ、荷主企業の経営層の意識改革を図る施策、一般消費者がゆとりをもった配送日時を指定するよう行動変容を促し、再配達を半減する施策などです。
物流革新に向けた政策パッケージはやや総括的な内容でしたが、今回の物流革新緊急パッケージでは、岸田首相の発言にもあるように即効性の高い取り組みが盛り込まれています。

・物流革新に向けた政策パッケージ

 

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3.物流革新緊急パッケージ

3-①.物流の効率化その(1)
即効性のある設備投資・物流DXの推進として、①自動フォークリフト、AGV(Automated guided vehicle)、ピッキングロボットなど物流施設の自動化・機械化の推進、②港湾物流手続を電子化し関係者間でデータを連携することによる物流手続の効率化、③自動運転を前提とした道路の渋滞情報、落下物情報を自動運転者に情報提供する路車協調システムの実証実験などが盛り込まれています。
②トラック輸送中心の物流から鉄道輸送、内航海運輸送に分散し、10年で倍増させる大胆なモーダルシフトに取組むとしています。このために現在、ゴトコンと呼ばれる12フィートコンテナ中心のコンテナ輸送を大型化し、31フィートコンテナ、40フィートコンテナを利用できるようにしていきます。
③テールゲートリフター等、荷役作業の負担軽減に資する機器等の導入強化によるトラックドライバーの荷役作業の軽減や、若者への大型免許、けん引免許等の免許取得支援によるトラックドライバーの労働負担の軽減、担い手の多様化の推進を行っていきます。
モーダルシフト拡充のための港湾整備、高規格道路整備、SA・PAにおける大型トラック専用駐車スペースの拡充による物流拠点の機能強化、共同集荷、共同配送など特に農産品の流通網強化による物流ネットワーク形成の支援を行うとしています。
3-①.物流の効率化その(2)
⑤標準仕様のパレット導入や物流データの標準化・連携の促進
⑥燃油価格高騰等を踏まえた物流GXの推進(物流拠点の脱炭素化、車両のEV化等)
⑦高速道路料金の大口・多頻度割引の拡充措置の継続
⑧道路情報の電子化の推進等による特殊車両通行制度の利便性向上
3-②.荷主・一般消費者の行動変容
一般消費者はスマートフォンでコンビニ等での受取やゆとりある配送方法を選択できるようにし、これによってポイント還元を行います。ポイント還元を通じた一般消費者の行動変容を促す仕組みの社会実験を行い、現在12%の再配達率を6%まで半減するとしています。
3-③.商慣行の見直し
①2023年7月に創設されたトラックGメンによる荷主・元請事業者の監視体制を強化し、11月・12月を集中監視月間とします。
②燃料価格等の高騰の状況を踏まえて、令和2年の標準的な運賃を引き上げ、荷待ち・荷役作業等の輸送以外のサービスの対価や多重下請になっている物流取引において、下請に発注する際の手数料の水準の提示を行います。
③大手荷主や大手物流事業者の荷待ち時間削減に向けた計画作成の義務付け、大手荷主において役員クラスの物流責任者の義務付け、多重下請構造の是正に向けて実運送体制管理簿の作成などを義務付ける法案を次期通常国会に提出します。
・我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議
・物流革新に向けた政策パッケージ
・トラックGメン対応支援窓口を開設しました


 

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4.まとめ
宅配荷物をゆとりある納期を指定した場合には、ポイントを付与したり、トラックGメンの具体的施策が出されたこと、次期通常国会で関連法案が提出されること、設備投資・物流DXの推進などかなり具体的につっこんだ施策になっています。10月中にまとめられる総合経済対策に多くの内容が盛り込まれると思います。宅配ポイントの財源は、税金で賄われるのか、宅配会社の持出しになるのか、着荷主にとってメリットの薄い荷受け倉庫での設備投資をどのように進めていくのかなど今後、議論が必要になってくるような内容もあるため、関係者間での調整が早急に必要になってきます。

・我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議
・物流革新に向けた政策パッケージ
・トラックGメン対応支援窓口を開設しました


 

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5.お知らせ

当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。