①物流情報(貨物運送)

繁忙期でトラックが足りないときの緊急的対応


最終更新日 2023年12月7日


繁忙期でトラックが足りないときの緊急的対応
12月は、お歳暮需要クリスマスプレゼント需要が旺盛なのに加えて、最近では、ふるさと納税の駆け込みに伴う返礼品需要が加わり、運送業界として一番の繁忙期にあたります。自社の所有している車両で運びきれない場合は、同業の貨物運送事業者に再委託を行います。近年では、さらに再委託、再々委託が行われており多重下請構造が問題になっていますが、この最需要期を乗り切るために、配車係はあらゆる手を使ってトラックを確保しています。万策つきてどうしようもなくなった場合に最後の手段としての緊急的対応を紹介いたします。

1.荷主からの依頼を断れないトラック運送事業者

断れない
製造業などの荷主企業の出荷日は、工場での生産数量に合わせてコンピュータシステムで自動回答しています。繁忙期には工場でアルバイトを増やすなどして通常期の2割増、3割増の生産を行います。12月24日のクリスマスケーキの生産を思い浮かべていただければわかりやすいと思います。この納期回答は、生産の都合を考慮して行いほとんどの荷主企業の納期回答システムにはトラック運送事業者の事情は考慮されていません。その結果、お客さんに約束しており、信用問題にかかわるから何とかして運んでくれ、となる訳です。この繁忙期需要に対応するために、通常の120%、130%のトラック台数を確保するためにトラック運送事業者の配車係は、手当たり次第に同業他社に電話をかけて、空いているトラックを探してます。最近では、人的繋がりだけではトラックが確保できないため、マッチングアプリも併用しながらトラック台数の確保に努めています。
 

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2.ふるさと納税の返礼品急増による冷凍車需要への対応

ふるさと納税
年末になると、ふるさと納税サイトのCMがやたら増えてくるのは、12月がふるさと納税の最終駆け込み月だからです。これに伴って12月にふるさと納税を行った方々への返礼品の発送需要が発生します。返礼品は牛肉やカニ、いくら等の海産品が主流でどれも冷凍品のため冷凍車で輸送しなければなりません。ただでさえ、冷凍車の台数が少ないうえに、北海道や九州から首都圏や関西地方へ運ぶ長距離の冷凍車の確保することが至難の業になっています。
 

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3.繁忙期有償運送通達

繁忙期有償運送通達
もともと、お中元、お歳暮の文化がありこの時期は配送量が通常の時期に比べて大幅に増えることから、国土交通省は、昭和60年(1975年)に年末年始及び夏季等繁忙期におけるトラック輸送対策について(昭和60年11月14日貨陸第197号、改正平成15年2月14日国自貨第91号)の通達を出して、夏期(6月15日から8月12日)、秋期(8月13日から11月9日)、年末(11月10日から12月31日)は、許可を得た貨物運送事業者が、レンタカーなどの自家用自動車(いわゆる白ナンバー車)を使用することを例外的に認めていました。
 

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4.3月の引越し需要

3月の引越し需要
上記のようにお中元、お歳暮の時期は、繁忙期有償運送通達によって条件付きながら白ナンバー車(有償運送実施車両)を使用することが認められていました。3月を年度末とする多くの企業の転勤や、卒業・新入学といった住居を移転する引越しの最需要期が3月末にあります。従来の繁忙期有償運送通達では、年度末である3月末は対象外で白ナンバー車が使用できなかったため引越し事業者に大きな混乱を引き落としていました。4月1日の転勤辞令を受けたサラリーマンが引越し業者を手配できなかったため、新しい勤務地で2週間ホテル暮らしを余儀なくされている等の事例も多くありました。
 

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5.繁忙期のトラック輸送対策の一部改正

繁忙期通達の一部改正
上記のような貨物運送事業の繁忙期を取り巻く環境を考慮して、令和3年(2021年)8月6日国自貨第52号の2によって、年末年始及び夏季等繁忙期におけるトラック輸送対策について(繁忙期有償運送通達)が改正されました。改正の内容は以下の通りとなります。
 
①引越し需要にも対応し、夏期、秋期、年末しかなかった繁忙期に春期が追加されました。春期は、3月10日から3月31日、4月20日から4月30日、5月6日から5月15日の3タームになり、3月の年度末需要からゴールデンウイークを除いた5月中旬までをカバーするかたちになります。
 
②許可申請は、貨物運送事業者から運輸支局へ申請するものとし、白ナンバートラックの事業者からの直接申請は認められていません。貨物運送事業者から運輸支局への申請は、年初に1回(年度の始めではない)行えばよく、翌年の2月までのその年の実績報告書を提出します。実績報告がされていなければ、翌年の許可を取得することができなくなります。
 
③白ナンバー車(有償運送実施車両)の使用台数は、その営業所で保有する事業用トラック(緑ナンバー車)の台数以下の車両しか認められません。例えば、事業用トラックを10台所有する営業所であれば、有償運送実施車両は10台以下までしか認められないということです。
 
④繁忙期は、春期、夏期、秋期、年末の約235日ありますが、それらすべての期間で白ナンバー車(有償運送実施車両)を使用することはできず、1台あたり90日を限度として使用となります。つまり恒常的に繁忙期すべてを白ナンバー車(有償運送実施車両)で使えるような逃げ道はなく、慢性的に車両が不足しているのであれば事業用車両の増車手続をとりなさい、ということです。
 
⑤1台当たり年間90日を超えて白ナンバー車(有償運送実施車両)を使用したり、悪質な違反行為又は社会的影響のある事故を引き起 こした場合等には、翌年の許可が受けられなくなるペナルティ制度も設けられています。
 

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6.まとめ

まとめ③
どこにあたってもトラックを探すことができないような繁忙期にはこの繁忙期有償運送通達の制度をうまく利用することによって大きなメリットがあります。細部にわたるルールをよく理解して正しい利用を行わなければ、翌年利用できないばかりではなく、行政処分の対象になってしまう可能性もあります。
当事務所では、運送事業者の白ナンバー車(有償運送実施車両)の許認可申請の代行を承っております。また、許認可を受けた運送事業者の皆様に正しい利用方法のレクチャーも行っています。本制度について興味を持たれた方や詳しい内容をお聞きしたい方は、当事務所までお問い合わせをお願いいたします。
 

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7.お知らせ

お知らせ③
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
 

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楠本浩一

楠本浩一

1965年8月兵庫県神戸市生まれ。同志社大学卒業。パナソニック㈱及び日本通運との合弁会社であるパナソニック物流㈱(パナソニック52%、日本通運48%の合弁会社、現パナソニックオペレーショナルエクセレンス㈱)で20年以上物流法務を担当し、現場経験を踏んできた実績があります。