③物流情報(コンプライアンス)

トラックGメン集中監視月間


最終更新日 2023年12月11日


トラックGメン集中監視月間
岸田文雄総理の肝いりで行われた我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議により2023年7月に創設されたトラックGメンですが、従来の体制から調査員を80名から162名へと倍増し、トラック事業者への積極的な情報収集や、貨物自動車運送事業法に基づく荷主企業や元請運送事業者への働きかけなどを全国で実施しています。国土交通省では、11月・12月をトラックGメンによる荷主等への監視体制をさらに強化する集中監視月間と位置付け、悪質な荷主等に対して、要請、勧告・公表を実施し、監視を強化するとしています。

1.そもそもトラックGメンとは


Gメンとは
下請法の監視で大きな実績をあげている下請Gメンに倣って、国土交通省内に2023年7月に創設された組織です。2024年4月からのドライバーの時間外労働時間の規制(物流業界の2024年問題)が迫る中、運送事業者の経営の持続、ドライバーの確保が喫緊の課題になっています。
トラックGメンは、運送事業者へ業務を委託する立場である荷主や元請運送事業者等への監視体制を強化する職務を持っています。これらの事業所を直接訪問、調査を行い、長時間の荷待ちや契約にない附帯作業を行わせていた場合には、勧告・公表、要請、働きかけをおこなうことができます。また、厚生労働省、公正取引委員会、中小企業庁と連携し、下請法・物流特殊指定・独占禁止法に該当する優越的地位の濫用、原材料や労務費の値上がり分の価格転嫁を拒否するなどの買いたたき行為、契約した金額から委託代金を減額して支払う減額行為についてもトラックGメンが荷主・元請運送事業者に対して勧告等を行います。
 

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2.トラック運送事業者への調査


トラック運送事業者への調査
国土交通省は2023年9月から10月にかけてトラック運送事業者に違反原因行為を行っている業種、違反原因行為についてアンケート調査を行い、10,629件の回答を得ました。

①違反原因行為を行っている疑いのある 荷主の分類


運送事業者から見て、どこからの依頼が違反原因行為の疑いがあるかどうかという問いに対する回答です。荷主からの依頼と回答した割合が全体の約半分の46%、着荷主が21%、元受け運送事業者が28%、その他倉庫事業者などが5%という結果でした。運送業界は多重下請構造が一般的で、荷主と運送事業者が直接つながっていないと思われていましたが、意外と、荷主から直接受託している運送事業者が多かったです。但し、アンケートの回答率が17%ですので、荷主と直接取引しないような中小零細運送事業者は回答をしていない可能性もあります。着荷主と回答した割合が21%です。これは、荷主との契約にない、附帯作業を強要されたり、長時間の待ち時間があったりしたケースです。着荷主と回答していなくても、荷主のお客様である着荷主の要求を荷主契約で強要されるケースもありますので、この数字を見ただけでは、実際にどのようになっているのかがわかりにくいです。
 
違反行為荷主分類
 

②違反原因行為の割合


違反原因行為の割合では、長時間の荷待ちが38%、運賃・料金の不当な据置きが22%、契約にない附帯業務を強要されるのが20%とこの3項目で全体の80%を占めています。また、異常気象時の運送依頼が9%あるのも特筆すべきことです。台風などの異常気象時の配送は、ドライバーの命の危険性もあるため国土交通省で台風時の輸送中止判断の目安を定めて、30mm/時以上の降雨、20m/秒の暴風時には、輸送を中止することも検討すべきだとしています。
 
長時間の荷待ち
 

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3.トラックGメン8月から10月の活動実績


トラックGメン活動実績
政府の肝いりで創設され、人員も倍増されたため8月以降、Gメンが積極的に荷主・元請運送事業者を訪問し、調査を行っています。令和2年から令和4年の3年間で要請3件、働きかけ76件であったのに対し、8月要請1件、働きかけ57件、9月要請4件、働きかけ63件、10月要請1件、働きかけ46件の3か月合計で要請6件、働きかけ166件と過去3年間の働きかけ件数の倍以上になっています。働きかけは罰則や公表はありませんが、大手荷主企業は信用を失墜する行為となりますので、国からの働きかけ要請には、すぐに改善に動くことになります。結果として、運送事業者の待遇が改善されていくことになります。
 
トラックGメンの活動実績
 

・トラックGメン対応支援窓口を開設しました

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4.要請をおこなった事例


要請を行った事例
今回、国土交通省は荷主、着荷主、元請運送事業者に対して要請を行った事例を10件公開しています。10件中、長時間の荷待ちが7件で中には10時間を超える荷待ちや3~4時間の荷待ちが常態化している等の例がありました。そのほかの3件は、契約にない附帯作業、過積載の強要、無理な配送依頼でした。
 

・トラックGメン対応支援窓口を開設しました

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5.11月・12月のトラックGメン集中監視月間


トラックGメン集中監視月間②
国土交通省は11月・12月をトラックGメン集中監視月間と位置づけ、トラック運送事業者からの10,629件のアンケート回答をもとに関係省庁と連携して、悪質な荷主・元請事業者に対し要請、勧告・公表を行い、監視を強化するとしています。これにより、ドライバーの労働条件の改善や取引適正化に向けた取組の加速化が図られることになります。
具体的には、
①悪質な荷主に対しては、要請や働きかけにとどまらず、より厳しい勧告・公表を発するとしています。
②厚生労働省の荷主特別対策担当官や中小企業庁の下請Gメン等と連携し、荷主やトラック事業者への合同ヒアリングを実施するとしています。
③全国のトラック事業者や労働組合、地方適正化事業実施機関からの悪質な荷主等に係る情報収集を強化するとしています。
 

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6.個別懸案の対策は整った。では次は?


では次は
このようなトラックGメンの活動で悪質で違反行為が常態化している荷主に対しての対応は一定の成果を上げていると思われます。このトラックGメンの活動を続けつつも、国による規制を強化したり、急いで受け取る必要のない荷物については、消費者がよりゆとりを持った配送日時を指定するなど、荷主や消費者の行動変容を促すような啓発活動をおこなっていくことが次の施策として重要です。

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7.お知らせ


お知らせ④
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。

・行政書士 楠本浩一事務所のホームページTOP

 

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。