③物流情報(コンプライアンス)
トラックの荷待ち時間が解消されない理由
トラック運転手の場合、労働基準法や改善基準告示において、勤務時間以外に拘束時間という縛りを受けます。2024年からの時間外労働時間の上限規制が課せられるのに加えて拘束時間を規制する改善基準告示も改正され月間の拘束時間が293時間から284時間への月に9時間少なくなります。この待機時間の問題を大きくしているのが、荷主の工場、配送センターなどの倉庫における荷待ち時間です。予定通りの18時に工場へ向かったが生産が間に合っておらず、2時間待たされて積込み開始が20時からになった。7時着の予定表をもらって着荷主の倉庫に到着したが、順番待ちのトラックが列をなしており、結局、倉庫のヤードに入れたのが2時間後の9時であった。などの荷待ち時間が日常茶飯事に起きています。なぜ、一向に待機時間の問題が解消されないのでしょうか。
1.待機時間の原因は1つだけではない
これだけ2024年問題が大きく叫ばれているにもかかわらず一向に待機時間が解消されないのは、原因が1つや2つではない。ということです。多数の原因が複雑に絡み合ってもつれた糸のようになっているので、かなりの時間と工数をかけてひも解いていなかいとこの問題を解決することができないのです。待機時間の諸問題をこれからいくつか紹介していきますが、これらを順を追って解決していくことができれば、今よりも随分、待機時間の解消ができるのではないかと考えています。1つずつ検証していただければと思います。
・荷待ち・荷役作業等時間原則2時間以内ル-ル
・トラックの待機料金の目安は?いくら払えばいいのか?
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2.着荷主側に経済的な負担がかかるが、着荷主のメリットはほとんどない
待機時間の解消には、トラックバース予約システムを導入してトラックの荷降ろし時間を予め予約し、分散させることによって画期的に解決します。現状、それができていない倉庫では、来た者順に積み降ろしができるようになっています。そのため早朝からトラックが列をなして並ぶため、長時間の待機時間を強いられます。着荷主倉庫が投資をしてトラックバース予約システムを導入したとしても、自社の倉庫業務が効率化されるわけではなく、メリットはほとんどありません。トラックドライバーのみ恩恵を受ける形になります。自社間での輸送やグループ会社間の輸送など、連結で見た場合にメリットがある倉庫については、既に、このような予約システムが導入され、その予約時間どおりにトラックが到着して荷降ろしをしています。これに対して、港湾の輸出用倉庫やスーパーなどの流通センターでは、不特定多数の荷主や運送事業者が多品種の商品を納品しています。このような倉庫では、トラックバース予約システムを導入したとしても、初めて納品する運送事業者はそのルールを知らないことが多く、予約したトラックと予約していないトラックが混在することになります。歯医者の予約と同じで、予約していないトラックを適度のタイミングでトラックバースに入れなければならなくなるので、その結果、定刻で予約していたトラックが後ろ倒しされて待ち時間が増えていきます。予約なしで来るトラックが多ければ多いほど、きっちりと予約をしていたトラックがどんどん待機して順番待ちをしなければならなくなってしまいます。トラックバース予約システムを導入することで一定の効果は得られるのですが、その投資費用をどこが負担するのか、着荷主、発荷主、運送事業者でしっかりと取り決めをしなければなりません。また、そのようなシステムの導入後は、初めて配送する運送事業者にも周知徹底するようなしくみをつくっておかなければなりません。
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3.着荷主倉庫での多すぎるルール
①安全靴を履いていなければ構内への立入禁止。②フォークリフトの免許証を携帯していなければ荷降ろし時にフォークリフトを貸与してもらえない。③独自で商品ごとに受付時間を設定しているためその時間帯まで荷降ろしできない、ドライバーにはそのことが事前に伝えられていない。④箱が雨に濡れたなど、不備があった場合に持ち帰りを強要される。⑤複数の伝票があるときは、クリップ止めにする、送り状、納品書、受領書以外は抜き取ってから提出する。などなど、あげればきりがありませんが、このように倉庫ごとに細かなルールが定められています。毎日、定期で運行しているドライバーであればルールを熟知して対応することができますが、初見でこれらの倉庫へ配送するドライバーは何かしら対応できない条件に該当し、最悪の場合は荷降ろしできずに、持ち帰りになってしまうこともあるようです。
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4.パレット化されないバラ積み商品
最近では、随分少なくなりましたが、トラックへの積載量を最大化するためにわざわざパレットを崩してトラックに積込み、着荷主倉庫で運転手がパレットに積み替えるといった形態もいまだに残っています。ダンボール箱ではなく異形物などの場合は、パレット化が難しくバラ積みになってしまいます。2023年3月に国土交通省が公表したデータによると社外の施設へのパレット輸送は74.7%と高い比率になっていますが。レンタルパレットは、そのまま荷降ろしすることができずバラ積みと同じ扱いになってしまいます。この問題については、ICチップを付けたパレットによる共同利用・共同回収システムを拡大するよう、国土交通省も積極的に推進しています。
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5.連絡手段はFAXが主体
着荷主が委託している倉庫は、不特定多数の運送事業者、荷主企業との連絡手段としてFAXを用いています。頻度高く取引している事業者であれば、担当者の電子メールに納品する商品明細を貼付して送付可能ですが、初めて取引する運送事業者や荷主であれば担当者の電子メールアドレスも把握できていないため、FAXが主体の連絡手段となります。大量のFAXが着荷主の倉庫事務所に送信されるため、書類の紛失や文字が小さすぎで読取不可能なFAXも見られます。理想をいえば、取引先とは、自社で使用しているシステム間でEDI(Electronic Data Interchange 電子データ交換)が行われることですが、せめて、電子メールを利用した連絡手段を推進し、FAXを廃止していくことをしなければドライバーの負担軽減につながっていかないです。
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6.あいまいな車上渡し条件
契約書や仕様書上に車上渡しと記載されてあっても、物流業界の商習慣が軒先渡しもしくは置き場渡しなので、運んだ商品は、ドライバー1人ですべて着荷主の倉庫の軒先に1つ1つ降ろさなければなりません。大型トラックやトレーラーの場合は、積み降ろしだけでも1時間程度かかることがあります。手積みで降ろせない商品は、倉庫にあるフォークリフトを借りて降ろすことになります。商品がすべて倉庫の軒先に降ろされ、検品が終わった後に、倉庫の従業員が保管スペースに格納していきます。輸出入の海上コンテナのみは例外でドライバーが積込み積み降ろしを行うことができないため、倉庫の作業員が積み降ろしを行います。これに対して、同じコンテナでも国内輸送のコンテナの場合は、ドライバー1人で積み降ろしを行います。積み降ろし作業のない運送形態はダンプカーやパワーゲート車付の台車での積み降ろしくらいでそれ以外は、ほとんどドライバー1人で積み降ろし作業が行われています。
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7.附帯作業
トラックの待機時間と並行して大きな問題となっているのが、荷主企業と契約している以外の附帯作業が着荷主の倉庫側で行われていることです。決して、着荷主の倉庫側が無理難題を押しつけている訳ではなく、着荷主倉庫側で当然行わなければならない倉庫での附帯作業が、発荷主と運送事業者の間の契約に盛り込まれていないということです。例えば、着荷主倉庫では、専用パレットへの積み降ろし、数量検品作業、パレット積みされた商品へのストレッチフイルム巻きなどをドライバーにやってもらわないとその後の作業ができないようなシステムになっている場合があります。これが着荷主事業者から発荷主事業者に事前に伝えられていて、その作業も含めた商品1つ当りの販売価格が設定され、それを元に運送事業者に依頼するコミュニケーションが充分にとられているような条件設定を行っていくことが望まれます。
・「運賃」・「料金」の収受ルールの変更(標準貨物自動車運送約款の改正)
・トラックの待機料金の目安は?いくら払えばいいのか?
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8.責任の所在があいまい
国土交通省や経済産業省が主催する持続可能な物流の実現に向けた検討会の第5回検討会(令和5年1月17日)の中で着荷主の代表である全国スーパーマーケット協会、日本小売業協会、日本チェーンストア協会がサプライチェーンのパワーは川下の小売りが強い。物流危機に対する荷主企業の理解が不十分という内容に苦言を呈しています。着荷主企業だけが、悪者にされているのはいかがなものか?ということです。トラックドライバーの長時間労働、低賃金を物流事業者独自で解決できないために問題になっていますが、その原因が着荷主にあるというのは、短絡的な見方であって、実際にはいろいろな要因が複雑にからみあってドライバーにしわ寄せがきているということです。一言で着荷主といっても着荷主事業者が倉庫の運営を別の事業者に委託しているケースが多く、倉庫側が定めている詳細の荷降ろしルールを着荷主事業者も把握していない場合があります。トラックドライバーを悩ます大きな問題として荷降ろしできずに持ち帰りする場合があります。工場の荷受けの場合は、品質保証の担当部門の連携しながら、特別採用(特採)扱いで納品を許可することができます。着荷主の倉庫事業者に特別採用の権限が与えられておらず、100%基準を満たしていないと荷受け拒否=持ち帰りを指示するしかなくなってしまいます。また、持ち帰りによる欠品が発生したとしても困るのは着荷主側の購買部門であって、倉庫側は欠品によるペナルティがありません。欠品よりも破損商品を荷受けしたほうが責任を問われるので、部門の責任所在の関係で、何とかして欠品しないように積み降ろしをしてもらおう。という形にはならないのです。
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9.着荷主には改善提案を出せない
発荷主から見ると着荷主は自社の商品を購入してくれるお客様にあたります。商品の仕様、品質、価格などのメインの項目がお客様との交渉事項の中心で物流の詳細条件などは、商談の際にほとんど話題にされません。発荷主側の営業担当も下手に物流面で細かい改善事項をお願いすると、価格面での値下げを要求されるかも知れません。そのような事態を避けるためになかなか、発荷主の営業から着荷主の購買部門に対して物流面での細かな改善事項の提案がされることはほとんどありません。現場が困っているのは、発荷主の営業も分かっているのですが、多くの注文を取ってくるのが仕事の営業としては、なかなか自社側のマイナス面をお客様にお願いするのは、言いづらい部分があります。これの繰り返しで、問題点はわかっているが、延々として問題点が解決されないジレンマがあります。
・トラックの待機料金の目安は?いくら払えばいいのか?
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10.いかがでしたでしょうか?
ドライバー⇒運送事業者⇒元請運送事業者⇒発荷主の物流部門⇒発荷主の営業部門⇒着荷主の購買部門⇒着荷主の物流部門⇒倉庫事業者⇒倉庫の荷役作業委託会社⇒現場の社員と多くの部門にまたがって調整をしていかなければなりません。ドライバーの悲痛な叫びがこれらの過程で消されてしまっているのが実情かと思います。これらの部門を巻き込んで横断する組織を立ち上げて1つ1つ課題を解決していかなければなりません。それを踏まえて物流革新に向けた政策パッケージや物流革新緊急パッケージでは、荷主に企業の役員クラスの物流担当責任者の設置を義務付け、商慣行を見直すための法制度を整備する内容が盛り込まれています。国の指導のもと、発荷主・着荷主・物流事業者が一体となって解決することによってこの問題は必ずいい方向に進むと考えています。荷待ち時間、附帯作業の問題は、複数の課題が何重にも絡み合って現在の状況になっています。これをやればすべてが解決するという方策はなく、1つ1つの課題を関係者で現状を把握し、真摯になって話し合って解決していくしか方法はないのです。
・トラックの待機料金の目安は?いくら払えばいいのか?
・荷待ち・荷役作業等時間原則2時間以内ル-ル
・物流革新緊急パッケージ
・物流革新に向けた政策パッケージ
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11.お知らせ
当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。運送業・倉庫業に興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせをお願いいたします。許認可取得だけでなく、開業後の業務運営や運賃設定、運賃交渉のやり方、元請運送事業者の紹介、法律で定められた書類作成の支援などをサポートさせて頂きます。
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