第二種貨物利用運送事業(海運・航空・鉄道)

第二種貨物利用運送事業(海運・航空・鉄道)

貨物利用運送事業には、第一種と第二種があります。
これから貨物利用運送事業を始めようとされる方が、やりたい事業が第一種なのか第二種なのかを判断するために両者の違いを理解しておかなければなりません。

また、既に第一種を登録されている運送事業者がこれから輸送モードを増やす際に第二種の許可が必要かどうかの判断も同様に正しい理解が必要です。このよう判断を行うにあたって必要な、第二種貨物利用運送事業の基礎を現場目線でわかりやすく説明しています。

目次

1.第二種貨物利用運送事業許可(海運・航空・鉄道)を取りたい方

当事務所は大阪府大阪市にある運輸・物流専門の行政書士事務所です。

近畿運輸局の管轄エリアである大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県の関西地区を中心に運送業許可、運送業の経営・コンプライアンス課題に関する支援をさせていただいております。第二種貨物利用運送(海運・航空・鉄道)の許可取得を検討の方は、お気軽にご相談ください。

2.貨物利用運送事業は水屋と呼ばれています

貨物利用運送事業のことを運送業界用語で水屋と呼ばれています。水屋の由来は、水を売り歩く商人が飛脚などへの荷物の取次を行っていたことからそのように呼ばれるようになりました。(物流用語辞典より)

長く運送業界におられる方はご存じかと思いますが、その昔、12月や3月の運送繁忙期になるとトラックが足りなくなるので、水屋の力を借りないとトラックを集めることができないといわれていました。

最近では異業種から貨物利用運送事業に参入するケースも多く、また別の業界から運送業界に転職された方は、水屋という言葉をご存知ない方も多いです。
○○屋という呼び方は、一般的に店舗を持って物販をしている業態に対して使用する呼称であり、貨物利用運送事業は事務所を使って営業をする業態ですので少し異なるのではないかと思っています。

当事務所では、業界特有の用語である水屋という表現を使わずに、貨物利用運送事業(略して利用運送)という用語を使っています。

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3.貨物利用運送事業法での定義

貨物利用運送事業法第2条6項から8項で第一種貨物利用運送事業及び第二種貨物利用運送事業について定義されています。

6項:貨物利用運送事業には、第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業の2種類あります。
7項:第一種貨物利用運送事業とは、第二種貨物利用運送事業以外の、利用運送を行うことをいいます。
8項:第二種貨物利用運送事業とは、船舶(海運)・航空・鉄道の利用運送と集荷・配達のための自動車による利用運送を一貫して行う事業のことをいいます。

第一種、第二種ともに他人の貨物を有償で行う場合に、利用運送が適用されます。自分の貨物を自ら運んだり、他人も貨物であっても無償で運ぶ場合は、利用運送の適用外となります。
 

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4.第一種は登録・第二種は許可

第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業の違いは、下記の表のとおりとなります。
第一種は各地区の運輸局長宛に登録の申請を行います。これに対して第二種は国土交通大臣宛に許可の申請を行います。

運輸局長か国土交通大臣か、登録か許可かが第一種と第二種の違いになります。
 

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5.第二種には自動車の輸送モードがない

第一種貨物利用運送事業と第二種貨物利用運送事業の違いまた、第一種の輸送モードは、自動車・海運・航空・鉄道の4輸送モードがあるのに対して第二種には自動車の輸送モードがなく、海運・航空・鉄道の3輸送モードになっています。

これは、貨物利用運送事業法第2条8項(第二種利用運送事業の定義)に規定されているように集荷・配達を自動車で行い、複合輸送として海運・航空・鉄道の輸送モードを使う輸送が第二種貨物利用運送事業であるからです。

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6.第一種は自動車、第二種は自動車以外の海運・航空・鉄道という理解は概ね正しい

第一種=自動車、第二種=海運・航空・鉄道という理解をされている方が多いですが、細かいことをいうと一部間違っている部分もありますが、概ね正しい理解です。

自動車以外の輸送モードは海運の場合は港、航空の場合は空港、といったターミナルまでしか輸送できません。荷主の工場から集荷して、着荷主(荷主のお客様)に配達するためには自動車(トラックによる輸送)モードを使用するしかできないからです。

トラック輸送の場合は、1つの輸送モードで集荷から配達まで実施することができますので、まず、第一種貨物利用運送事業(自動車)の登録を行い、その後、必要に応じで第二種物利用運送事業(海運・航空・鉄道)の許可を取得していくのが通常の流れになります。

海運の第一種登録を持っていて、航空の第二種許可を取得する。
ということは集荷・配達が物理的にできないので、必ず第二種を取得しようと思えば、第一種(自動車)の登録が必要なのです。

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7.重要なのはDoor to Door

第二種貨物利用運送事業は、
①複数の輸送モード
②集荷から配達までのDoor to Doorの輸送を受託する業務になります。
①の複数輸送モードは自動車と海運・航空・鉄道のいづれかを組み合わせた輸送形態になります。

もう1つ第二種の許可が必要とする輸送形態としてDoor to Doorの輸送があります。
輸送契約を横浜港までで終了する海上輸送の契約の場合は、横浜港以降の配達を行わないことからDoor to Doorの輸送の輸送ではありません。この場合は第二種の許可が不要となります。

実際、このように横浜港までの輸送契約を結ぶことはほとんどなく、着荷主の工場や倉庫、店舗まで配達することがほとんどですので、第二種の許可を持たずに貨物利用運送業を営むことが新規顧客を獲得する上で難しいといえます。

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8.第一種の海運・航空・鉄道の登録を行うのはどのような場合か

第一種は自動車と述べましたが、自動車以外の輸送モードを第一種貨物利用運送事業で登録するのはどのような場合でしょうか。

国内輸送では、ほとんど見られませんが、外航海運を行うNVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier)や国際貨物を取り扱う航空フォワーダー等、日本と外国間での輸送を行う事業者で、港や空港から外国までのルートのみの登録が必要な場合は、第一種貨物利用運送の外航海運、国際航空を登録する場合があります。

現実には、第一種の外航海運、国際航空を登録する運送事業者はほとんどなく、2つ以上の輸送手段を組み合わせてPort to Port(港から港まで)にとどまらずDoor to Doorの輸送を一貫した運送責任のもとで提供する、国際一貫複合輸送を行いますので、第二種貨物利用運送事業の許可を取得しています。

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9.北海道や沖縄に貨物を届ける場合には第二種の許可が必要

九州や四国は、本州と道路がつながっていますので、第一種自動車の登録で荷主から運送を受託することができます。
北海道や沖縄、その他離島については船舶(海運)もしくは航空機を使わないと運ぶことができないため、海運・航空輸送モードの貨物利用運送許可が必要になります。

東京から札幌まで海上輸送する場合は、東京での集荷から常陸那珂港までのトラック輸送、常陸那珂港(茨城県)から苫小牧港(北海道)までの海上輸送、苫小牧港から札幌までのトラック輸送となります。
①トラック+内航海運の複数の輸送モード
②集荷から配達までのDoor to Door
の輸送の2つの条件を満たすことになるので、第一種のトラックと第二種の内航海運の貨物利用運送許可が必要になります。

トラクターヘッドを切り離してトレーラーのみ積載するのではなく、トラックがフェリーを使用して運転手もフェリーに乗船する場合も自動車輸送ではなく、常陸那珂港から苫小牧港間は海上輸送していることになります。

よって、トラックごとフェリーに乗船する場合も、第二種内航海運の許可が必要になります。

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10.鉄道の第二種貨物利用運送はモーダルシフトを考えて取得しておいたほうがいい

2006年(平成18年)に施行されたエネルギーの使用の合理化等に関する法律(俗称・改正省エネ法)で、トラック200台以上所有する運送事業者を特定輸送事業者、貨物輸送量が年間3000万トンキロ以上の荷主を特定荷主と定義され、二酸化炭素の排出量を年1%ずつ削減すること及び年1回経済産業省に報告することが義務付けされています。

国土交通省の公表データによると、2021年度の輸送量当たりの二酸化炭素排出量は、営業用貨物車(トラック)が216g-Co2/kgに対して、鉄道輸送は20g-Co2/kgと11分の1の排出量になっています。

法律上義務付けられている二酸化炭素の排出量を減らすためには、トラック輸送から鉄道輸送に切り替えることが有効な削減手段です。

特定輸送事業者はもちろんのこと、特定荷主と取引のある運送事業者も鉄道輸送活用の提案を行うことにより更なる取引拡大が見込めます。
そのためにも第二種鉄道の許可をとっておくことが望ましいです。

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11.外航海運・国際航空の第二種貨物利用運送事業

国際航路、国際航空便を使った運送事業を行う場合も第二種貨物利用運送事業の許可が必要になります。
許可取得にあたっての難しい点は、利用運送約款を自ら作成しなければならないという点です。

第一種の外航海運であれば国土交通省が標準約款を提供してくれますが、第二種外航海運にはそもそも標準約款が存在しません。外国での現地でも読めるように英文で作成し、参考訳として日本語版を添付する形になります。

専門家に協力を依頼して一緒に約款を作成するか、業界団体に加入することによりその団体からアドバイスを頂いたり他社の約款を参考にさせてもらうなどして自社の利用運送約款を策定しなければなりません。

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12.航空の第二種貨物利用運送事業の取得は難しい

第二種貨物利用運送事業の許可部門は国土交通省になります。
運輸局での申請となりますが、申請窓口のみで審査はすべて国土交通省の各局が行います。

海運・航空・鉄道のどの輸送モードも許可要件は同じなのですが、航空の場合は許可を取得するだけの仕事量が見込めるのか、契約先がどのような会社で、輸送する路線がどのような路線かまで詳しく求められます。

しっかりした事業計画を策定して申請をしないと、審査の段階ではねられて不許可になる可能性があります。どの輸送モードでも要件を100%満たしていないと許可がとれないのですが、航空の場合は、より事業計画の策定が重要になってきます。

上記の話と矛盾するのですが、運輸局の監査の際に航空輸送を受託している書類等をチェックされ実績があることがわかると、航空の第二種貨物利用運送事業を取得するよう指導されます。
運輸局の指導があった場合には、速やかに許可取得の手続きをすすめなければなりません。
 

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13.事業計画の策定が肝になる

第一種でも事業計画(正式には事業の計画)を策定しますが、第二種は事業計画・集配計画を策定しなければなりません。
第一種に比べて記載しなければならない項目が多くなっています。

この事業計画が不完全な状態では、国土交通省の審査で撥ねられます。
修正した事業計画を再提出したとしても、前回の計画から大幅に変わっておれば、ほんとうに実現可能な計画なのかという目でみられてしまい審査に影響を及ぼす可能性があります。

最初の事業計画から完全なものを提出しなければなりません。
第二種貨物利用運送事業の許可申請では、この事業計画の策定が一番重要な部分ということになります。
 
 

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14.まとめ

第二種貨物利用運送事業の許可取得は、国土交通省の海事局、航空局、鉄道局との対応が必要で、運輸局対応の比べて困難を極めます。

また、3つの輸送モードを一度に許可申請を行う場合は、申請のやり方を間違えてしまうと申請から許可まで1年以上かかるだけではなく、最終的に許可が下りないといったこともあります。

第二種貨物利用運送事業の許可を検討される方は、経験豊富で国土交通省と折衝できる専門家(行政書士)に依頼したほうがよいと考えます。
 
 

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15.お知らせ

当事務所は、運輸・物流専門の行政書士事務所として、貨物運送業・利用運送業(第一種・第二種)、軽貨物運送業の許可・認可及び倉庫業許可・登録を行っています。

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